第13話 親
本来なら2話前ですべきところを今回でいうのは少し遅いと執筆中に気付きました。
気が付いたとき、私はシロウさんがいる世界にいた。
緑一色の平らな草原にキレイな青空。心地よくさわやかな空気。
ここにはずっと居たくるなる。いるだけでスッキリ楽になれるから。
「やあ、数日ぶりだねアナ君」
シロウさんが笑顔で私に手を振った。
スタンバっていましたような感じで立っていて、私を出迎えた。
「明野さん!」
「エレンさん!? どうしてここに」
「気づいたらオレもここにいたんだ、シロウがオレと明野さんだけを呼び出したから」
どういう魂胆か分からないけど、シロウさんが私だけでなくエレンさんまでこの世界に連れて来たって事は、それほど重要なことだというのは間違いない。
シロウさんがエレンさんまで連れて来たのは流石に驚いたけど、私を簡単に連れてこれる以上、二人や三人も連れてくるのはたやすいんだと思う。
「今回アナ君とエレン君を招待した理由は、アルトス君の事情について詳しく話すためだ」
「そのことでずっとシロウさんに聞きたかったんですよ、どうして私に会いに来てくれなかったんですか?」
「会うのが遅くなってしまったことはすまない。本来なら君達がアルトス君と会ってからアナ君と会う予定だったけど、その時に少々厄介ごとが起きてしまって、その対処に少し時間がかかってしまったんだ」
「こんなに理想で幻想的な世界で、厄介ごとが起こることに疑問を感じるんだが」
「そのことについて話したくもあるけど、すまないが今はアルトス君について話に専念してほしい。
裏を隠すのは好きじゃないし、したくもないが、ボクの世界も時間が有限でね」
私とエレンさんはシロウさんの言葉に返事をした。
「まずはアナ君に渡した力とを選んだ経緯について話すとしよう。
君たちも知っての通り、アナ君が持つ力はアルトス君に渡す予定だったけど、ルガリアが反対したことを気に、ボクはアルトス君に力を渡すことを止めたんだ」
ルガリアは責任感が強い神様で、アルトスさんをただ生み出した後は何もしないことがどうしても許せなかったらしい。どうしてもアルトスさんの傍に着くことを譲らなかったそうで、例え自分自身が完全に抹消されようと、神としての資格を剝奪されるとしても、ルガリアの事が諦めなかったらしい。
ルガリアがアルトスさんの″親″といったのも納得がいったし、ルガリアのことが更に好きになった。
ルガリアが子思いなのは分かっていたけど、ここまで深いとは思わなかったから。
ルガリアとファルシオンがアルトスさんに同行できているのは、ファルシオンがお目付け役として同行しているかららしい。
ファルシオンとルガリアは実の兄弟同士で、ルガリアが兄でファルシオンが弟。
ルガリアの事をファルシオンは一番理解している為、仮にルガリアがアルトスを利用しようと企んでいたとしても、ファルシオンならルガリアが隠しているものを即座に見抜くことができるからだ。
アルトスさんでなければ誰に力を託せばいいのかの議論で人間に託すことをシロウさんは提案して、
海神月光神、地神の賛成を得て可決されたらしい。
「アナ君も知っていると思うけど、君に渡したその力は全ての神器と一斉に揃うことで真の力を発揮する。要するに合体だね。
だから「神器と揃えばそれでいい」から、アルトス君はボクたちに創られたんだ」
アルトスさんが厄災の切り札であることに私たちは納得した。確かにそれなら完璧で無敵なアルトスさんさえいれば全て解決するから。
アルトスさんに弱点はない。しいて言えば毎日三食食べないと機嫌を損ねるし、不味いと更に機嫌を悪くしてしまうくらいだけど、大したことじゃない。
アルトスさんはどんな環境であっても平気でいられる上、食事や睡眠をとる必要もなくて、傷は即座に完治できて五感と力は凄まじい。
おまけに肉体と魂の両方を同時に消滅させないと倒せないようだから、完全にチート過ぎる。
「それだとアルトスをあと三人も生み出せばほぼ全て解決するんじゃ」
「その案もあったんだけど、流石にそれはルガリア君だけでなく、ミダチも見過ごせないから否決されたんだ」
神々がアルトスさんを生み出せた以上、アルトスさんと同じ存在の二つや三つと生み出すのは簡単だ 。
アルトスさんがメタルク○ラみたいに何万体もいれば安心感が半端ないのはどう考えても確実だから。
「ボクがアナ君を選んだのは、君なら力を託せると確信したからさ。
アナ君が危険を顧みず子供を助けようとしたからでもない。人との繋がりと緑を大切にする君だからこそ、ボクは君がふさわしいと思ったんだ」
シロウさんにそう言われると流石に照れる。
私がしたことが私を選んだ理由じゃないと知って少し嬉しかった。
少し昔の私が今の自分の意思を聞いたら怒りそうだが、それでいい。
子供を助けようと私がとった行動を否定する気はない。後になって自分がしでかした事に失望と後悔をしたりしたけど、過ぎたことは仕方ない。
「アルトス君は強いが、強いからこそ危険でもあってね。
力ほど諸刃な剣はないし、誰もがほんの少しでも力を持ってしまえばそれだけで大きく変わりかねない。良くも悪くもだ。
だからアナ君とエレン君には、ファルシオン君とルガリア君たちと一緒にアルトス君を守って...いや、導いてほしい」
そう言ってエレンさんは頭を下げた。
「アルトスは既にオレたちの仲間だ」
どう言おうか考えていたら、エレンさんがまっすぐシロウさんを見て言った。
「導いてほしいも何も、旅先と目的が同じである以上、お互いに助け合い面倒を見合っていくんだ。
アルトスが何か危険な事をしでかすっていうんなら、オレと明野さんが止めてやる」
「ファルシオンとルガリアの事を忘れてない、エレンさん?」
「忘れてない」とエレンさんがボソッとそう言った直後、シロウさんが笑った。
「ありがとう、明野君エレン君。君たちの旅がいい旅になるよう祈りながら見守っているよ」
ちなみにアルトスは女ではなく“男″で、男の娘って奴です。




