第35話 剛魔王
エレンとジャンルの目の前に、額に二本のツノが生えたオレンジ色の長髪の猛々しく凛々しい姿をした女性がいた。
ルビー色の瞳でオレ達をみつめているが、肌の色はオレ達と同じで頭のツノさえなければ人間と瓜二つ。
「何を狙ってたかは知らないけど。自ら姿を現したってことは、ボクと戦いにきたってことかな?」
「隠れているのは分かってるよ。そのままにしてても構わないけど、何かしようものなら遠慮なく撃つからそこら辺は覚悟してね」っとジャンルがそう言うと女性は姿を現した。
この地の住人である以上″魔族″であることに変わりないが。
女性の全身から覇力が燃え盛る炎のようにあらぶっていて、その強大な力量からただ者じゃないのは一目みただけで理解した。
「わ、我の名はガルナ。『剛魔王』の異名を持つ魔王だ!」
いかにも『魔王じゃない』と一目みただけでそう思ってしまう見た目に雰囲気だが、それは“普通″に限った場合だ。
オレもジャンルもガルナという魔族を『女だから』や『ただの』とは思ってない。
『ヤバい魔物は見た目と雰囲気で必ず騙す』と言葉があるし、魔法使いは常に場を見極め続ける義務がある以上、勝手に早合点することは許されない。
「こうして姿を現したってことは、ボクに戦いを吹っ掛けに来たのかい?」
「そうだと言いたいがそれはまだだ。お前たちの目的がなんでベリアル様の邪魔をするというなら私が全力で阻止するだけだ」
(なるほど。案外単純な奴だから楽だねこりゃ。少し面倒な小細工で誘導する手間が省けた)
「んじゃあ今からアナたちの勝負に横から差すまでだ!」
「――させない!」
ジャンルの目つきが変わってすぐに後方に振り向いて紫色に燃え盛る炎をアナたちに投げ当てようとした瞬間、ガルナが即座にジャンルのすぐ近くまで迫ってそれを阻止した。
加減した状態であの速さ。オレと同じ遠距離戦を前提とした奴にとっては天敵でしかない。
ジャンルはガルナのふいうちを勿論防いで(間違いなく分かっていただろうが)全くの無傷でいる。
ジャンルもガルナ同様に出力を抑えている以上何の問題はないと思う。
人類最強のギラ竜王に毎日ちょっかいをかけては戦いを繰り広げている奴だ。弱い訳がない。
〈言っておくけど、今の内に逃げた方がいいよエレン。君にとって彼女は天敵だからね〉
〈どういう意味だ?〉
〈鬼人は怪力を秘めていて五大元素とそれから派生する″そのもの″を自在に操ることに長けているんだ。
君に分かりやすく言うなら、精霊を相手にしているのと同じってこと〉
精霊は生まれつき司る元素そのものである以上、精霊に元素攻撃(対応するもの)は一切効かない上干渉した元素を自由自在に操ることができる性質を固有している。
魔力を元素に変換して放つだけで終わりの魔法使いは、天敵に塩を送っているに過ぎないのだ。
〈お前の忠告は分かった。オレは距離をとったままアナさんとパーシヴァルさんの戦いを静観するからオレの事は気にしなくていい〉
〈分かった。これで思いっきり勝負に専念できるよ〉
念話による会話(ジャンルによる一方的)したエレンとアナはやり取りを済ませた。
「流石は鬼人族の魔王。全力じゃない状態でボク以上の怪力を秘めているね!
それでこそ誘導した甲斐がある!」
「なるほど。アンタは随分戦い好きの悪魔なのね…」
「『強者との激しい戦い』がボクにとって唯一の快楽で楽しみだからね」
悪魔は『どこか得体の知れない気味が悪い』″存在″であり、上位の悪魔程癖が強い性癖や癖を持つ。
ジャンルは完全なバトルジャンキーであり、勝ち負けに関係なく″ただ″戦いを純粋に楽しみたいだけなのだ。
「【化身抜顕】!
光波身撃攻!」
「それが鬼人直伝の『化身術』。噂に聞いていたよ!」
使用者″自身″の核であり精神そのものである【魂】を媒介に、肉体と内に宿る【魔力】や【気】を主な武器として用いたのが化身術である。
魔力と気と完全に一心同体となることで限界を超えた力と実力を発揮できるだけでなく、魔力と気のを思うように使用できる。
「今のは中々だっだよ。
流石は魔王なだけあって肉体はいたるところまで鍛え磨かれているし、綺麗で美しいところも抜かりがない」
(悪魔に対して有効なのが“純粋な”光しかない以上、本気で打ったけど流石は上位の悪魔だけあるはね...。
確かに当たったけど全然効いてないし。わざともろに受けたのに!)
化身術についての興味心でつい衝動心が無意識に干渉した為ジャンルはガルナの一撃をもろに受けた。
受けた傷口はすぐに回復しきっているし、精神も問題なく安定している。
「次はこっちの番だね。 さっきの一撃のお礼にいいものを見せてあげるよ!」
ジャンルは激しい声を上げた瞬間全身からものすごく強大な力が溢れて高ぶりだし、ジャンルの覇気が禍々しい漆黒なものに変わった。
(これが上位の悪魔の本当の力!.....。
力を抑えているのは分かったけど、想像以上ね。
一体、どんだけの力を秘めてるってのよ)
鬼人自慢のツノが可愛く見えてしまう程の禍々しさをした“悪魔の″角が頭の左右につき、尻辺りに黒紫色のしっぽ。
そして禍々しく狂気じみた表情をしていて、まさに悪魔そのものに変貌していた。
「どうかな? 悪魔としてのボクの容姿は」
「すっごく禍々しくて不気味なすがたをしているのね。 まだ全力じゃないんでしょ」
「その通り。この姿は悪魔としての部分を少し開放しただけで、“本来“のボクはこんなもんじゃないよ」
『気』とは魂と魄。
要するに魂と生命の力でどちらか片方か双方が合わさったものが気です。
魔力とは同じでどこか違った力です。
少し長い時間をかけて生命力の設定が完成した




