第10話 ルガリア教団
二体いた内の一体はジャンルさんに任せて、私とエレンさんは剣を持った方の幹部と戦うこととなった。
ジャンルさんが言っていたことが本当なら、この人は人間だったってことになる。
ルガリア教団のことは一応知っていたけど、その幹部が自分たちが憎悪する魔族のような異形の姿になっているとは。
「貴様らは人間だから忠告しておく。今すぐこの場からおとなしく去るのなら、貴様らがさっきやったことは不問にするとだけは約束しよう」
「悪いけど、ここを去ることはできない!」
相手をまっすぐに見つめ、両腕をグッと握りしめて答えた。
エレンさんは私の後ろで「オレも同じだ」とだけ言って答えた。
「そうか、では仕方ない。 我らの邪魔をする以上、貴様らは我らとこの世界の裏切者だ。私の剣で葬ってやろう」
「その前に、一つ聞かせて」
「なんだ?」
「どうしてこんなことをしたの! エルフは魔族じゃないじゃない!」
「自然人とて魔族の一種であることに変わりはない。だからこそ、裁きを下したまでだ」
エルフを魔族扱いすることに私は驚きを隠せなかった。
エルフは妖精だ。対をなすダークエルフを魔族扱いするなら分からなくもないけど。
「ルガリア教団が幹部、正剣のカラドルグ。いざ尋常に参る!」
「ぐはっ!?」
敵の斬撃をかわし、剣を持った右腕を狙って強力な一撃を撃とうとした途端、敵のすばやい動きに阻まれて蹴り飛ばされた。
デカい図体をしているのに素早い。さっき繰り出した斬撃も何とかかわせたことが奇跡に思える。
例え斬撃にに当たってしまっても、勇者でいる間は全身に流れる力が盾となって防いでくれる。だけど斬撃の威力が強力であればあるほど、それ相応の魔力を消耗してしまう。
だから私がとるべき行動はただ一つ、敵の斬撃をできるだけかわしきって勝利するしかない。
「ブリュブォドス!」
エレンさんが超級氷魔法を放った。暑い火の森の勢いを跳ね除けて、カラドルグの全身は満遍なく凍った。
僅かだけど吹き出た冷気のおかげで少しだけ生き返った。
「……だろうな」
自力で氷をかちわって出てきた。カラドルグは視線をエレンさんに向け、ものすごい勢いで迫った。
「はあっ!」
「ふんっ!」
何とか間一髪間に合い、私の拳と敵の斬撃がぶつかったことで衝撃波が発生した。
剣の刃先が私の拳に当たったときはビビらずにいれない。
勇者によって守られてるとはいえ、自分の手が斬られるという恐怖があるから。
「甘い!」
隙をカラボルグは見逃しはせず、もう片方の腕で私を殴って吹き飛ばした。
「ブリュブォドス!」
「ふん!」
カラボルグは剣に燃え盛る火炎をまとい、エレンさんが放った氷魔法を斬り払った。
「二人がかりとはいえ、魔王を超える力と肉体を手に入れたオレと互角に渡っているのは見事だ。貴殿らが魔族に与してさえいなければ、喜んで勧誘したいほどに惜しい」
魔王を超えた力と肉体、か。
どんな手を使ってあんなに強力なものになったかは分からないけど、某ゲームシリーズ好きの私としては、その中に出てくるあるものが浮かびあげた。
「そこの男はなかなかに強力な魔法を操るようだが、特に。 貴殿は不思議な力を操るのだな」
「そりゃどうも」
「貴殿らの名前が知りたくなった。よかったら教えてほしい」
「明野佳奈」
「エレン・ムンド」
「明野佳奈にエレン・ムンド、覚えた。
我はランスブレッドの弟子カラドルグ・ロマイ! ここからは全身全霊で貴殿らにお相手いたす!」
ここからは本気――いや、全力で相手をするぞという忠告か。
カラドルグの覇気がさっきまでのものとは全然違う。
カラドルグは本気で私たちを相手にしていたけど、本調子じゃなかった。
魔王を凌駕する強力な肉体にだいぶ慣れたんだ。だからこそ、カラドルグは思う存分に全力で戦うことが可能になったということ。
「いくぞ」
カラドルグの素早い攻撃に間一髪防ぐことができた。
迅速すぎる速さに即座に防げたことが奇跡と思えるほかない。
今のカラドルグの攻撃を受けてハッキリと実感した。カラドルグの攻撃を受けてしまったら確実にヤバい。
怒涛のごとく強力な一撃を繰り出してくるカラドルグの猛攻を何とか次々と防いでいく。
カラドルグの攻撃を防ぐだけで精一杯。
「ああああああああああ!」
私の右腕が斬られて、はげしい激痛が私を襲う。
激痛に襲われながらも私は左手を右肩に宛てて、何とか平常心を保ちながらカラドルグをまっすぐ見つめた。
「激痛に耐えながら冷静を保ち強気でいるその勇姿、見事だった」
カラドルグの剣が私に振り下りる。
「なっ!?」
ありえもしないことにカラドルグもエレンさんも度肝を抜かれた。
カラドルグの剣が私を斬ろうとした瞬間、私の右腕が新たに生えて迎えて迎撃した。
カラドルグの剣は粉々に砕けた。
「ベルブェディニング!」
できた隙をエレンさんは見逃しはせず、強力な魔法をカラドルグに向けて放った。
禍々しい紫色の炎がカラドルグの全身に燃え付いて、カラドルグを焼き尽くす。
「エレンさん!」
大きくを息を吸い込んで、エレンさんに大声で伝えた。
「エレンさんが残ってる魔力を全て使って最高の魔法を放って! それも一番強力なやつ!」
カラドルグは不死身かそれに近い再生力を秘めた肉体をしているから、倒す為には再生しきれないまでのダメージを与えるか、カラドルグの身体を全て破壊するしかない。
チャンスは今しかない。
カラドルグが禍々しい炎に苦しんでいる今なら、私たちの反撃を防ぎきれないはずだ。
「火炎氷寒交烈魔法!」
「はああああああああ!!!!!」
私に残った全ての魔力を両手に集結させてカラドルグにぶつけた。全身から溢れ出るものすごい力がカラドルグへ激突していく。
火炎と氷結が一つに重なり、カラドルグに直撃した。
前方と後方から強力な一撃をぶつけたんだ。




