第11話 運命の導き
「エレンと言ったな? 貴殿の名を聞いた時、マスミ先生を思い出した」
「父さんを知っているのか!」
エレンさんが大声でカラドルクに尋ねた。
そういえば、エレンさんのお父さんがどうな人だったか聞いてなかったけ。
「父さん……そうか、マスミ先生にも息子ができたのか。
エレンといったな?君の父はかつて、ゴレス神聖帝国で名が知れ渡るほどの有名で優秀で聡明な医者だった。
指で数えられる程度だが、君の父にはよくお世話になっていたよ」
ゴレス神聖帝国はルガリア大陸にある大国。
この世界でもっとも文明が発展した国で、魔導機という魔力を動力源として動く機械を中心としている。
ルガリア教団はゴレス神聖帝国を拠点に活動している。
ルガリア大陸はかつて魔族の支配が長く続いた地域の為、魔族へ対する憎悪と嫌悪がこの世界でもっとも深いみたい。
ギラ竜王によれば、何者かがそこを付け入って利用しているらしい。
「君の父はあるとき行方不明となった以来、一度も会えていない」
「何故行方不明になった」
「分からない尽力を尽くして君の父を隈なく探したが、私には見つけ出すことができなかった」
『行方不明』。その言葉を聞いてどうにも嫌な予感がした。
大体この手のやつは物騒なものだから。
「最後に、貴殿らと戦えてよかった」
そう言い残して、カラドルグは塵となって消滅した。
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「初めまして、異邦より来た勇者」
赤と銀の混色眼に黒い髪をした美女が私たちの目の前に現れた。
「私はアルトス。剣の神器の所有者にして父さ、神々によって生み出された究極生命体」
白銀に輝く刃に翡翠の柄をした剣を左手に出現させた。
あれが、剣の神器。
アルトスさんは自分が究極生命体である理由を話し始めた。
太陽神の強力な生命力。天神の秘めたる力。海神の知恵。月光神の揺るぎなき精神。
それぞれをいい具合に調合し、地神によって造られた肉体。
遥か昔にこの世界を破滅にまで追いやった『厄災』という 、この世界はおろか、別の世界の総力をもってしても対抗できるかどうかも分からない緊急非常事態に対抗する為だけに、アルトスは生み出されたらしい。
世界に生きる者たちが新たな生命を生み出して世代交代を繰り返していくように、この世界の神々は我が子たちのやり方に沿ったらしい。
新たな世代は時として前世代を超えるため、神々は自分たちが生み出したいのちに希望を託したそうだ。
「父さん達はある賭けを結んだ。父さん達の代行者であるこの私と、シロウが選んだ君。
どちらかが優れている方に君が持っている力の所有権を決めるという賭けを」
「もしかして、私が持つ勇者の力に隠されている秘密のこと?」
「そう、君が持つその力こそが厄災に対抗できる唯一のもの。そしてその力は君と私だけにしか扱えない」
私かアルトスさんにしか扱うことができない。つまり私とアルトスさん専用の力ってことね。
どうして私かアルトスさんにしか扱えないのか気になるけど、それより...。
「シロウさんはどうなの?」
私の問いかけにアルトスさんは沈黙した。
この世界の神様たちがアルトスさんの“親”なら、その一人がシロウさんでもある。
だけどアルトスさんはシロウさんを「父さん」や「母さん」とも呼んでいない。これがどうしても気になって仕方がない。
「シロウが私の親の一人であることは同じだ。だけど私にとっての親は、ファルシオンとルガリアだけのこと」
「どういうことだ!」
「私にとっての父さん、ファルシオンとルガリアは私の中にいる。生まれて間もない頃からずっと、父さんは私についていてくれたから」
アルトスさんの中にファルシオンとルガリアがいると聞いて、私とエレンさんは度胸を抜かれた。
「初めまして、人よ。 オレはルガリア、『月光神』と崇め祀られている」
「私はファルシオン」
どこからともなくファルシオンとルガリアの声が聞こえた。
エレンさんは二人の気配を感知することができないみたいで、神様の気配は人には感知することができないらしい。
「お前と明野さんのどっちが優れているかの、具体的な目標とかあんのか?」
話を本題に戻して、エレンさんがそう言った。
これから競う以上、目標がなければ意味がない。
「なら、『先にルガリア教団を壊滅した方』というのはどうかな? どの道、私も君も、教団と戦うことだし」
「どういうこと?」
『それは私が説明しよう』
ルガリアが間に入った。
『奴らを陰から操っている者はとてつもなくおそろしいことをやろうと企んでいる。
それが何かは分からないが、はっきり分かっているのは、そいつはこの世界の敵だということだけだ』
何でも、ルガリア教団を裏から操っている人物と一回だけ接触したそうで、その者は金髪に青い目をした男性らしい。
水の大精霊ミラネを倒して杖の神器を奪い取ったそうだ。
『神器は神器自身が認めた持ち主にしか使うことはできない。
奴がが杖の神器を使って何をしでかそうとしているかは分からないが、教団たちは杖の神器をそう悪用することはできない』
ファルシオンがそう説明した。「神器の奪還」という目的が一致している以上、私たちがルガリア教団と戦う理由ができた。それに神器は厄災に対抗するためのもの、一つでも欠けていれば来たる厄災に対抗できない。
「一緒に行こう、アルトスさん」
アルトスさんを誘って一緒に同行することとなった。
太陽神ファルシオン=黄金に輝く姿をした不死鳥。
“聖炎”を身にまとうことで不死鳥となってそのまま特攻したり、「太◯拳!」みたいに強力な光(放射線)攻撃をしたりします。
『豊穣神』として崇められています。
月光神ルガリア=白銀に輝く姿に白い翼をしたグリフォン。
空を飛ぶ姿は『聖なる翼(天使の翼)をしたドラゴン』と見間違えてしまうといい伝えられていて、光と氷結を司る守り神として祀られています。




