第34話 ブゲ・ムサシ
物心がついた頃からオレは剣の修行を毎日行い続けた。ブゲ家は剣士を生業としているからだ。
父であるブゲ・ムニは“人”として問題がありすぎるが、多少マシな人だった。
半ば虐待に等しい事をよくしていたが、
拙者の事を見て理解していた上、『人』『息子』として想い扱ってくれたからだ。
「今日の鍛錬はここまでだ」
「......」
「....っち」
父に舌打ちされてもムサシは一切物ともしていない。剣を握ったムサシは人が変わったように一切動じなくなるなる。
まるで触れたものをなんであれ斬り裂こうとする剣のように、“ただ″やるだけ。
(ムサシめ、一体どうした。 お前が強いのは認める。認めるが、あんなのはお前らしくない!
何がお前をそこまで至らせたんだ)
父との鍛錬を行い続けて数年、オレは父と互角に戦えるようになった。鍛錬を重ねていく度に少しずつ父より強くなっていき、いずれ父を追い越すのは時間の問題で、その事をオレも父も自覚していた。
ブゲ・ム二にとって。
ムサシの剣の才を引き出して上達させつつあることは喜ばしくある。
嫉妬や悔しさは僅かながらにあるものの、いずれ自分(全盛期すら)をどんな他者も凌駕するが、
ムサシがどこか異常であることは気づいていた。もしかしたらとてつもない歪みを秘めていることも。
「.....」
いつも使っている剣を持ってただひたすらに見つめた。
子供だった頃のある日。オレは剣に親近感が沸いて自分と重ねて見て感じるようになった。
剣もとい、『武器』はただ使れるだけの“もの”でしかない。
道具に感情や意思がない以上、道具はただひたすら目の前の事に対処するだけ。
逆境を乗り越える為、オレは心を研ぎ澄ませ続けた。
父の修行にゆえ
「や…やめてください父上!!」
「……ふんっ!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」
ムサシの剣をムニは斬った。
ムサシが剣に何らかの想いを寄せている事に気づいたムニはムサシを更に強くする為、ムサシに絶望を与えた。
ムニの予想通り剣だけ必要以上に狙ったら案の定顔色が変わって気が動転した。
(さあ見せて見ろムサシ。お前″自身″の本気を、全てを)
「――!!」
「こ、これがお前の本気!
いいぞ! いいぞ! 遠慮なく全てぶつけて来い!」
遠慮する必要がなくなったムサシは全力全開でムニへ斬りかかった。
炎獄で刃を形成して。
両者共に一歩も譲らない攻防戦が激しく続いた。
「ワシの…負け、か」
勝負はムサシの勝ち。最後の攻撃をムサシはムニの胸を斬り、剣を僅かズレていたおかげで助かったのだ。
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「限られた...いや。オノが焔をただひたすらに熱く、強く焦がし続けるお前は見事だ。
己自身に溺れても妥協し、心身を常に磨き続け適格に力を振るう。
流石は剣の極意に達した奴が編みだしたものをオノがものにしただけはある」
「....ありがとうございます。師匠」
拙者が心から師匠と呼ぶお方はただ一人だけ。
全身をマグマのような紅蓮に燃え盛り、太陽のような明るく眩しい火炎が燃えている人。
五大精霊が一人、フェルバス。
父を殺した拙者は『殺人罪』として逮捕され、『フレイヤ火山に住む者の元で修行し、完全に終えるまでフレイヤ火山から出る事を一切禁ずる』と裁判で判決が下された。
数十年以上の強制重労働を覚悟していた。
この判決が下された理由は首都フェニスの将軍。シュスル・ソルトの計らいだそうで、何故オレを助けたかは知る由もない。
シュスル・ソルトはフェニスの最強武人。
噂で耳にした程度しか分かっていないが、最強の剣技である水、風、地、火の4つを極めていて、かつて師匠の元で修行していたそうだ。
初代剣聖が生み出した最強の剣技である『五輪の型』を習得する為、拙者は師匠の元で己自身を磨き上げ続けていた。
『五輪の型を全てマスターする』を師匠から課せられたからだ。
五輪の型は『心』『力』『身体』。そして自分自身の“隅々まで″向き合って乗り越える必要がある。
この修行を通して、拙者は自分の全てを見つめ直すことができた。完全に拭いきることはできなかったが改めて、これからどうすればいいのかが理解るようになった。
キンキンバキン!
キンキンバキン!
戦いは激しい攻防戦と化していた。
最強の矛に最凶の爪がぶつかり合う度にもの凄い威力をした衝撃波が発生して無差別に当たったものを切り裂く。
ムサシとべロスが戦っている場はもはや危険地帯と化していた。
お互いの武器の威力は同等で、どちらともに綻びは生じずその兆しは全然ない。
強大な存在に変貌したべロスは凄まじく、さっきまでとは比べものにならない程に力も身体も強力と化していた。
おまけに瞬時に再生する生命力に満ちているものの、究極斬刀剣は森羅万象“全て”裂き貫き断斬りする為この辺は気にする必要はない。
「どんなものであれ【限界】がある以上、やれることは限られている。
ヴラッドに匹敵、もしくはそれ以上の不死身の肉体をオレ様は手に入れたが、お前が脆い肉体である以上、オレ様を倒すことはできはしない。
かなり鍛えていて強い力を持っているが、その貧弱な肉体がお前の強さを引っ張っているのだからな」
「確かに拙者の体は脆く、回復魔法も使えないし、使えたとしてもそれを使うのに必要な魔力も残っていない」
「これが現実だ!これが圧倒的な壁の大きさだ!
オレ様がこれになった時点でお前の負けは既に決まっていたのだ!」
「まだ勝負は終わっていない。勝ちを誇りたいのなら、終わった後からした方がいい」
「誉め言葉として受け取っておこう。 忠告通り、とっとと終わらせるとしよう」
べロスがムサシにトドメを指そうと右手が振りかざされたが、ムサシは神速の速さでべロスの全身を細切れに斬り尽くした。
べロスは斬られたことを知らぬまま塵となって消滅した。
「剣は相棒であり自身を映す鏡。であれば、剣と一心同体となった拙者たちに死角はない」
【究極斬刀剣】は自分自身の“全て″を【劔】にして使用する剣技。
ムサシはその性質を利用して剣と完全にシンクロすることができる。
べロスが操る全ての魔物を斬り、べロスの事をほぼ理解尽くしてからムサシは勝負をしかけたのだ。
ムサシの父は毒親という事にしようとして元である無二について調べよう→元にした人物も毒親だった。




