第11話 終戦とその後
変更点
大魔帝を大魔王に変更します。
ルガリア教団残党のほとんどはジャンルさんによってドラゴニア龍国へ転送され、森の大火災はテラフィスさんが降らせた雨によって消化された。
犠牲となったエルフは少なくてよかったけど、エルフたちは住処を失った。
風の大精霊によって守られた、エルフたちにとって永遠に続くと思っていた平和はあっさりと破壊された。それはもう、粉々に。
生き残ったエルフたちは三つの派閥に分かれて地理尻に消えていった。
最後までテラフィスさんと運命を共にすることを選んだ人たちが少数。
新たな住処を探してそこで生活することを選んだ者が大半。
ドラゴニア龍国へ行って生活することを選んだ者が最小。
これからどう生きていくかで決断した一人一人のエルフの姿に胸が締め付けられた。
私の家族はお互いがお互いに助け合いながら生きてきたから、エルフたちを私の家族と重ねてみた。
厄災から世界を守るために異世界に行くと決めてから、残酷なことを目にするのは覚悟していた。
だから憐れみの感情が沸いても、臆しはしない。
これで私自身がブレるなら、厄災から世界を守ることができないから。
テラフィスさんが教えてくれた情報によると、テラフィスさんは厄災について何も知らなかった。
すみずみまで行き渡る風を通してこの世界についてほぼ知り尽くしているテラフィスさんでさえ、厄災を知ったのはアルトスさんが生まれてかららしい。
厄災に関する情報を知ることができなかったのは残念だけど、手がかりは得れた。
何でもガイアス大陸の中心に位置する巨大な大樹。その化身であるレグスと会えさえすれば、厄災に関する手がかりを得られるらしい。
ガイアス大陸に魔族が閉じこもってから、レグスとの連絡ができなくなったみたいだから、直接その地に赴いて確かめるしかない。
大魔王ベリアルの配下である血魔王ヴラッドが今回起きた騒動の裏に隠れて、私たちを監視していたことが分かった。
私がこの世界に召喚されたあの日、僅かながらに起きた世界のできごとを感じ取ったベリアルはヴラッドの偵察を命じたそうで、観察し終えたヴラッドは即座に帰ったらしい。
大魔法使いの魔力探知に引っかからないほどヴラッドの隠密行動に優れていて、エレンさんとアルトスさんは分からなかった。
ヴラッドがすぐ近くにいたことを知ったエレンさんは恐ろしさのあまりかなり気を引き締めていた。
----------------------------
テラフィスさん達と別れを済ませて、私たちは次の目的地へ向かう。
目指すは太陽神ファルシオンが統治していた地、ファルシオン島。
その地にある弓の神器を回収するため現在、港町ウインドに向かっている。
ルガリア教団がテラフィスさんの森を襲った理由はエルフを殲滅させるついでに、剣の神器を回収するためらしい。ジャンルさんがしたっぱに吐かせた情報によるもので、間違いはないそうだ。
裏で教団を操っている者は水の大精霊を倒して杖の神器を奪った。ソイツの目的は全然分からないけど、神器を狙っていることが分かった。
神器を集めて何を企んでいるかは分からないけど、大抵ろくなことじゃなにのは確かだ。
神器が教団の手に渡らせないために、奴らより先に神器のところへ行って確保するしかない。
弓の神器を守護している五大精霊、フェルバスは五大精霊の中で一、二を争うほどに強いみたいで、教団にとっての天敵らしい。
教団がどんな力と生命に満ち溢れていようと、不死身であろうと、
世界に生まれたものは誰であれ“存在”していれば生きていることに等しいそうで、死者も例外ではなくヴォルバーの格好の餌であるらしい。
あと、カラドルグとの戦いで私の右腕が新たに生えてきたのは勇者の能力の一つらしい。
全ての勇者に共通している能力で、生きていればどんな怪我や傷も完治するそうだ。
「目に意識を集中しすぎだ。眼と耳だけでなく、心と力に意識を向けろ」
移動中の休憩のさなか、私はアルトスさんと鍛錬をしている。
これから先、教団や魔王たちといった強敵との衝突は避けられない以上、ただひたすらに強くなるしかない。
力を使わない“生身″での状態と、力をまとった状態とで鍛錬をしていて、今は力を使っている。
生身だけの方はまだ僅かながらに抵抗感があったけど、あの惨状を目の当たりにして覚悟を決めた。
いざというとき、私の魔力が少なくなって空となる最悪な状況が来る。馬鹿な私でも分かるし、想像することはできる。
だからその時に備えて訓練を積む。地震や津波の避難訓練と同じで、訓練をした経験はいつかどこかで役に立つから。
「それってどういうこと?」
アルトスさんの攻撃を受け止めたりかわしたりしながら、私はアルトスさんにそう問うた。
最初はアルトスさんの動きが全く分からなかったから攻撃に耐えることしかできなかったけど、今はアルトスさんの動きについていける。
もっとも、力を発動していなきゃできないけど。
「そのままの意味だ。勇者には過去の経験や知識が蓄積されていく、君が力そのものと一つになれれば、
君はほぼ無敵のようになるということだ」
最後にアルトスさんが繰り出した強力な攻撃を身構えて耐えた。
アルトスさんが言った意味があまり分からないけど、身勝○の極意みたいなことを言っているのは理解できた。
「いくよ」
アルトスさんの髪と眼が緑色に染まって、翡翠のオーラがバリバリはじけた。
アルトスさんは勇者を使ったようだけど、剣の神器は持っていない。
神器は器として担い手の中に入ると聞きはしたけど、神器を手に持たなくても勇者を身にまとうことができるみたい。
は、はやっ――
「くっ!?」
一瞬で姿が消えて、強力なパンチをもろにくらった。それからアルトスさんの連続で繰り出すパンチを少しの間受け続けたけど、何とか体勢を立て直して反撃の拳を放った。
アルトスさんと私の拳が激しくぶつかり合ってバチバチしてる。
何かが私の中に流れこんで来るのを感じる。
(……今のは?)
最初に見えたのは黒く渦んだ光景だった。墨のように真っ黒い海のようなものが辺り一帯に荒れていた。
そこに虹色の光によってまばゆい白い光が全てを包み込んだところで終わった。
「今のは何?」
「私とアナの力が共鳴したことによって見えた記憶だ」
気を取り直して鍛錬を再開しようとしたけど、ルガリアに止められた為、移動を再開した。




