第42話 ぶつける矛先
「いきなりボクのワガママに巻き込んだことはすまない。
どうしても君自身を試したくてね」
「.....」
シロウはいたって能天気でいつもだらしないがまじめで優秀な神。そのあたりの所は父さんたちから話を聞いている。
ありとあらゆる世界の隅々まで見渡す眼をして。いつも何処かの世界を覗いていては、生活している人たちの姿に映っている世界の景色を見て堪能しているが、分け隔てなく相手の立場に立って理解するらしい。
「君をボクと二人っきりにしたのは、ルガリア君とファルシオン君抜きで君がどこまでできるかを確かめる為さ。
現在の君の“全て″が『どこまであってどこまで行けるか』を試すためにね」
「貴方は千里眼や聖神之全槍に魔神之凌打武器で相手の立場が完全に解りきっているはず。こんな事をする意味は最初からない」
「ボクとて“完璧“じゃないんだよね、これが。
君たちの事はいつも見ていたからどんなことがあって来たかは知り尽くしてるけど、何事にも“ぶつからなきゃ“分からないことだってある。そこに神とて例外じゃない」
「.......」
「ボクの考え――いや、思いはなんとなくでも分かってくれたかな?
これからボクは全力で君にぶつかりに行くから、君も全力でぶつけて来てほしい。
心の準備が整うまで待つからできたら――」
「既にできています」
『打倒厄災』を使命に作られた私はそれをアイデンティティとして今まで生きてきたが、いつからかそれから解放されて生きている自分になってきていていた。
本来ならそこで危機感を抱かなきゃいけないところだが、私はそれを一切抱かなかったし何とも思わなかった。
今の私は“個″にして『人』としての私自身。両親たちが作ったアルトスではない。
父さんたちが私を人にしてくれたんだと今改めて分かった。思えば生まれる前から父さんたちには支えられていたからこそ現在の私がある。
「私の“全て″をあなたにぶつけます。シロウ!」
「よく言った。アルトス!」
シロウが私を知る為の向き合いなのなら私は全力で応えなきゃいけない。
勝ち負けを気にするところじゃないが、やるからには全力で勝ちに行く。
「ああ、クソ! 覚えてろよシロウ! これが終わったらメッタンギッタン叩き粛清するからなぁ!」
「兄さん今は戦いに集中して!」
「やってるよぉ!」
ルガリアとファルシオンもシロウによって異空間に転移れて、ドラゴニスと戦っている。
二人と全力で戦うようシロウに頼まれたドラゴニスは己が力をふるっている。
「防守の理展開!」
「ありがとう兄さん。美の理開放!」
黄金色の炎が白銀色の神気を包み込んで輝きを放つと共に燃え盛る。
ルガリアとファルシオンは互いの体を掴み合い権能でカバーしながらまっすぐドラゴニスの方へ突き進んでいる。
ドラゴニスは神々の中で最強。太陽そのものを相手にしているのと同じでそれ程力の差があり過ぎるんだ。
太陽はファルシオンの専売特許だが、ドラゴニスからしたらオレ達は塵も目前。
だが不死身でなければ勝てる見込みはある。可能性は無いも同然だが今はやるしかねえ!
ドラゴニスに変なことを吹き込んでオレ達を巻き込んだ挙句、アルトスも巻き込んだんだ。
絶対にここから脱出してあの野郎にたっぷり粛清してやる!
【トゥゲザー・シング・ウインド】
宇宙嵐に匹敵する超強力な風が一体となった合体技に襲い掛かる。
無限に降りかかる天の息吹に負けず少しずつ進むんでいる。
「兄さん!」
「オレなら大丈夫だ!」
全ての振動がルガリアに一方的に降りかかっている。いくら頑固で防守の理によってダメージを一切受けないにせよ、一気に振動を受け続けるにも限界がある。
【コキュート・リュ―ム・ブォレス】
【トゥゲザー・コキュート・ウインド】
爆風消火によってルガリアがダウンし、ファルシオンはドラゴニスに向かってただまっすぐに飛翔する。
迎え撃ちのブレスを避け近づくものの、凍てつく風吹がファルシオンを阻む。
「――なぜだ? 確かに直撃した。なのにどうして威力が落ちなかった」
「ディスタール!」
ファルシオンの特攻が直撃し、ルガリアが放った最上位光魔法がドラゴニスに直撃した。
ドラゴニスの迎撃は隙がなく直撃してもファルシオンにダメージが通らなかった上、威力を削ぎ落すことさえなかった。




