第37話 焔
(これがベリアルの強さ。以前戦ったときとは比べものにならない。
弓の神器を使いこなしているし、一つ一つの動きに無駄が一切ない。
どうやって勝てばいいの.........…)
「しばらく見ないうちにここまで強くなったじゃねえかベリアル!
オレとアナの二人を相手に圧勝するとはな!」
私はベリアルとパーシヴァルさんの足元にも及ばない。だからパーシヴァルさんの邪魔にならないよう援護することを重視して戦っている。
勿論最初はパーシヴァルさんと一緒に戦ったけど、戦うにつれて力の差を思い知ったから。
出力は互角でも私は力の扱いが不慣れ。ゲームでいう、初心者がプロと戦って全く相手にならないように次元が違いすぎるんだ。
パーシヴァルさんはベリアルと互角に渡り合っていて、何度もベリアルが全回復する度その都度攻撃に対応しながらダメージを与えている。
ベリアルは身体に宿した弓の神器の再生能力でいくらダメージを与えても瞬時に全回復してしまう。
前回の戦いの反省を活かしている為か、弓の神器の力をあるタイミングのときしか纏っていない。
纏うと【炎】と【光】以外の技が使えなくなるという欠点がある。『灼炎身撃』という技を使っていた以上、もしかしたらベリアルはほぼ炎系の技が得意可能性もあるから全然弱点じゃないのかもしれない。
「随分強くなったなベリアル。ここまで強くなったお前と闘えて嬉しいぜ!」
「私もだパーシヴァル。本来なら再生能力を抜きにお前と一戦交えたかったが、全く侮れず油断できないな、お前は!」
パーシヴァルさんはベリアルと子供のときから幾度も闘い合ってきたライバル同士。
二人の会話と顔を見てると楽しそうだと私たちは思った。
いかにも″大魔王″としての顔と雰囲気を発してたベリアルが、高校生か大学生くらいの表情をしていたから。
「――明乃佳奈! エレン・ムンド!」
「「――!!」」
「オレはお前らを殺しも捕らえもいたぶる気は毛頭ない。
来るなら全力で来い! その気がないならこの地からとっとと立ち去れ!」
ここで引くわけにはいかない。パーシヴァルさんにムサシさん、ヴォークさんが協力してくれたおかげでここまで来たから無駄にはできない。
私たちがガイアス大陸に来た目的は二つ。『ベリアルがどんな人かを確認して弓の神器を回収するかどうかを決める』。『魔族を説得してどう未来を切り開くかを話し合う』。
弱肉強食が魔族の主なルールである以上、そのトップである大魔王を倒して話し合いに持ちこむ。
それに私達には時間がない。
きたる【厄災】がいつ復活するか分からないのもあるけど、今重要視してるのは教団の方。
何にでも『限界』がある以上、魔族たちが教団の侵攻を凌げるのは時間の問題だから。
「それはできない! 私が弱いのは自覚してるけど、引き下がれない理由があるから!」
「……そうか。ではお前らから始末してやろう」
ベリアルがまっすぐ向かってくる。
アナを守ろとエレンは詠唱を唱えながらすぐにアナの元へ向かう。
(ベリアルに通じるのはこれしかない
効いてくれよ。最強の魔法!)
右手に金に白色に輝く光。左手に黒紫色に渦巻く闇。
エレンは詠唱を唱えながら魔力を注いで整えていく。
【トゥゲスリク】。
エレンの師が生み出した最強の魔法で、光と闇の合混合魔法。光と闇は八大元素最強の元素であり、原初にして相反し合うもの同士。
この魔法を使う際は『本当にどうしようもない場合』と『精神を安定してから』と絶対に決めている。
使用者の善悪が触媒となっているのもあるが、
光か闇の片方が強いと完全に崩壊するし、五分五分に整えれても”一つ“に統合できていないと光と闇のぶつかり合いによって強力な衝撃波が発生して最後は大爆発を巻き起こす。
その為どうしても落ち着かせるしかない。
ベリアルの前に立つとなると恐怖で足がすくんでしまうが、オレが取る行動は『アケノさんを守る』ことだ。ビビってはいられない。
呼吸をして心を落ち着かせた。
ベリアルに目掛けて魔法を放ち。銀色をした一筋の力が神速の如く、力強く駆け抜けていく。
「覇気之打撃!」
右手に真紅色のオーラを集中させ、思いっきりぶん殴ってベリアルは迎え打った。
元素に属せず張り合う力じゃなきゃいけない、と一目みただけでベリアルは看破したのだ。
「流石に驚いたぞ、エレン・ムンド。よくぞあそこまで強大な魔法を放った。
いくら不死身の力を持ってしてもタダではすまなかっただろう」
だろうな。できればそのまま効いてほしかったが、トゥゲスリクでも届かないのは読めていたぜ。
魔力を少し多く込めたから威力も想像以上に増大したからベリアルの力を多く削ぎたかったが、思った以上に粘らなかった。
「明野さん! 受け取ってくれ―!」
エメラルド色をした綺麗で温かい光が私とパーシヴァルさんを包み込んでダメージをあっという間に回復していく。
最強回復魔法【メリクィーム】を左手で放射し、右手で一本の瓶をアナに向けて投げた。
瓶の中に入ってたものを一気に飲んだことで魔力を回復させた。
「ありがとうエレンさん!
危ないから下がーーうわっ!?」
隙を狙ったベリアルの攻撃をパーシヴァルさんが防いでくれたおかげでエレンさんは助かったけど、パーシヴァルさんは火傷を負ってしまった。
「....やられたぜ。そんな奥の手があるとは思ってもいなかったぜ」
「オレが弓の神器を器にしたからこそできたことだ」
火炎が一箇所に集まって蘇るベリアル。
パーシヴァルが一撃を防いで反撃を仕掛けようとした瞬間にベリアル“自身”が爆発して灼熱の炎をもろに受けてしまった。
エレンがせっかく回復してくれたが無駄にしちゃったな。
「エレンさんは下がって、パーシヴァルさんを連れてできるだけ遠くに行って!
ここは私が」
「悪いが、それはできない。一度乗った勝負だ、最後までやらせてもらうぞ」
「でもそんな体で」
「よく聞け。アナ、エレン」
「アナ。お前は今、誰と何で戦っている?
ベリアルに勝つことは勿論重要だが、それはあくまでも最低限の話だ。
状況が状況にゆえ仕方ないが。一人になっても決してうぬぼれちゃいかん、お前は一人じゃねえ。
互いが互いに理解し合い手を取り合っていくってのが、仲間ってもんだろ?」
パーシヴァルさんにそう言われて気づいた。
あまりの焦りと危機感でいつの間にか『一人で解決しなきゃ』とそう思い込んでいた。
「ごめんなさい! パーシヴァルさん、エレンさん。
まだまだ未熟で弱い私に力を貸してください!」
私たちは打ち解け合い、改めて「打倒ベリアル」に向けて気持ちが一つになった。
ベリアル「.....話は済んだか?」
終わるまでずっと真顔で空気となって待っていました。
光と闇の合体魔法は物語を構想する過程の一つでずっと温めてきたアイデアの一つですが魔法名が中々決まりまなかったけどようやく定着して完成しました。
皆さんのイメージでは「光と闇が交差し合った」ものや「両方が集まった」ものだと思いますが、実際には光と闇が″真に″一つとなったもので光の「輝かさ」や闇の「不気味や禍々しさ」が一切ない。
ただ一筋の『宇宙粒子』を放ったものです。
要するにダ〇大の『メドロー〇』と同じです。




