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アークブレイヴ  作者: 暁辰巳
第二章 ファルシオン
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第26話 終戦

 

「ここまで熱く、興奮した勝負は久し振りです。私をここまで楽しませてくれて感謝します」

「それはどうもだが、去る前にお前がオレに喧嘩を売りつけた理由を教えろ」


 パーシヴァルがそう言うと男は話し始めた。


「貴方の足止めです。戦う前に言った通り、貴方がこの場にいたことは私たちも知らなかったので、私が直々に貴方を相手しに来たんです。

 本来なら(・・・・)私の役目は別にあった。ただ、それだけです」


「.....そういうことか」


 男の(説明)を聞いて事の顛末をあらかた理解した。

 ヴォークに幾度も戦いを挑むパロミデスのことはオレもよく存じている。

 パロミデスも教団の最上位であるシリウスの一人であるが、アイツはヴォークを目標として日々修行に燃える純粋な奴だ。

 今回はヴォークの足止めの為にパロミデスの信念を利用された。つまり、教団の狙いはシャンバラに何かロクでもないことする為だけにここまで来たんだ。


「どうやら目的が済んだようなので私はこの辺で撤退しますが、去る前に私の名を名乗っておきます。貴方とはまたこうしてーいや、それ以上に相まみえますからね。

 私はシリウスの一人であるジャック。今では『死神』という異名で呼ばれていますが昔は「殺人無」と呼ばれてもいましいた」

「その名はオレも知っているぜ。

 “無”にいつも溶け込んでいて獲物を()るときだけ気配を現すだけの正体不明の殺人魔。まさかその本人とこうして会うことになるとはな」


「お気に召してくれたなら私も幸いです。貴方と再び相まみえる時を楽しみにしていますよ」


 風が吹くとジャックは風と同化したように一瞬で姿が消えた。


ーーーーーーーーーーーー


『これが、二人実力。神そのものに匹敵する程にここまで強大とは」

「.......」


 二人は最初から全力全開で一歩も譲らない熾烈な攻防戦を繰り広げていた。

 巨大な身体のヴォークに小さい身体のパロミデス。

 離れすぎた身長差がある為不利有利は当然あるものだが、二人にそんな常識は通用しない。

 二人は何十何百回も戦いを繰り広げてきた同士であり、永遠のライバル同士。

 自分たちの手の内をお互いによく知り尽くしている。


「いくぜぇ! パロミデス!」

「今日こそお前に勝つぜ、ヴォーク!」


 灼熱の烈炎を全身にまとったヴォークがパロミデスを見下ろし、全ての力を左右の拳に込め続けながらパロミデスは空を見上げてヴォークを直視する。

 勝負の行方は二人の一撃によって決まろうとしている。


「はああああああ!!」

「かああああああああ!!」


 赤く燃え上がる強大な烈炎と小さいながらも烈炎と張り合う二つの拳が激しくぶつかり合う。

 激突し合う二つの力にバチバチと発生し続ける。




 少しの間ぶつかり合った直後にものすごく強大な発した。



 ヴォークとパロミデスは気を失ったまま地面にひれ伏している。

 力も殆ど使い果たして深手を負っているものの、二人とも生きていて死ぬことはない。二人とも強力な生命力と根性をしているからだ。


「ぁ...まだ...らあ」



 僅かならに動く右指と共に小声をあげたのはパロミデス。

 執念深い彼は例えこの身魂が砕け散ろうとしても自分自身を奮い立たせる。

 ヴォークに勝ちたい一心で満身創痍で体力も魔力もほとんど使い切ってもなお、全身の激痛が精神(こころ)を蝕ろうともパロミデスは立ち上がる。


 彼がここまでヴォークに執着するのは、ヴォークが遥かに強いと知り、「勝ちたい」と心から始めてそう思ったから。

 言ってしまえばそれはヴォークに対する憧れであり、好奇心そのもの。


 ヴォークを目標に日々鍛錬を積み重ねて身体を鍛え、精神を鍛え、技や技術を磨き続けたパロミデスは誰よりも強くなっていった。

 気づけば誰おも凌駕し相手にならない程に達していたが、それでもヴォークには届かない。


 相手(目標)は遥か高みの存在。

 雲を掴むように果てしないものだ。


 パロミデスは幾度もヴォークに挑み続けては負けていった。何度も負け続ければさすがに心が折れたり諦めようと少しでも思い始めものだが、パロミデスはブレずにヴォークに挑み続けた。


 

「まだだ、まだオレは...終われない」


 気づいたとき既に自分が衰え始めた事を知って、自分自身の何もかもが低下していることを思い知らされたパロミデスは激しく憤った。

 ヴォークを目標にしてから長く時間が経っている事は分かっていたものの、突然の終わり(衰え)を告げられたことで自分自身を否定されているような気分だったからだ。

 これまでヴォークに勝つことを目指して積み上げていった日々は何だったのか、目標を果たせてないまま突然終わりを告げられた絶望がパロミデスを果てしなく蝕んだ。

 

「オレの元に入り、お前が対価を果たすというなら、お前の望みを実現させると約束する」

 

 そんな時にパロミデスの元までやって来たのが、アルビンという男。

 彼がかなりあやしいのは一眼見て感じたものの、彼が嘘を言っている気配や雰囲気は一切なかった。 パロミデスは教団の一員となって出世たことで若返りを果たした。





「オレはまだ負けてねえぞ! ヴォーク!」


 腹から声を出してヴォークにそう宣言したパロミデス。

 痛そうであるものの、素振りをしたり表情に出したりは一切してない。



「オレだって....まだ負けてねえぜ! パロミデス!!」



 全身の鱗がひび割れ、鱗がない生身に重傷を負ったヴォークはパロミデスを真っ直ぐ見つめ、パロミデスに負けじと大声を出した。

 パロミデスの口から発せられた炎の波動は微弱だが燃えていて、ヴォークの熱意が嘘ではないと身をもって証明している。



「見事だ、パロミデス」

「ー!?」

「ここまで追い詰められたのは初めてでな。お前の期待を裏切って悪いが、オレはここまでらしい」

「....」

「お前の勝ちだ、パロミデス」


 ヴォークが倒れた。


「......」



 念願だった目標を達成できたものの、どことない思いが溢れるパロミデス。

 ヴォークに勝てたこと自体は嬉しいはずなのに、ほんの少ししか思わない。

 何故ほんの少ししか思わないのか考えても全く分からない。


 パロミデスはヴォークをまっすぐ見つめたまま静かにじっと立ち竦んでいた。

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