ジャンル対教団
「な――何故だ!? 我らが作り上げた対魔王用の新兵器が、 人の皮を被った小娘ごときに!」
「それはお前がより強い力と肉体を得ただけのことだ。それらを得ただけで慢心しきったお前が、ボクに勝てると思っていたのか」
確かに雑魚が使った秘術は凄い。力をセーブしてたとはいえ、ボクと互角に渡り合えたんだから。
身体力と秘めた力は凄まじかったし、あまりの再生能力は流石にちょっとは驚いたし感心した。
魔王を超えたのはまず間違いない。秘術が改善され続ければ、大魔王を超えて神にすら等しいものに仕上がるだろう。
だが要となる使用者が腐りきっている以上、力も肉体が持ち腐れと化すのは当然の事だ。
“真の強者″というのは、自分を常に磨き上げ続ける者の事をいう。
自分の力に浸ろうが、感情に流されようが、常に自身を磨き上げ続ける者に限界はない。
自分が持っているもの、与えられたものを極め続け、
自分より優れている奴がいて絶望しようが、ただ絶望に打ちしがれない奴は誰であれ強い。
だからボクは他種族を差別しないし、ボクより弱い奴は誰であれ見下しはしない。口先だけや、力を得ただけで慢心しきった小物には、反吐が出るけどね。
「う! うるさい!! ルガリア教団の技術力は、最強なんだ――!!」
「破消の波動」
瞬く間にジャンルはそう唱えた。
敵は塵の小砂も残さず、一瞬で完全に消滅した。
自身に何が起きたのかも理解できないまま、全て跡かたなく消滅した。
遺体と魂すら、残ることもなく。
「ボクの質問に全て答えてもらう。全て話せ」
「……はい。」
ジャンルは絶従指令鎖を使用し、したっぱから全ての情報を聞き出させた。
絶従指令鎖は自身より弱い者に対して使う秘術の一つであり、鎖にかかった弱者は、強者の命令を絶対に遂行しなければいけない。
実力であれ、精神であれ、そのどちらも強者に屈してしまった者は強者の指令を遂行せざるしかない。
したっぱから雑魚が使った秘術について問いただしたところ、何も知らなかった。
幹部やシリウスの全員にしか与えられていないもの以外には全然知らなかったそうだ。
ただのしたっぱにあの秘術について全然知らないのは当たり前か。
だが、したっぱが持っていた物に気になる物が一つあった。
ガラス瓶の中に入っている蜂蜜のように精密な黄金の液体。
何でもその液体は回復薬で、かなりの特効薬だそうだ。
生きていればどんなに重傷を負っていようと、どんな病を患っていようが、かけるか飲むだけであっという間に完治させるものだそうだ。
問いただせた時は本当かと疑ったが、瓶のフタを開けて疑問が確信に変わった。
瓶の中に詰まっていた嫌なものを感じたからだ。ボクら悪魔にとってはもっとも嫌悪する奴らのことが。
情報を洗いざらい問いただした捕虜たちはドラゴニア龍国へ転送させた。
後の事はギラたちが法の下に裁きを下すだけだ。
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「お前、聖族だな?」
「ああ。そういうお前は悪魔だな。それも超悪魔な超高位種の」
奇襲をしかけたとき、男から赤い牛が出現してボクを返り討ちした。予想外すぎたことに驚きはしたけど、この程度のことは問題ない。
コイツを見つけたのはほんの偶然だ。気配や匂いを感じ取るができなかった以上、何らかの細工をして身を隠しているんだろう。
姿形はどこからどう見ても人間だが、人間じゃないのは一目見て分かった。
コイツはこの世界にいる数少ない聖族の一人だ。
聖族がこの世界に僅かながらにいるだろうとは思っていたけど、まさかこんな形で出会うとはね。
聖族は“穢れ″という、欲望などの負の感情から生まれるものをもっとも嫌悪する。聖族にとっては毒みたいなもので、聖族がいくら穢れに触れすぎても死ぬことはない。ただボクたち悪魔のように、欲望に忠実となるだけだ。
少なくとも聖族が何の対策もなくこの世界に滞在していようと、穢れに染まりきることはほぼないだろう。
「流石に驚いたよ。まさかそんなものを隠し持っていたとはね」
「悪魔がここに来て何をしている? 本来お前たちはこういう所を見るのが好きなんじゃないのか?」
「それはこっちのセリフだ。それにボクはそんなことが好きじゃない。こんな所に来て何を企んでいる」
「ただ見に来ただけだ。異邦より来た者を」
やはりアナのことに気づいていたか。聖族は空間に適した存在である以上、世界で起こったことに気づきやすい。
だがアナの影響にで起きた事はほんの僅かなものだ。最上位聖族の智天使以上でなきゃ気づくことができない。
「なら、行かせる訳にはいかないね。お前はボクが止める」
「肩慣らしくらいにはなるか」
肩慣らし。
コイツはかなりの強者なのは間違いなく、ボクを舐めてはいないのは雰囲気ですぐ分かる。
「ほう、俺の隠しに隠しているものを初見で見抜いたか」
「あいにくと、一度身体を交えた奴の事を把握するのは得意でね」
赤い牛の突進を防いで、白い翼の二連撃を防いだ。反撃を受けたとき、僅かながらに潜んでいるもう一つの力に気づいた。
赤い牛の反撃が防がれたときに現れるのは即座に予想できた。
「どうやらそれ以上の隠しものは持っていないようだね」
コイツが隠しているものはどうやら二つだけのようだ。
一度あれば二度もあり、二度もあれば三度もあったりする。
けどもしかしたらまだ隠し持っているかもしれないから、一応少し疑っておく。
相手の手の内を全て知ったとき、そこまでと普通ならそう確信するだろう。
だけどボクは普通じゃない。
相手を最後まで過信せず、油断もせず、相手について常に思考を巡らせながら戦う。それがボクだ。
コイツが更なる隠しものを持っていたとしたら、それは追い詰められたときくらいか。
「隠しものを持っているのはお互いに同じだろ」
「察しがいいね。その通りだ、よ!」
今のところ肉弾戦を繰り広げていて、短時間で対戦相手のことをある程度把握したのはお互い様だった。
ボクは闇魔法で追撃してたけど、アルビンは一切魔力を使っていない。
戦闘の意思や殺意が一切ないから、勝つ気が一切ないんだ。
ボクらが奴らを嫌悪するように、奴らもまたボクらを嫌悪する。
ただの聖族じゃないのはわかってはいたけど、ここまで変わり者なのは珍しいものだ。
「できればこのまま肉弾戦を楽しみたいが、これ以上は時間が惜しい。悪いが終わらせてもらう」
「そんなこと、ボクが許すと思うかい」
「思ってはいない。お前がそれを妨害するのは分かっていて、オレが前言で言ったことをお前は予想している、そうだろ?」
「分かっているじゃないか」
アルビンの全身から、赤、白、青の三色が混じったオーラが湧き始めた。
アルビンの髪と目の色も三色に変化した。
「あぶねーなっ!?」
どうやら本気になったそうだ。
さっきまでとは比べものにならない程力が強くなったし、身体の動きも早くなった。
「そうでなくちゃ面白くない!」
「......」
アルビンは全力を解放したボクに反応することも、言葉を発することも一切なく、ただボクを全力で蹴散らすことに専念しているようだ。
力の差はボクの方が上だけど、アルビンのはその差を押し抜ける。
久しぶりに全力を出したが為戦い慣れていないのもあるけど、ハイそうですかと簡単にやられるボクじゃない。
互角なのは相変わらずで、お互い一歩も譲りはしないし、隙を見せず、油断があればそこを責める攻防戦を繰り広げている。
風そのものと一体となった炎と氷が混じり合った超強力なものをアルビンは解き放った。
「破消の波動」
超強力な二つの力がぶつかり合い、大きな爆発が起こった。
「.....逃げられたか」
聖族は人工AIのような思考回路をしていると設定しています。
名前に関して「天族」にするのが普通だと思いますが個人的に気に入らないし合ってないと思ったので天使=聖族にしました。
ちなみに、聖族は固有で変身能力を持っています。




