第7話 約束
「約束通り、勇者と厄災について、知っていることを全て話すとしよう」
ギラ竜王によって完全に回復した後、改めてギラ竜王に情報を開示してもらった。
ギラ竜王の右手から放たれた翡翠の光が私を包み込んで、私を完全に回復した。
「今から2年前、一人の男が俺の所にやって来た」
黒い髪に赤と銀の混色眼をした人で、一見女と間違えてしまうほどの美男子らしい。
その人の名前はアルトスといって、人の姿をした究極生命体らしい。
ギラ竜王とジャンルさんは一目見ただけでアルトスさんの正体を見破ったそうだけど。アルトスが自らそう名乗ったらしい。
“究極生命体″と名乗っただけあって、アルトスさんから溢れ出る闘気と魔力は凄まじかったそうで。一戦交えたジャンルさん曰く、ジャンルさんとギラ竜王と等しく強かったそうで、近いうちに二人を完全に越えてしまうらしい。
たたかっていく内に相手のことを徐々に把握していくジャンルさんの言う事に間違いはなない。
私がどのような人間で、どんな世界にいたのか。私の好きなこと嫌いなこと。私の得意なこと苦手なこと。私が持つ勇者の力についてほぼ理解している。
さきほど私と軽く闘っただけで。
アルトスさんはジャンルさんと同じく永遠に近い時間を生き、精神はともかく、肉体と精神の力量は超悪魔並みであるらしい。
だけどその反面、精神の在り方は人間の子供とさほど変わりないと言った。
分かりやすく言うと。感情が貧しくて獣に少し近く、人間味がちょっとしか感じられないそうだ。
親である神様たちからそうなるように生み出されたそうで。
私とエレンさんの主な目的である『厄災の完全破壊』と同じで、その目的に支障が出ないようにそう作られたらしい。
この世界のおとぎ話に出てくる天使こと聖族とほぼ同じだとも言っていた。
さらに言うと、アルトスは翡翠色の剣。剣の神器を持っているらしい。
探す手間が一つ省けた。
打倒厄災を目的としている以上、厄災の対抗手段である神器を手に入れない訳にはいかない。
更に大スクープなことに、アルトスは今、ドラゴニス大陸へ向かっているそうだ。
「お前たちの言う『厄災』についてだが、あまり分かっていない」
厄災に関する痕跡と手がかりが全然残っていないから、情報を得るだけで一苦労らしい。
過去の出来事を調べるからには地脈を調べる方が手っ取り早い。地脈は地上の出来事が地脈に染み付く。
ジャンルさんとギラ竜王は二人して全ての地脈地点を調べ尽くしたのに、厄災に関する記憶が一つもなかったらしい。
「厄災らしき手がかりはこれだけだった」
ギラ竜王は私たちの前に少し大きな壁画を出した。
中心に描かれた大きな大樹に、大樹の中に逆さまにされた一人の人間。
四人の人々が大樹の左右に二人がずつ、大樹を見るように立っていて、大樹の下には渦巻きが描かれていた。
『世界に魔が溢れし時、異邦の世より白き流星が舞い降りる。 白き星が魔を討ち滅ぼしたのち、赤き星子が誕生する。
白き星は黒く染まり。虹の星は消え失せる。そして世界もまた崩れ落ちる』
壁画に刻まれた古代語にはそう書かれていた。
「まさか君が古代語を読めたとはね」
古代文字が見えた瞬間、スラスラ読んだ。
自分の手足を自然と動かすように、古代文字をはっきり分かっていたし、初めて見た気がしなかった。
この世界の古代文字を目にしたのは初めてなのに。
「お前はこの世界の言語を全然習得していないのに、この世界の言語をスラスラ読んでいたな」
ギラ竜王は私がこの世界に来た時から観察してきたから、私が今までやってきたことを把握している。ドラゴニス大陸がギラ竜王の庭である以上、庭で起こっている事全てを把握している。
「大方、君が持つその力の仕掛けの一部だとボクは思うね。
君はボクとの戦いの中で成長を遂げたとはいえ、君は素人の動きをあまりしなかった」
「どういうこと?」
「これはボクの推測だけど、君が持つ“勇者″の力は神器とほぼ同じなんだ。 特性と能力は違うにしても、その性質だけは統一している。
分かりやすく言うと、神器こと勇者の力ってのは移動する地脈地点だ。地脈に地上の出来事が染み付くように、神器こと勇者もまた、地脈や担い手として選んだ者の経験や知識が染み付くんじゃないかとボクは思っている。
君の場合は力である勇者に、その他は神器に。
同じ勇者であるアルトス。そして君と交えたことでてようやく確信したよ」
つまり、OF○や九つの○人と同じ類のものということか。
「確かにそれだと辻褄が合うが。明野さんが現在の言語を読めているのは、シロウという神が明野さんが持つ力に何かしらの細工を施したってことか」
エレンさんが言うことはもっともだ。この世界の言語を全て把握するとなればかなり時間がかかる。私の場合、数年か数十年。




