第12話 港町ウインド
「キレイ!」
青く爽やかで綺麗な海を目にした瞬間、私は興奮して移動の疲れを吹っ飛ばした。
馬車はギラ竜王に返したから港町まで歩いてきた。
元々馬車は森までの移動で使うのが約束だったから
「これが海か」
「綺麗でしょ?」
エレンさんが海を見るのがこれが初めてで、海を気に入ったみたいで、海に見惚れている。
今日の天気はにほんばれだから綺麗な海を一望することができるし、港町の出入り口がすぐそこだから町の中で一番高い標高地にいるからこそ、絶景を一望することができる。
欲を言えば、今カメラを持っていないのが何より悔しい。
私は気に入った景色は必ず写真に収める。絶景はその場で目と記憶に焼き付けるのが一番だけど、気に入ったものは何でも写真にとらずにはいられない。
景色を写真にとって見返せば、懐かしさと共にその時のことを思い出して楽しむことができるから。
「ここまで良い天気なら海がよく見えるのは確かだが、アナがいうほど海は特別なのか?」
「じゃあ、アルトスさんは海が好きじゃないの?」
「好きでもなければ嫌いでもない。ただ綺麗、としか思えないし感じない」
アルトスさんは美味しい食べ物以外にあまり興味がない。人間社会に溶け込んで生活してきた影響でおいしいものが好きになって、日々の食事を毎日の楽しみにしているらしい。
食事を取る必要がなければ寝る必要もないけど、断食を狭まれたときは意地でも断固となって美味しいものを食べようとする程で、頭が上がらないらしい。
アルトスさんは私の料理の虜となった。今まで食べて来たものの中で私の手料理がかなり美味しかったそうで、今は移動中に挟む休憩の時がめちゃくちゃ楽しみとなったみたい。
「金貨三枚、確かに預かったぜ」
「船が魔動機製に変わってから値段が上がったとは聞いていたが、まさかこれほどとは」
ものの性能が上がると値段が上がるのは、異世界でも当たり前のようだ。
スイ○チのソフトに交代してから一本のソフトを買うだけで結構高くなったように、こういうのとはどんな世界でも切っても切り離せないみたい。
「わあい」
船のデッキで潮風と日光に当たりながら、私は船から見える景色を満喫している。
アルトスさんもデッキにいるけど、ただじっと海を見続けていて一歩も動いていない。
エレンさんは船の中で休んでいる。
長い移動で疲れていたと思うから無理はない。
私も疲れているから、あと少しだけ景色を満喫したら部屋に戻ってゆっくり休むとしよう。
船の移動は最低で一日二日はかかる。
各地へ移動するにはガイアスからかなり距離をとったまま迂回して移動しなければいけない。
ガイアス大陸には魔王たちがいて、ガイアス大陸付近の海には凶暴で手強い魔物しか生息していないからだ。
魔物だけならまだしも、魔王たちの縄張りに近づいて魔王たちの機嫌を損ねるのはとても危険だからだ。
魔族は売られた喧嘩は必ず買い、喧嘩を売った者たちは皆、それに加担した者たち全員を確実に殺す。
昔にある数国が結託してガイアス大陸にいる魔族根絶を目的とした討伐隊をつくって送り込んだそうだけど、一人も生きては帰れなかった。
しかも僅か半日で数国は滅ぼされたそうでその大事件以降、ガイアス大陸には絶対に喧嘩を売ってはいけないことが絶対となり自由に船を持つことが出来なくなったらしい。
許可無く船を持っていたり出航したりすれば罰金(もしくは懲役、またはその両方)が課されるようになったらしい。
現在まで魔族たちが定期船を襲った事は一度もないそうだけど、その気になれば船をいつでもできるし、奇襲を仕掛けてくるかは分からない。
海は常に死と隣り合わせの領域である為、少しの油断やミスが許されない。
魔導機製の船はとても頑丈で対海竜の用の強力な兵器を積み込んでいる上、魔王に襲われた事を想定した秘密兵器があるそうだから、余程のことが起きたとしても最低限の損傷で済むようにしているらしい。
海に入れば必ず目にすることガイアス大陸。
うっすらとだけど、虹に光る大きな木を確認できた。
世界樹レグド。虹色に光る葉に銅に輝く木を携えたガイアス大陸の中心にある大樹。
かつてはその大樹の一つ一つが超高額に売れたそうで、レグドから作る薬はこの世界でもっとも最高級の特効薬らしい。
どんな大怪我も不治の病も絶対に完治するようで、伝説として語り継がれる程に有名となる程。
レグドはどれも超高密度の魔力で満ちているそうで、その価値はオリハルコン以上にもなるらしい。
更にレグドはどんなに伐ったり燃やしたりしても即座に再生する為、伐採は不可能で、世界樹を傷つけすぎると世界樹と地の大精霊の怒りを買って生きて帰れないと伝わっている。
「アナ、飯は」
「冷めて美味しくないけど、それでも構わない?」
「構わない、私に食べさせてほしい」
船では一応食事が提供されているけど、アルトスさんは完全にそっちのけで私の作った料理にしか目がない。
一応船の提供食を食べたみたいだけど、不味くて食べられなかったらしい。
私としては不味くはなかったけどまあまあだった。
私の料理をアルトスさんはおいしそうに食べた。




