第38話 overデイフレイム 序
戦闘はアナとベリアルの一対一となり、エレンとパーシヴァルは後方で戦いの行方を見守っていた。
「巨大火炎魔法!」
「――はあっ!」
ベリアルの右手から放たれた超級魔法を真っ二つに斬って余波の強風が炎を完全に消火した。
私はベリアルに斬りかかった。
「獄炎之一手!」
真紅に燃え盛る炎をまとった手が剣の神器を手掴んだ。
獄炎はすぐさま燃え広がっていこうとするところに強風で押し返して何とか剣の神器を確保している。
「滅消最光魔法」
ベリアルの左手から超級光魔法が放射されたけど間一髪避わすことができた。最速なのは光と決まっているけど、最速だからって必ず決まるとは限らない。
剣の神器にそれを増幅させる私の力も相まって神速以上の速さを発揮できる。
「砂土災害魔法!」
合わさった土と砂が大洪水の如く私の右手から放たれた。
私がシロウさんから貰った力は【地】に起縁するから地属性のものが強化されるのは当然のこと。
今のベリアルに通用するのはこれしか思いつかない。
生半可な攻撃は全て炎を前に消し炭になるから。
「はぁぁぁぁぁぁ」
ベリアルが呼吸し続けると同時に両手に光が灯った。
「星身波撃」
ベリアルは片手に最低限に光を集中して私が放った魔法を受け止めている。
【光】は『消』を司り、光に触れた瞬間に完全に消滅している。
「――嘘でしょ!?」
攻撃を防ぎながら私の近くまで迫って来たことに驚愕した。
しかも無傷でいる上に力をこれっぽっちも削れてない。
「灼熱火炎――!!」
銀色をした一筋の魔法。トゥゲスリクが放たれて、ベリアルはこれを防いだ。
間一髪作ってくれたチャンスを無駄にしない為、私は引かず追撃を畳みかけた。
最初の剣撃は防がれたけどこれはおとりで、本命は私の右腕の拳。
これを防がまいとベリアルは右足を出したけど左足でそれを防いだ。
赤と翡翠色と灰色が混じった力がバチバチとぶつかり合う。
両足のどちらかを使って防いでくると分かっていたから妨害できたけど、少し痛い。
「――――。」
両手片足を全て使い出させた以上、もはや私の一撃を防ぐのま絶対に不可能だった。
だけどベリアルもう片方の足で私の一撃を防いだことに驚いて思考が停止してしまった。
足がないと立てれない以上、姿勢が崩れるのは当然の事だ。ベリアルの体勢が安定している理由は、ベリアルの背中に生えた二翼。
赤く燃え盛る翼によって飛行していることによって姿勢を維持していた。
「その様子だと、神器の仕組みをよく理解していないようだな。
神器を宿すことで出力と能力を使うことができるが、特質すべき点は神器との融合だ。
オレはお前に負けた後、ある場所でこの力を使いこなそうとしていた段階でこの仕組みに気づいた」
神器との融合.....。
神器が私達を″器″として宿っているならその逆も可能ってわけね。
ベリアルは私達より一歩先に進んでいたってことね。
一か八かの賭けが失敗に終わってしまった以上、私たちには打つ手がない。
エレンさんはまだまだトゥゲスリクを撃てる余裕はあるそうだけど、問題は私の方だ。
気力も魔力も殆ど使い切ってしまったからもう一度ベリアルを足止めできる自信がない。例え気力も魔力もあったとしても、策がベリアルにバレたからには容易に妨害される。
どうすればいい.....。どうすれば....
「何へこたれている! お前らは十分頑張ったんだ。後はオレに任せろ!」
瑠璃色に光る綺麗なオーラを全身から溢れ出してベリアルに突進した。
お互いに両手を掴み合い顔をぶつけ合った後いがみ合いながら出力をたぎらせていってる。
二人ともものすごく強大すぎて近づくだけで危険だ。
「昔からお前はそうだったな。一度見て聞いただけでほぼ完ぺきに真似することができる。
その病み上がりの体でどこまで耐えられるかな?」
「絶対に耐えるさ! 誰だって不可能を可能にできるからなあ」
二人の強大な力を前に私とエレンさんは完全に目入っている。
エレンさんの回復魔法で体の方はほぼ完治しているから問題ないと思うけど、問題は『追撃』の方。
パーシヴァルさんがベリアルを完全に足止めしてくれるとはいえ、ぶつかり合う両者の闘気が強大過ぎて生半可な攻撃は全て灰燼と化してしまう。
「闘気の方はオレが何とかするから、アケノさんはベリアルに攻撃することだけに専念してくれ」
「具体的には?」
「トゥゲスリクを撃った瞬間にアケノさんは全速でベリアルに向かって一撃を浴びせる。その際、アケノさんが今持っている力を全てベリアルにぶつける。
今見つけたオレのプランだ」
私はエレンさんの案に賛成してすぐ実行に移した。
「 神器を宿すことで出力と能力を使うことができるが、特質すべき点は神器との融合だ」
「――――――――」
神器と融合する方法が分からない以上、完全に力を引き出すことはできない。
仮に引き出せたとしてもその際に何らかの事があるのはまず間違いないと思う。
この変身アイテムにはこういう代償や副作用があったりとか、隠し機能が搭載されいたとかそんな感じで。
これはあくまでも″仮り″の場合だから現在私が気にすべきことではない。
灰色と翡翠色が混じった覇気が高ぶり、右手の拳に集中させ続けてベリアルの元に向かっている。
「――くぅ!!
お願い! わたしの……私たちの想いに答えて!」
トゥゲスリクに私の一撃に更に剣の神器が振り下ろされた。
闘気は完全に鎮圧されすぐ側にいた三人は態勢を崩したけど、私はすぐに拳に力を集中させてベリアルに目掛けて一直線に向かった。
「………。
オレの負け…か」
地面に倒れ伏せて空を見上げたベリアルがボソッとそう呟いた。
ベリアルの全身には赤い炎が燃えていて、それがベリアルを回復しているらしい。
想像の斜め上に行く相手だった。
やっとの思いで勝てたこと自体が奇跡と思える程に、ベリアルは強かった。
ポロロロン
「――ぐはっ!?」
「感動している最中に水を差して悪いですが、まず大魔王を倒してくれたことは感謝します。おかげでようやくソイツの首を取る機会を得ました」
「だれだお前は!!」
「トリスタン。『必貫』のトリスタンです」
漆黒をほうくつさせる髪色をした糸目の男の人が、私たちの前にあらわれた。




