第23話 炎紅竜
ヴォークが竜族最強である理由を身をもって知った。
私達より数十倍デカい図体なのに動きが早くて反射神経が凄い。
それにアルトスさんの斬撃(勇者状態)を両手の爪で迎え打ったり、私の一撃をモロに受けたのに余裕で持ち堪えたりしている。
「手加減しているとはいえ、ヴォーク相手によく踏ん張っているな。」
崖の上でじっと立ったまま戦いを見守っているパーシヴァルがそうつぶやいた。
ヴォークと戦うことが決まったから、私たちはヴォーク山からかなり離れた平地に移動している。
火事になるとテラフィスさんのときと同じように仕掛けの設置が壊れたりすることはないみたいだけど、山火事が起こると大惨事だから。
ヴォークさんの背に乗って移動したけど、初めて空飛ぶ生き物に乗って空を飛んだ時の快感はとにかく凄かった。何せ絶対に体験できないことを味わえたから。
ルガリア教団がシャンバラに攻めて来たことを想定して、ムサシさんは一人向こうに残った。
「お前らが持つその不思議な力はすげえもんだな。力一つまとっただけで身体の動きと力がめっちゃ増幅されただけでなく、身体の再生能力まであがるとは」
「ヴォークさんこそ。あんな能力を持っているとは思わなかった」
ヴォークさんに苦戦した主な理由の一つであるかなり強力の再生能力。やっとヴォークさんに大ダメージを与えることができたけど、受けた傷を何事もなかったかのようにすぐに回復したから度肝抜かれた。
回復魔法を使ったのでもなければ、術式を発動させたのでもない。ヴォークさん″自身″による再生。
「オレにあそこまで強力もんを浴びせてくれた礼に、教団に関して知っていることを話すぜ」
「いいの!?」
「ああ。久しぶりにここまで楽しませてくれたんだ、遠慮しなくていい。礼には礼で返すってのが筋って奴だろ?」
ヴォークさんが“魔族”である以上当然ルガリア教団の粛清対象に含まれているけど、ヴォークさんは教団の最上位であるシリウスの何人かを返り討ちにしているそうだから、竜族最強なのは伊達じゃないのが分かる。
「奴らの最強挌であるシリウスは共通点としてオレに匹敵する再生能力を必ず持っているだけでなく、何かしらの能力や特異性を秘めている」
「それってどういう…」
「オレやパーシヴァルにムサシに匹敵、もしくはそれ以上のバケモノばかりの集まりってことだ」
組織の上層部の人間がめっちゃくちゃ強くてヤバい者ばかりなのは予相できていた。
「お前ら二人に一つ聞きたい」
ヴォークさんはアルトスさんに顔を向けた。
「アルトスの中にいる二人、なぜ何もせずにいたんだ。お前らがその気になれば一対一であろうとオレ相手にかなり善戦できただろうに」
アルトスさんについているファルシオンとルガリアの存在に気づいたヴォークさんに私とエレンさんは少し驚いた。二人が″神様″である以上、アルトスさんに一緒に戦えばヴォークさん相手に善戦できたのは間違いないと思う。
『オレとて、出来ればアルトスの戦いに協力してえさ』
『貴方の言い分はもっともですが、私達には守ればならぬルールがある以上。私はそれを守らなければいけない」
二人がアルトスさんと同行できているのは神々の許可との誓約を守っている為。【厄災】という緊急事態とアルトスの為とはいえ、『神』が私情的理由で世界に干渉することは認められていない。
「お前らの事情は知らねえし知っていてもケチ付ける訳じゃねえが。
お前ら、本当にそれでいいのか。
オレにはお前ら二人がウズウズしているにしか感じなかったぜ」
「……」
(私が、ウズウズしてる?
アルトスとは兄さんと一緒に物心がつく前からずっと側にい続けてきたが、私も“神”の1人。どんな事情であれ私情であろうと、私は慎まなきゃいけない)
「まあ、言いたいことは済んだ。次はお前が相手か、パロミデス」
ものすごく強大な力を秘めた人がこちらに向かってゆっくり近づいているのを感じた。
大魔王に匹敵、もしくはそれ以上の覇気。
「…パロミデス」
ヴォークが言った名をエレンは見逃さなかった。ヴォークの口振りから「パロミデス」のことをよく分かっていることを即座に理解した。
「久しぶりだな。この前の時とは比べものにならない以上に強くなったじゃねえか」
「当たり前だ。お前に勝つのがオレの目標だからな」
赤い髪に金色の眼をした、いかつい顔に鋭い眼光をした男の人が私たちの前に姿が現れた。
第一印象としては怖くて不気味と印象を抱く程、ヤクザですらビビってしまう程の威勢に満ちあふれていた。
「オレは今からパロミデスと決闘をするから、お前らは今すぐこの場から離れろ。
オレとパロミデスが本気でぶつかり合うと辺り一帯を破壊し尽くしちまうからな」
ヴォークさんの言葉に従って私たちは今すぐこの場を急いで立ち去った。
「ただしアルトス、お前だけはこの場に残ってオレとパロミデスの決闘を最後まで見届けろ」
「どうして?」
「お前ん中にいる二人に喝を入れる為だ。
これからお前らが戦おうとしている奴らがどれほど強いのかを身をもって知っておかなきゃいけねえ」
「話は終わったか? ヴォーク」
「今終わったところだ。待たせて悪いな、とっと始めようぜ!」




