第9話 森の異変
森の奥で煙が上がっていた。
山火事だ。
煙を見てイヤな予感がした私たちは急いで森の奥へ向かった。
火事が起きているってことは、風の大精霊の身に何かあったということ。火事が起これば雨でも降らせて消火するだろうけど、そうなっていない。
「来て! ジャンルさん!」
私が強く懇願すると、ジャンルさんが瞬時に私たちの目の前に現れた。
煙を見ただけで状況を把握したジャンルさんはすぐに現場へ向かってくれた。
○空術で空を飛んで向かったの。それはもう凄まじい速さで。
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「ここまでやるとはね」
テラフィスの森を壊したのはルガリア教団だ。現在ボクはその幹部二人と戦っている。
ルガリア教団は、魔物と魔族の根絶を目指す奴らたちの集まりだ。人間以外の種族を“魔族″と思い込み、魔物と魔族に少しでも肩入れした人間は誰であれ裏切者として排除する。
教団がいくら攻めてこようが、ボクやテラフィスの敵じゃない。例え幹部やその上の存在である『シリウス』が揃いも揃って攻めて来たとしても。
今回攻めて来たのは幹部二人。異形の姿となっていて、力と身体能力、再生力が凄く強力だ。
何でもこいつらが言うに『対魔王用の新兵器』だそうで、あの方から授けられたものを使っただけらしい。
これほど強力なものに化していればテラフィスが負けてしまったことに納得がいく。
だがこいつらは“今”、忌み嫌う魔物のような姿となっている。鏡で“今の自分″を見たらどんな反応をするのかな。
力と強力な肉体を得ただけで慢心している方は、現実逃避か開き直ったフリでもするだろうが。
テラフィスはエルフたちを守っている。手負いとはいえ、したっぱ相手に苦戦することはないから、魔物や教団たちから守り抜くだろう。
「我々と同じ皮をかぶっただけの害魔モドキが、我々二人を相手によくやるじゃねえか!」
「その威勢がどこまで通用するか試す」
小物な奴は相変わらずとして、剣を持ったもう一人は中々の奴だ。
ボクやギラに及ばないにせよ、相手を馬鹿にせず油断を見せないようにしているその姿勢はまず評価する。
少なくとも、相方より強いのは間違いない。
さて、アイツらが逃げるまでの時間稼ぎは充分に果たしたし、そろそろ仕上げに入るとしよう。
力を抑えた今のボクじゃ二人を倒すことができん。
出力を解放して戦えば二人は敵ではないが、あまりに強力すぎてこの森を破壊しかねないから、エルフやテラフィス達に迷惑をかけかねないからね。
出力を抑えた状態の感覚には充分に慣れた。慣れたからこそ、つい“今の状態″に流されすぎて、出力を開放したときに何かしらのへまをしてしまう。
しなくなってしまった事は“しなくなった時″からやらなくなってしまうもんだからね。
いい機会だしリハビリも兼ねて、久しぶりに本気となって相手をするとしよう。
「遅くなってごめん! ジャンルさん」
「別に待っていないんだけどね」
アナが横から全力でパンチをかわしたままやってきた。




