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アークブレイヴ  作者: 暁辰巳
断章
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断章 昨晩の夜

 冒険者になって二三年。

 アウルを拠点に賞金を稼いで生活している。

 

 「ロゼ魔法学園」を卒業したオレは、培った自分の腕を生かして冒険者になった。


 アウル周辺に生息する魔物たちは弱いのが殆どで、強い魔物と出会すことは滅多にない。

 戦闘経験に貧しい素人(しろうと)が落ち着いてしっかり対処して戦えば勝てるほどの安全地帯だ。




 仮に強い魔物と出くわしたとしても、オレなら大丈夫だ。

 ロゼ魔法学園を卒業したオレは全ての魔法を上級以上に使えるようになったし、母さん譲りの豊富な魔力(量)を受け継いでいる。

 殆ど対人だが、それなりの戦闘経験を積んでいる。


 後、ここまで言っておいて何だが、オレは決して、自分の力に過信はしない。

 亡くなった母さんのいいつけ(約束)で、オレはずっと貫き通通している。


 最初はその言葉(いいつけ)の意味を理科できなくて、守り通している気になっていたが、今は立派に言いつけの意味を理解している。

 

 




 さ~て、今日も依頼をこなすか、と覇気が抜けたエレンは一枚の依頼書に目がとまった。



『緊急依頼  森の奥で奇妙な姿をした魔物が発見された。

 

 パーティ仲間の冒険者さん達が森の奥で見たこともない魔物を発見したそうです。

 目撃した冒険者さんたちからの情報だと、その魔物は人型の異形な姿をしていて、一目見ただけで気持ち悪かったそうです。

 もしかしたら脅威の一種になるかもしれないかもしれませんので、この依頼書を目にした冒険者は、森の奥へ向かってその魔物の調査をお願いいたします。

 討伐に失敗したとしても違約金を請求はいたしません。 


 魔物に関する情報が不足している為、討伐推奨は「竜級」に指定させていただきます。 


 冒険者ギルド役員より 調査報酬:5000カンタ  討伐報酬:20000カンタ』




 エレンがいるドラゴニス大陸は『龍王』ギラが支配する大陸である。

 大陸(縄張り)内で起きていることは全てギラに全部筒抜けであり、

 建物や洞窟、地下などに隠れたとしても、ギラの“眼″を誤魔化すことはできず、ドラゴニス大陸(縄張り)の全てを一切見逃さない。

 未知の魔物が発見されたということは、ギラはその魔物が脅威にならないと理解した上で見逃しているのかと思った。


 よそから飛来した魔物によって生態系が変わり果ててしまった事例は幾つかある。

 その為、見たことがない魔物や起きていた変化は必ずギルド職員へ伝える義務が冒険者に課せられている。


 もし事情聴取で嘘を付いたり隠し事をしたとしても、職員には人の嘘を見抜く魔動機(マギア)を必ず持っている為、騙し通すことができない。

 事によっては罰金、冒険者の資格剥奪以上に、何とか罪の容疑で逮捕されたりする事もある為、外来種の魔物はそれほど危険だということだ。



「ま、このまま考えてても分からないから仕方ない。とりあえず、久しぶりの肩慣らしに引き受けるとするか」



 そう言って、オレはその依頼を引き受けた。

 雑魚魔物ばかりを倒してきていい加減うんざりしていたし、すっかりなまってしまった自分の腕を治すための強い相手と戦いたかった。

 アウルには駆け出し兎級冒険者しかいない為、自分以外に適任な者がいないと僅かながらそう思った。

 

「あれが依頼書に書かれていた魔物か」



  森に散らばった気配の一つ一つから目的の魔物らしき気配を特定し、その跡気配を辿ってようやく見つけ出した。


 魔力を長きに渡って魔力を使い続けた者は皆、「魔力」や「気配」などの力の存在を感じ取れるようになる。

 特に魔力を主な武器とする魔法使いは皆、この段階に至りやすい。


 


上級火炎魔法(ブェレブォス)!」



 エレンが得意とする炎魔法が魔物を直撃した。

 さっさと終わらせようと思い、まずは様子見と、杖先から放たれたブェレブォスを軽く一発おみまいした。



「流石は冒険者役員が緊急に依頼したことだけはある。この程度で終わるなら脅威にもなりえる訳がねえ」



 エレンはそう言い、ますますやる気とワクワクが湧き上がってきた。今まで雑魚魔物の討伐で退屈していたエレンにとって、この魔物は最高の相手(獲物)だった。


上級氷結魔法(ブリュラブォス)!」



 杖先から放たれた上級氷結魔法が魔物を直撃し、魔物を氷づかせた。しばしの間その魔物は氷漬けとなったものの、魔物はすぐさま氷を破壊して脱出した。


 



 エレンはあらゆる手を尽くして実行したものの、魔物にはほとんど通用しなかった。

 攻撃はどれも確実に効いていたが、魔物の異常なまでの再生能力、ほとんど疲れきっていない身体力を前にして、

 エレンは逃げるしかなかった。



 エレンは必至となって逃げた。

 子供の頃にお母さんがよく叩き鍛えてくれた修行が今となって役に立って、魔物を撒くことができた。

 だが、

 


「も、 もうだめだー」



 行き止まりにたどり着いてしまった。魔物はエレンの後ろに来ている為、もはや逃げ切ることは不可能。

 何とか逃げ切る方法を考えているものの、魔力が空なエレンは羽をもがれた鳥も同然。



「はあああああああああああ!!」

「……え!?」



 死を覚悟し、いざ魔物に食われようとした間際、横からなんらかの力をまとった一人の少女が割って入って、魔物を殴った。

 少女の強力過ぎる力によって魔物は砕け散り、灰となって消滅した。


「大丈夫? 私が言っていること分かる?」


 少女の顔がオレに向かった。

 まるで月が少女を祝福するかのように、月の光が少女を照らし出した。



 一目惚れしてしまった。

 少女の姿を一目見た瞬間、オレの目は少女の姿にくぎ付けとなってしまった。

 オレは無意識の内に少女の姿をガン見していた。



 少しして正気を取り戻したオレは明野さんを家に泊めた。


 これが、オレと明野さんとの出会いだった。


ロゼ魔法学園


 一人前の魔法使いへ育て上げる世界で一番の魔法教育施設。

 身分、種族を問わず、入学を希望する者であれば誰であれ入学を歓迎する。


 魔法を更に発展する為の研究施設でもある。



魔動機(マギア)。魔力を動力源に動く異世界の機械。

 

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