第17話 神殿に神器とその2
状況はお互い一歩も譲る気は微塵のかけらもない、激しい攻防戦を繰り広げている。
特性は違えど、お互い同じ勇者の力をまとっている以上、この戦いは経験と少しのミスに大きく左右される。その事はアルトスさんも大魔王もよく分かっていると思う。
私とエレンさんは神殿の中から戦いの行方を見守っている。できれば加勢したいけど、二人の激し過ぎる攻防戦に圧倒的な力に私たちは足元にも及ばないからそうするしかない。
神殿はフェルバスさんによって守られているからここ以上に安全な場所はない。流れ弾や衝撃波を全てフェルバスさんが自慢の剣で一刀両断していて、神殿には指一本触れさせんと言わんばかりの雰囲気を出していた。
「始まりがあれば終わりが必ずあるように世界に存在しているものは皆、生まれているも同然。
我は存在する者を消し去る者である以上、我に消し去れぬものはない」
フェルバスさんが存在しているものにとっての″天敵″である以上、存在していれば例え自分よりも強大な力であってもたやすく葬れるみたい。
実際にしばらくの間激しい攻防戦が繰り広げられているというのに私たちがいる神殿だけでなく、神殿の間は全然損傷が起こってない。
二人が戦っている間の隙を突いて余波を全て消すとなればかなり至難の業だ。何せ勇者同士の衝突によって発生する強力で強大な衝撃波は巻き込まれてしまったら即あの世行きが免れない程の威力をしているからだ。
エレンさん曰く、「こんなに強大でそこが知れねえ力を前にしたのは初めてだ」と言っていた。
神々の子供である究極生命体さんに大魔王であるベリアル。しかも両者共々に勇者の力を身にまとっているから想像を絶するのは当たり前だ。
「ブェテオス!」
火炎系最上級の魔法、その魔法を矢代わりに放った。
火炎系限定だけど、魔法を矢代わりに放てるのは反則だと即座に思った。
弓の神器によって威力が増すだけでなく、発射したときの速度がますためほぼバズーカを撃っているのに等しい。
アルトスさんがベリアルが発射したものを真っ二つに切り裂いた。
神速の勢いですぐさまベリアルに向かってまっすぐ猛進し、アルトスさんの攻撃にベリアルがすぐさま対応し、手に握っている弓の神器で防いだ。
神器は硬いだけでなく修復能力を持っているそうだから乱暴に扱っても大丈夫なのは分からなくもないけど、速すぎるアルトスさんのスピードに瞬時に対応できるあたり流石は大魔王だなと改めてそう思った。
「ギガブェレイ!」
立て続けに大魔王は灼熱系の最上位魔法を繰り出した。今回は矢というよりビームを放射しているようなもので、最初に発射した火炎魔法はブラフに使ったということ。
アルトスさんのすぐ近くまで迫った為よけることも防ぐこともできずアルトスさんに直撃した。
「アルトスさん!」
私がそう叫んだ、その瞬間だった。
「――ええ!?」
「神器なだけあって」
ビームがベリアルが放った灼熱魔法を圧倒的に押しのけた。
突如だった。
もろに攻撃を受けてしまったというのにアルトスさんは全然ダメージを受けてなくて、しかも剣の神器の先端からビームが発射されていた。
「このときを待っていたよ」
流石に剣からビームが発射できるとは誰も予想することができない。ビームを撃てない奴は剣士ではないという常識を知っている私でも、その常識は根幹となってる「作品内に限った」と思っているから気づくことができても予想することができない。
「そんな隠し玉を持っていたのは驚いたぞ」
大魔王の左手で燃え盛っている火炎らしきものがアルトスさんが放ったビームを防いでいた。
見るからにベリアルの下半身は消し飛んだようだけど、火炎とともにベリアルの下半身が瞬時に再生した。
「これも神器の力の一つか....。これがなければオレは完全に詰んでいたな。
喜び、誇りに思うといい。オレをここまで追い詰めたのは、お前が初めてだ」
『分かってはいたが、やはりこのまま上手くはいかなかったか』
『奴はただの大魔王じゃないからな。かなり鍛え上げた肉体に精神はかなりのものに磨き上がっている。勇者の力を抜きにしても、ベリアルはオレ達に近い程に強いな』
『兄さんが言うからには、それほどなんだな』
弓の神器は4つの勇者の中で一番生命力が強い以上、倒すには一瞬の隙をついて一気に最も強力な攻撃を叩き撃つしかない。
自身の能力に一番詳しいファルシオンだからこそよく知ってていて、それ以外に勝つ方法がないのはアルトスさんとルガリアも分かっていた。だからこそこの一瞬に全ての攻撃に全てをかけたのだ。
「先程オレに食らわせた強力な技とオレを追い詰めたことに免じて、オレの力の一端を見せてやろう。その身その目その魂に刻み込むといい!」
一瞬でベリアルはアルトスさんの目の前に近づき。
「灼炎身撃!」
緋色に燃え盛る炎が手にまとって――いや、炎が手と一体となってアルトスさんに強力な一撃を浴びせた。アルトスさんは吹き飛んでマグマの海に落ちた。
即座に気づいたエレンさんが言ってくれた。
――ザシュ!
剣の神器が私たちの目の前に突き刺さった。
マグマの海に落ちる前に何とか剣の神器を守り抜いたしかでなかった。
「今のは我が奥義の一つ灼炎身撃。魔法使いが……いや、お前たちが魔力を各属性に変化させて使うように、オレの魔力をオレ自身と一つに研ぎ澄ますことで使ったのだ。
ただ魔力を使うだけでは放った瞬間から少しずつ消滅していくが、魔力を自分自身と一体にして使えばほぼ魔力を温存することができるだけでなく威力を維持することもできるのだ」
なるほど。だとすると弓の神器はベリアルと相性が良すぎる。馬鹿な私でもこれだけは分かる。
魔力を自分自身と研ぎ澄ませることはつまり、自分自身と一体にして使うから、魔力の温存や威力を維持することができても、その分肉体と気力の負担が大きい。
だけど再生力にもっとも優れた弓の神器の能力がそれをカバーするから、実質ベリアルは無敵も同然なんだ。
「さて、次はどっちが相手だ、それとも二人共々相手になるか?」
私は黙って剣の神器に向かってゆっくり近づいて手に握った。アルトスさんが負けたことの絶望感が凄くて今にもビビって泣き出しそうだけど、今は大魔王を倒さない限り私たちは助からない。
「次は私が相手よ! ベリアル!」
見た目に全然変化は起こっていない。しいて言うなら瞳の色が緑となり、オーラには僅かながら緑色が混じっていた。
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これは、ある日の野宿のこと。
『いざとなったら剣の神器をお前に渡す。アナが剣の神器を握ったとき、剣の神器がアナに宿っている力と共鳴してアナの力となるからだ』
「私は別に構わないけど、私は剣を一度も使ったことがないから素人以下だよ」
私が持っている力が他の神器と全て合体することで真価が発揮されるのはシロウさんから聞かされたから知っている。ファルシオンとルガリアが今私達にこうして話しているのは、最悪の事態となった場合に対処するための作を伝えるため。
『神器に使用者の意思と記憶が染み付く特性上、剣を全く使ったことがないアナでも問題なく戦える。
アナの疑念通り、ある程度剣の技法は身に付けておくべきなのはオレも同意見だ』
剣の神器は剣先から真っ直ぐしかビーム(ブレス)を発射できない他、魔力弾ならぬ息吹弾を連射することも可能です。




