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アークブレイヴ  作者: 暁辰巳
第二章 ファルシオン
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第28話 夜明け


 ゆっくり登る朝日が世界を照らしていく。


 教団との戦いが終わった後、私達は怪我人の手当てをしたり、炊き出しを行なったりして一夜明かした。

 幸いに一人も犠牲を出さずに済んだそうだからよかったけど、シャンバラの人たちの心の傷は完全に癒えていない。


 シャンバラは唯一安心できる居場所で、みんなの希望の地だった。

 無くなることが分かって覚悟はしてても、失った際に起こる反動は耐えられないから。

 


「おお、起きたか皆の衆! 昨日はとにかく大変だっただろう。

 さあさあ、まずは飯を食べながら大いに楽しもうではないか!」



 右手に肉を、左手に酒を持ったまま食事を楽しんでいる土人(ドワーフ)のミルドさん。

 彼は一番最初に起きたシャンバラの人で、おいしい匂いを嗅ぎつけて真っ先に食事を楽しんだんだ。


 ユイさん曰く、ミルドさんはよく楽しみながら食べて飲むことが大好きみたいで、みんなを元気づけたりしているらしい。



 昨夜ユイさんに宴の準備を頼まれて、ユイさん含む人たちみんなと協力して宴の要である料理を取り組んだんだ。

 私が持っている食料を少し使ったけど、材料の殆どはムサシさんやパーシヴァルさん達が調達したもので、お酒はパーシヴァルさんがわざわざ近くの村まで買いに行ったらしい。



 辛いことや悲しいことがあった際は美味しいものを食べて飲んで楽しんできたみたいで、今回はみんなを元気づける為に宴を開いたそうだ。


 

 宴を楽しみながら次々と料理を平らげていく。山ほど沢山作ったのにみるみる減っていくけど、みんなは気にせず宴を楽しんでいる。

 



「ムサシ、昨晩戦った敵はどうだった?」

「拙者と剣で斬った。中々すばしっこくて少し大変だったが、拙者にあの剣技を使わせる程強い相手だった」



 酒を飲みながら昨夜の戦いを語り合うムサシとパーシヴァル。ムサシは酒で少し酔ってはいるものの、冷静にディナダンとの戦いを語っていく。

 


『ボクとこの事は黙っていてね』


 ディナダンとの戦いは茶を濁しながらムサシは話す。ムサシは口止め料として教団が所持している秘薬を渡された。犠牲が出なかったのは秘薬の影響が大きい為、ムサシはジャンルの言いづけを守っている。


 ジャンルはあの後ディナダンを連れて元の場所に帰った。


 



『すまないが、お前らとは少し別行動となる』

「「ええっ!?」」



 宴を楽しんでいた最中に「話がある」とルガリアに呼び出された私とエレンさんは物陰へ移動して今後のことについて話していた。

 話に入ってすぐにルガリアの口から告げられたのがそれで、あまりに衝撃のことに私とエレンさんは驚きを隠さずにはいられなかった。


「どうして!? これからガイアス大陸に向かおうとしているのに」

『急なことて本当に悪いが、どうしてもやらなきゃいけないことができてしまったんだ。これはオレとアルトスにファルシオンだけでなく、この世界を含めた今後の事に関わる(・・・・・・・)重要なことだからな』


「その重要な事が何かを教えてくれ」


『勿論話す。それを兼ねてお前らを呼んだからな



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』



 これは、先日のヴォークとパロミデスの戦いを見ていたルガリアたちのこと。



『...やっと分かったぜヴォーク、お前が言ったことが』

『兄さん?』


 お互いの全身全霊が込もった一撃が激突し合ったのち、ものすごい大爆発が発生した。

 


『アルトス! 全身全霊に力をたぎらせろ、オレの力を使え!』

 


 ルガリアが言ったことにファルシオンも訳が分からず、「はあ?」と心の中でそう出たが、アルトスはルガリアの言う通りに全身に力をたぎらせた。


 アルトスの全身からはただ白一色の闘気(オーラ)が溢れ出ている。いたってごく普通のオーラ。誰でも発するものに変わりない。


「!?」

『アルトスと闘気(オーラ)が、白銀に変わった!?」


 白銀一色。それは紛れもなく月光神(ルガリア)の力そのものだった。

 白銀のオーラはアルトスの盾となって爆発の余波からアルトスを守った。


『いつか絶対に誓約を破ると分かっていたけど。いくらなんでも見損なったよ、兄さん!

 兄さんならこんなところではなく、もっといいタイミングで破るよね』 


 ファルシオンはルガリアの一歩手前まで近づいてルガリアに大声で問いただす。

 ルガリアはアルトスのすぐそばにいれるのは神々と誓約を結んだ為で、“神”としての力を行使することは誓約によって禁じられている。


『オレは誓約を破ってないぞ』

『あれのどこが破ってないって言えるんだよ! あれは紛れもなく『(月光神)』としての兄さんの力そのものであった以上言い逃れは!』

『落ち着けファルシオン。オレはただアルトスはただ身体に染みついた力の残り香を使うよう言っただけだ。

 魂体とはいえ、オレとお前がアルトスに長い間着いていればオレやお前の力がいやでも染みつく。それに誓約には「オレが直々に力を使ってはいけない」とあるが、「アルトスがオレの力を引き出してはいけない」とはなかっただろ?』


 「確かに」と心の中で合点がいったファルシオンは冷静になって少し落ち着いた。

 ルガリアが独断に力を行使しようとすれば誓約が即座に発動して何がなんでもルガリアを阻む以上、独断で力を行使したり行動する事はできない。



『流石は兄さんだけど、このまま誓約の穴を突き続けてもいずれ限界が来るけど、そのあたりの目処は?』

『その辺と来たる厄災――いや、今後のこと(・・・・・)に向けてあいつら(神々)に直談判するつもりだ』

『随分と大きく出たね』

 当たり前だ。そんだけ重要な事だからな。だからファルシオン、お前に一つ()く』


 ファルシオンをただまっすぐ見て、そう問ったルガリア。

 本気の眼をしていると分かった瞬間、ファルシオンは真剣となった。

 

『お前はオレの監督役としてオレに着いて来たが。お前が監督役である事を抜きにして、お前の胸の内に秘めてる思いがあるなら正直に答えてくれ。お前がこの旅の合間で何を感じてどう思い、アルトスに「何かしたい」と想っているか』



――オレにはお前ら二人がウズウズしているにしか感じなかったぜ――


 ルガリアから問われた瞬間、ヴォークに言われた事を即座に思い出したファルシオン。

 アルトスの事は「厄災への対抗手段」と「希望の一つ」にしか思っていなかった。

 短い間だが兄と一緒にアルトスと時間を共にして、いつしかアルトスを自分の息子と意識して見方と考え方が完全に変わった。


『...勿論あるに決まってる』


 兄の問いにファルシオンは正直にそう答えた。

 自分がルガリア(兄さん)の監督役として行動を共にしている以上、そこだけは何があっても手を抜きはないし、最後まで貫き通す気であることに変わりはない。



『私は勿論協力するけど、どうして直談判しようとしているのか、詳しく聞かせてくれるかな』

『ヴォークの言葉と、ヴォークとパロミデスの戦いを見てようやく分かったんだ。オレとお前はは完全なる足手まといだとな』

『どういう意味?』

『この旅を通してオレはオレは分かった。いや、知る事ができたんだ。

オレ達神々は【厄災】を完全撃破するために行動しているが、それだけじゃ足りねえんだ。

 アイツらが今どんな準備をしているのかは分からないが、【厄災】が復活してそれを乗り越える為にはこの世界全ての協力が必要なんだ』



 【厄災】が復活してもっとも被害を受けるのはこの世界だと神々は皆分かっている。例え【厄災】を完全破壊して解決したとしても、厄災がもたらした爪痕(被害規模)はこの世界全域に伝わって永久的に語られ続けるのをルガリアはようやく理解した。

 【厄災】の一番の被害者がこの世界の住人たちである以上。理不尽で敵いっこないものを完全に乗り越える為には、この世界全体で立ち向かなければ意味がない。


『オレは最初、アルトスを生み出した後何もしないアイツらに心底ムカついていたが、アイツらもアイツらなりにこの世界の人々を信じて厄災に備えていたんだなってやっと理解できたんだ。

 破滅の未来を塗り替える為には、現在(いま)と向き合い繋いでいくしかない。

 だからファルシオン、アルトス!』

「――!!」

『未来を救い得る為に、お前らの力を貸してくれええええええ!!』


「……ありがとう、お父さん」

『!』

「お父さんはいつも、私を案じて尽くしてくれた。そのお礼返しも兼ねて、私はお父さんたちに全力で協力するよ」




 



 


 

 





 


 





書きたくなったので書き刻んでおきます。


「″今″この瞬間が未来を創るのだ」

現在いま)を救わなきゃ、きっと未来は救われない。そうじゃないのか!」

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