第60話 赫(あか)き火炎の翼
「――くっ! はあああああああ!!」
数多の黄金に輝く聖獣を一人で全て蹴散らしながらユーウェインの座標攻撃を覇気を放つことでなんとか防いだ。
「レーヴァテイン!」
すかさず攻めて来る聖獣の大群を赫緋に燃え盛る二本のつるぎで焼き払い、ユーウェインの追撃を焼き斬った。
座天使は全身一つ一つの細胞から発する【視覚】を介して座標を見定めることができ、手足を動かす攻撃を畳みかけることができる。
そして、後が絶えない聖獣の大群は聖界から召喚されている。つまり天理を倒さない限り勝利はないということだ。
「悪行には天罰を下し。全ては理によって裁定される」
刹那。ベリアルの身体と精神に多大な″何か″が襲い掛かってぐさぐさと苦しめる。
痛覚に吐き気、罪悪感、疲労、麻痺、といったあらゆるものが突如と一斉に起きたのだ。
「“天″は絶対。今貴方を苦しめているのはあなた自身の淀みであり罪でもあるもの全て。
数々の悪行を犯してきた魔族であり大魔王でもある貴方には当然の報いです」
「よ、く…言うぜ…! お前はお前自身ではない何かにほぼ乗っ取りかけられているだろう」
『力は最大の諸刃の剣だ』と化身術をガルナから教わる前に聞かされて、会得してその意味を理解した。
会得の修行をしだしてちょっとの間は「化身術さえあれば…」や「力さえあればパーシヴァルに…」と思っていた時があったが。例え望み通り手に入れれたとしても、ものにできないなら自殺行為に等しい。
コップであれ、バケツであれ大地であれ。どんなにしようとなんであれ受け止められる水に必ず“限度“があるように、身に余る力は必ず毒となるからだ。
「あなたの言う通り。座天使を解放した以上、“私自身“はあと少しで完全に呑まれ消えます。
ですがそれは承知の上であり覚悟してのこと。
何かを得る為には何かを犠牲にするのも、世界である故に」
「同価交換だな....。オレが神器と一体になったからお前も覚悟を決めたというわけか」
「行く手を行く者を妨げたりバチを下して報いを与えるのが『天』であり、そのツガイでもあるのが聖族である。
貴方は私という″傘“を超えることができますか?」
傘は雨から身を守る時に使う物だが、空を見上げる時には不要になる。つまり空にとっての“壁“を傘で例えたわけか。
「果たし状か。面白い! お前という天を超えてやる!」
正確に言えば戦いは途中で一旦止まっているが、この戦いの“真意“を知った以上、ここからが本当の勝負だ。
オレが勝てば魔族は生き延びてユーウェインから真偽を聞き出せる。薄々気づいていたが、嫌悪と殺気を凌駕する程の雰囲気を感じて奴がオレを試していると知って疑問が確信に変わったのだ。
「灼炎身撃!」
一瞬で全身に火炎を熱く強くたぎらせてユーウェイン目掛けてまっすぐ突っ込む。
攻撃を受け続けて解ったが、奴は極速で正確に攻撃している。少しでも優位に立つには少しでも早く動いて攻撃を畳みかけ続けるしかない。
ユーウェインが素早く動ける訳ではない。一つ一つの視覚が誰よりも早く時空を認識し、それに沿って動いている。
オレが一秒に十歩進んだのに対し、奴は千歩や一万歩進むのが造作ないのだ。つまり虫が鳥にかけっこで戦っているのようなものだ。
「お前の対応力とオレ。どっちが先に力尽きるか!」
だが、それがどうした。この程度で立ちすくむオレではない。
お前が正確にどれほど早く打って来ようと、オレはただ突き進む。無謀だろうと“勝負″は打って出る時に大きく左右される。
オレは火炎そのものだ! お前が理不尽で無慈悲に打ち続けるなら、それに耐えて強く熱く燃え上がらせて迎え撃つだけだ!
「...見事」
ユーウェインの腹を貫き風穴を開かせた。
火炎を解き、光の粒子となって消滅していく。両者はまっすぐ見ていた。
もう一度吐き気に頭痛、激痛、トラウマが一瞬に一斉に襲い掛かってきたが、それらを跳ね除けて支障をきたさなかったのだ。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー」
「確かに受け取ったぞ、お前の遺言を」
消滅する最中、ユーウェインの遺言を聞き取ったベリアルはまっすぐ羽ばたいてどこかへ向かって行った。
出る杭は打たれるし出なくても打たれるが、出過ぎたくぎは打たれてもものともしない。
次からは次章突入します。(といっても後半戦ですが)




