第36話 渡り鳥と火の鳥
二人の出会いは幼少期。
一人の魔族の子が立ち入り禁止の上階に無断で侵入した事に起因する。
「お前…こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」
「思ってねえさ」
大魔王城の上、世界樹レグドの頂上付近でベリアルはパーシヴァルと闘っていた。
無断で大魔王城の上に侵入した同学年のパーシヴァルを諫めるために。
パーシヴァルがベリアルの言ったことに聞く耳を持たなかった為にやむおえず実力を行使する以外に方法がなかった。
将来は父の跡を継いで未来の大魔王となるもの。その経験の一歩として、目の前の問題児を成敗して威厳を見せるとしよう。
(な――なんなんだコイツは…。
このオレが手も足も出ないどころか、一度も攻撃を当てられていないだと!?
こ、こんなはずじゃない!
オレは父様とその部下たちから厳しく辛い修行を受けて来たんだ! オレが負けるわけがない)
ベリアルがパーシヴァルと戦って数分。最初は互角に闘っていたが、次第にパーシヴァルが追い詰めていきもはや力の差は歴然だった。
「なんだこの程度か。
大魔王の息子だからそれなりに強い奴だと思っていたが、とんだ期待外れだな」
「――なんだと!!?」
その言葉にカチンときたベリアルは我を怒りに流されてしまい、力にただ怒りと殺意だけを持ってパーシヴァルに立ち向かったが、当然パーシヴァルに防がれて逆に返り討ちに合った。
一撃を受けても怒りで押し流しして反撃しても無駄に終わった。
「城の兵士を全てことごとく蹴散らしたと聞いていたが、これほどとはな」
黒い髪に黄金の瞳をした男が姿を現した。
「勝てない」っと一目みただけでそう確信せざるを得ない実力を秘めている者はこの地で一人しかいない。
「...大魔王サタルドラ!」
「よくぞベリアルを完封した。
さて、ベリアルの首を取るか。 それとも余の首が本命か?」
「!?......父様!?」
「大魔王の座に興味は無いね」
「ほう? ではどんな目的でここまで来た」
「ここから見える景色を見に来ただけだ。ここが一番でかいからな!」
レグドは超巨大な世界樹である為ガイアス大陸全体を見渡せる。
「子供ながらに単純で純粋な冒険心だな。
その心と力だけは認めるが、お前がしたことの報いは受けてもらうぞ。
言っておくが子供であろうと余は容赦せん。どうする? 幼き強者よ」
「んな事でビビって何もできなきゃここまでやれはしねえさ!」
パーシヴァルがサタルドラに真っ直ぐ向かった。
結果はパーシヴァルの完敗。
指で数えられる程度だが、サタルドラに攻撃を当てて傷をつけたものの、それしかできなかった。
「ベリアル。お前がなぜパーシヴァルに勝てなかった。いや、手も足も出なかったか分かるか?」
「オレがまだまだ未熟だったからです。もっともっと修行を積んでいけば、絶対にコイツには負けません!」
大魔王に問われた後、「それは」と小声で言って考えてベリアルはそう返答した。
将来大魔王を担う者として、自分と同じタダの魔族に負けたのは恥でしかない。
大魔王は何者にも負けず、誰よりも猛々しく、優雅な勇姿を見せ続ける者。
それが、ベリアルにとって理想で想う″大魔王″である。
「狭すぎるな。そしてあまりにも小さい。
その程度ではそ奴に勝つことはできんぞ」
「そ…そんな」
不備がありすぎる事を指摘され、『絶対にパーシヴァルに勝てない』という真実を思い知られた。
自分がまだまだ未熟であることに関係なく、大魔王から告げられた現実がただ虚しくて悔しくて仕方なかった。
「では! どうすればアイツに勝てるのですか!? 父様!」
「どうしてもそ奴に勝ちたいなら。大魔王城で交流する魔族たちとの日々を謳歌し、励め。
ただしそ奴だけに注目しすぎず、他の事にもちゃんと目を向けて通すことを怠るな!」
物心ついた魔族は皆ほぼ毎日大魔王城に来て授業を受けるように決まっている。
大魔王城は世界樹レグドの中に建てられていて、魔族たちが住まう地域全てと一貫して中心地に存在している。
中心に近づくにつれて強力で凶暴な魔物が生息しているが、経路は安全で問題がないように整えられているので問題なく安全に通学できる。
勉強で主なものは読み書きに体育の二つ。
ガイアス大陸は『強くなければ生きていけない』環境下である為、最初の内は体育の授業が多い。
「お前。よく懲りずにこんなことを続けられるな」
「へへっ。どうしてもあそこから見える景色が見たくてな!
そんなことでいちいち迷っていられるかよ!」
あれ以来、パーシヴァルは時よりレグドの頂上まで登っては、父様に負けて牢屋に入れられている。
場合によるが、オレは何度もパーシヴァルを止める為闘ってきたが一度も勝てていない。強いて言えば闘うにつれてパーシヴァルの動きを徐々に理解していって互角に闘えるようになりつつある。
パーシヴァルの両手と両足に取り付けられている枷(鎖は繋がれてない)には特殊な加工が施されていて、装着された者の魔力と体力を吸って硬くなるだけでなく、修復能力まで備わっている。
更に牢屋全体に魔法陣が張り巡らされているので牢屋の中にいる囚人は力を抑えられる。つまり、力を削ぎ落された弱者となっていて、牢屋を破壊することはできず脱走もできないってことだ。
「そんなにいいのか? レグドから見える景色が」
「そりゃそうだろ! この地全体を見通せるだけでなく、その先に碧くて綺麗な水の一面が広がっているんだぞ!」
パーシヴァルはガイアス大陸を超えたその先の世界に想い焦がれている。
この退屈なところから出て海の向こうにある地の風景を目に焼き付け、そこにあるものを心ゆくまで堪能したいのだそうだ。
物心がついたばかりの頃に親から外の世界についての話を聞いたことをきっかけに興味が沸いたそうで、
浜辺にたどり着いて海を初めて見た時にその美しい光景に感動した為、世界全体を巡って見たいと決心ついたらしい。
外の世界のことは少なからず知っている。『人間』という魔族とは全然違う容姿で非力で脆弱な肉体をした存在たちが住んでいることを。
ルガリア教団という、魔族を憎み根絶しようとする者共がいて、その姿をこの目で見ている。
パーシヴァルは筋金入りのバカで恐れ知らずだ。
小さい頃はよく牢屋に入る度に暇と退屈によく苦しんでいたくせに、徐々に牢屋の中が気に入って牢屋に入るのが楽しみにもなったんだからな。
めげずに闘うのは『強くなるためのパシリ』にしていて、父様が『殺そう』とは全然思ってもいないことが分かっているからだそうだ。
その事を見通した父様は本気でパーシヴァルを殺しにかかった際はボクのときとは比べものにならなかった。
無論、オレとの戦いでパーシヴァルが手加減していた訳じゃない。現在の自分じゃ釣り合えないんだ!
パーシヴァルには『戦いの才』を生まれつき持っていて、その力が強さたらしめているのだ。
その事実を知ってどうしようにもないと落ち込んだが、
「確かにどうしようもないだろうが、それはそのときの話だ。楽でいたいなら、そのままうじうじ苦しんでいればいい』と言われてオレは絶対にパーシヴァルに勝つと改めて決心した。
「またつけられてるぜ、ベリアル」
「言われなくても分かっている。
仕掛けて来るとすれば牢獄の中だろうと分かっていたからな」
刺客を送る目的は二つしかない。
ベリアルの首を取って“次″の大魔王になる権利を得るか、ただの八つ当たりか嫌がらせだ。
今回は後者で、大魔王の座を得るのは首を取った″張本人″だけ。
魔族とは血の気が多くて欲望に忠実な種族だ。であれば一番のヘイトは大魔王に向きやすい。
物心がついた小さいときから強くなるよう努力してきたのは刺客に襲われた場合に対処できるようにする為でもあったのだ。
「まったく懲りねえな。オレが牢屋に入ってたとしてもベリアルを殺せないっていうのに」
「獲物が強い弱い関係なく、やるからには絶対にやる。それがオレたち″魔族″だ」
刺客は全員返り討ちにして無力化している。
すぐに拷問して情報を吐き出させて事を仕向けた張本人を必ず見つけだす。
「ついにここを出るんだな」
「ああ。これからオレは念願だった世界へ行く」
勝負を終えて完全に回復した後、浜辺で二人は向かい合って話していた。
互いが互いの事を殆ど知り尽くした状況で、オレは何度も何度もパーシヴァルを研究し続けてきた。
『どうすれば全力全開のパーシヴァルと闘えるのか』。『どうすればパーシヴァルの全力を引き出せるか』。『パーシヴァルはいつもどんな動きをしてどんな技を繰り出すのか』。『何が得意で何が苦手なのか』。
あらゆる限りの情報を集めて、色々試行錯誤して作戦を練ってきた。
つまり、これまでの全てをパーシヴァルにぶつけて勝った。
「一緒に来るか?」
「...何の冗談だ?」
「いや、お前が一緒に行きたそうな顔してたからな」
「確かに世界への興味は少なからずあるが。オレにはやるべきことがある、ここを去る訳にはいかん」
「そうだったな。悪いな無理に誘って」
「謝る必要はない。お前と一緒に世界を回りたいのは本当だからな」
親友を見送った。
見えなくなるまで手を振り続けて、お互いにこれから成そうとしている事を大声で伝え合いながら袂を分かした。
サタルドラの性格は〇リーザ様のカリスマと人情性バー〇様の残忍性が合わさったキャラで、完璧超人な人の心が分かる王です。




