第28話-2 いたよー!
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている状態。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。竜に食われて中で目玉として再生していた。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。感覚は鋭いが臆病。芯は強く、常識人で堅いくらいのまじめなひと。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効の(はずの)万能繭。
リム(り :ぬえ
どちらかというと変異種で、いわば歩く「ぬえの擬人化キャラ」(笑)
明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。しっぽの蛇と仲がよく、本人は雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。羅列すると万能の最高戦力のひとりだねー。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。
異能は収束。摩擦係数自由自在という能力をまとっているので防御も完璧。空も飛ぶよー
▼かぶりつき 敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
竜に食われたものの形を残しているものもあれば、岩壁から巨人状の岩石タイプ、塗り壁もどきやトビウオ、エイのような姿で飛んでくる飛行タイプなどがあり、系統・分類はめんどーなのでしていない。
お化粧に赤い実を肌に使って、どうやら酔ったらしい索敵担当のメイが「敵よ」の代わりに「かぶりつき」と連呼したとからこう呼ぶようになった。もともとはルルアがさりげなく使ったあやしげな一言が気になって頭から離れなくなっただけだったようだが、こーゆーのを見逃すメンツではない。
▼渓流のエリア
何もないままずっと登っている。そろそろ2時間…はまだたたないか…
ちょくちょく足元の石がすべったり、わりと歩きにくいので途中から、渓流に突きだしてるでかい岩をメインに、みなぴょんぴょんと跳び始めた。確かにその方が早い。この探索パターンは、今後の試金石になるかもしれない。
しきんせきってー?(え
おじさんとかおばさんとか(め
それは親戚(れ
試金石 判断材料ってコトよね。平たくいえば。(き
分厚くいうと?(み
分厚くする意味ないわよ(れ
ねー、今までのパターンで行くと、何かある時って静かだよねー(え
そーね。最初から襲ってくる時って、何もないことが多いかも(れ
このあいだのケースは珍しい(み
あ、あたしの時ー? そーなんだ(き
私の時は、天井が落ちてきたのよね(め
あの時はもー最初から逃げの体制万全だったねー(え
「あれ、何?」(れ
レンダの声がした。下ってくる流れの右側、川の上に大きく張り出した巨石に、Vの字のようなシルエットが見える。
ひょいひょいひょいっと、皆がその岩の上に集まった。
「脚だね」(え
「脚ね」(れ
「いや、このパターン、もーいーから。しかしこりゃまた…」(き
考える脚(る
それ1票(な
ありがとうございます(る
なんのこと?(れ
ナシの倉庫に「考える葦」という言葉があった。人間はだだの葦だが考える葦だとゆーおたく文明の言葉。考えることが偉いみたいな物の言い様、葦に思考力がないと決めつける無神経な鈍感が、ナシは気に入らないらしい。考える脚、ばかばかしさが小気味いいのだろう(み
ここで脚が他のポーズを取って見せたら面白いんだが、さすがにそれはないか(な
してるじゃん(き
なに?(な
なんちゃってー(き
エリラ、あっちの教養レベルの知識とおたく文化の知、わけらんね?(な
無理だよー。キミが中でごっちゃにしてるんだもん(え
被害者は真っ逆さまに、岩に突き刺さったような状態だ。脚のつけ根は、幸か不幸か岩に埋まっていてはっきりしない。ただ、紛れもなくそこは竜肉だ。しかしこのシルエット、湖の真ん中から男の下半身が突き出してるってのがあったが、うー...ありゃヤなイメージだった。それに比べるとこっちゃーはるかにのどかに見える(な
けっこー悲惨よ(れ
幸か不幸って何さ(え
素直にそのまんまだけど? 詳細にイメージ描写して欲しいか? 幸と不幸について(な
今度にしろ。目の前のヤツが先だ(み
わたし、近くに行ってま上から見てきます(る
やめなさい(め
レンダは何か言わないのー?(え
いかないのー?(は
つーん///(れ
レンダはもっと熟しているのが好みだ(み
わざわざ言わなくていいじゃない(れ
よかったわね、ルルア。熟してる脚線ですって(め
メイこそ、背中まで熟していたのですね(る
なんか違うが…(み
いや、背中の色気は世代によってさまざまだ。当然、漂う美の香りもまた..(な
いーかげんにしなさいよー(笑) いつまでほっとく気ー?(き
…かぶりつき…(め
あん(る
・・・・・・・・・・・・・・
「わかりやすいといえばわかりやすいけど…」(れ
こりゃー 掘るの ひと苦労だな。これで両手を横に上げてたりした日にゃ…(な
「しかも、ここで地震が起こる..」(る
「そゆこと。でも、なんとかするっきゃないね」(え
「岩ごと、もうちょっと平らなとこにでも運べないかしらねー」(き
「みのー、あたし達ふたりで…」(は
「この大きさなら、レンダとキラもいたほうがいい」(み
「でも、もししくじったら脚がもげるわ」(め
まず、左右の木や草を取り払って見通しをよくしよう。次 メイ、石から四方のカベや木に、糸で固定できるか? 作業できるスペースは空けたいが、何十本使ってもいい。ちと負担がでかいか(な
「糸なら、吸着できる分いいと思うわ」(め
中でカラダがどうなっているか全くわからない。これは…レンダのお目々でも無理だよな(な
「ごめんなさい。竜肉は、ナシくんと一緒でも中の探知はできないわ」(れ
ルルア、どのくらいの大きさまでだったら転移できる? たとえば、最大横こっからココまで、深さが…この脚の長さで、もし腕を真っ直ぐ伸ばしていたら…この脚の2倍くらい(な
「.....幅が、そう、両腕を前に出した幅くらいなら、可能だと思います」(る
問題は、やっぱり腕の状態だな。たぶん、俺は逆さになって掘る感じになると思う。ミノ、合図したら俺の脚持って引き上げてくれ(な
わかった。今逆さにするか?(み
今じゃねーよ(な
くすくすくす(れ(め(は
レンダ、ミノ、少しずつ、まわりを掘り始めてみてくれ とにかく、今回は龍肉のかたまりごと…ブロック状態で掘り出すことを考えよう。まず、付近の伐採から取りかかろう(な
川向こうはリムが雷を連発で落として荒っぽく伐採、こちら側はミノが指弾で吹き飛ばしながら、レンダが藪を叩き斬っていく。
ねえ、リムの氷で岩の下を補強して貰ったら?(め
冷やしたら竜肉がどう変化するかわからない。それは却下。ただ、糸の固定の補助はいいかも。メイとレンダ、そのへんの判断、まかせる。リム、いいか?(な
「おっまかせー!(り
えりら、あのあたりも風カッターで。あっちのあの辺は燃やしちまおう(な
おっけー(れ
まあ、これ、いくら水の上に突きだしていても竜肉だ。地震で折れることはないと思うが(な
そだね。ただ、普通のただの赤黒い岩って部分もそーとーあるから、油断は禁物だよ(え
メイ、敵…かぶりつきの反応は?(な
あん(る
まだなにもないわ。大丈夫。大丈夫じゃないのはルルアだけよ(笑)(め
かぶりつきかぶりつきかぶりつき(み
あん♡あん♡あん♡(る
面白い(み
みのーあそんでんじゃないわよーー!(え
しかし細い脚だ。リムと同じくらいか、もっと細いかもしれない。こりゃきっと、かなりきゃしゃだな
うん。けっこー子ども体型だと思う(え
メイ、少し俺、使うか?(な
あら、助かるかも。粘着可能のギリギリ太いヤツ、やってみるわね(め
ああ、頼む(な
メイ、その位置に糸張ると作業の邪魔。もう少し後ろに(れ
その位置オッケー! じゃんじゃんいっちゃってー(き
保険としたら十分すぎるくらいかな?(な
そのくらいがいいと思うわ。岸壁ごと倒れてこないといいんだけど(れ
ありがとメイ、レンダ、キラ! じゃーそろそろやる?(え
ほんじゃ、やりますか(な
やりましょう(れ
やってください(め
やれ(み
やろー!!(ハチ、リム
どーしてもやるのね、コレ(き
とにかく、アングルがアングルだ。いきなり局部丸出しになっても、作業に支障が出る(な
すけべ(み
エッチ(め
うるせーなー ともかく、腕を広げたポーズでないことを確認したい(な
側面部から掘り始める。ざくっという手応えと同時に、血が噴き出してくる。相変わらず元気だ。
なんにせよ垂直に掘っていくのは初めてだ。俺の堀った部分を目安に、2まわりくらい外側をまずミノがザクザクと掘り始めている。
だめだ。こっち側も掘らないと。スコップくれ(な
ナシがスコップ使うの?(え
広い面積を一気に行くのは、こっちの方が早い。反対側、ハチ、頼む。レンダ、様子のチェック頼む(な
はーい♡(は
了解よ(れ
たぶん、頭の位置くらいまで掘れたか。そこから、胴体のまわりにかかる。ありがたい。腕は胸の前で交差しているっぽい。ハチの方もほどよく掘れていたので、同様に側面から腕を確認する。そこからお尻のほうを掘っていく段階で、違和感があった。尻尾だ。お尻側、もしミノに通常の間隔のイメージでざくざくやって貰っていたら、傷つけていたかもしれない。
そろそろ揺れがくるんじゃない?(れ
えりら、死のオーラ(な
うん(え
ずずん っとまずタテに揺れ、横揺れが始まった。けっこうでかい
メイ、糸の様子は?(な
大丈夫。岩盤の方ももってる(め
程なく揺れがおさまった。
よし、みの、ハチ、この線からこっち、一気に掘ってくれ(な
カラダの前とヨコ方向の、残す部分がわかるように境界線を掘る。俺はお尻側にまわった。少し余裕を持って掘り始める。
尻尾の一部が現れてきた。意外と太い。尻尾に沿うように竜肉を掘っていく。
レンダ、このへんとこの辺、深く掘ってくれ(な
レンダもハチ同様馬力がある。俺より格段に早い。腰ぐらいの深さになったところから、側面、尻尾にそって掘る。ちょうど尻尾はS字状になってる感じか。前面側も指示通り掘ってくれていたのと、死のオーラのおかげでわりと楽に体のまわりの除肉作業がはかどる。体の前面、交差している腕、頭部、頭....
そうだ! あたしのツルツルオーラを同調してみよっか?(き
ああ、斥力…じゃなくて、えっと…(な
摩擦抵抗ゼロ(み
ま、そー。死のオーラにかぶせてみたら、楽になるんじゃない?(き
ああ、やってみてくれ(な
じゃー、いくよ?(き
外に突き出ている脚に触れると、オーラを同調…というのか、被害所のカラダに沿って光をまとわせていくキラ。この表現は、あとからレンダに見えてたものを聞いた話だが。
そのとたん、まわりが掘ってあったとは言え、逆さまに直立していたカラダがぐらっと前の方に倒れてきた。尻尾が竜肉からつるんと抜け、お尻まわりや前を隠していた竜肉がはげ落ちる。支えている間にメイが慌ててシーツを抱えて駆け寄ってくる。
だめ、ツルツルしてシーツがすべっちゃう(め
脚も持てないぞ(み
あ、ごめーん! 解除!…というより、40%くらいだね(き
尻尾が上…うつぶせ気味の状態でハチが抱えて、ぴょんっとこっちに飛び出した。
ずしん
それとほとんど同時に、次の地震が訪れた。揺れる中、川から離れて伐採したあたりまで移動すると、ずどどどっとすごい音が上流から響いてきた。濁流が押し寄せてくるのが見えた。
みんな、集まって! メイ、繭を!(れ
同時にリムがすぐ俺の腕をつかんで、上流に向かって冷気を放つ。
メイも、反対側の腕をつかんだ。全員がいるあたりを糸が舞う。
濁流が氷漬けになるのとほとんど同時に、俺たちのまわりをまゆが覆った。
レンダ、尻尾があるヤツって、仰向けに寝かしていいのか?(な
あ、横向きの方がいいわ 少なくとも、腰から下は横にしてあげて(れ
シーツに来るんだ被害者を、ハチとミノがそっと寝かせる。
なんか大量のかぶりつき反応! 氷の中にも!(め
ヤリとも串ともつかないものが氷の中から突きだしてきた。そのほとんどが繭にはばまれるが、いくつかが繭を貫いてくる。
飛び込んできたヤツをレンダが瞬時に刀で切り落とす。直径1~2cmくらいでかい串先が落ちた
「繭を二重か三重に。コレはヤバイ」(み
被害者のそばにエリラ、メイ、ルルア、リムその外側をハチ、レンダ、ミノ、キラが囲む。
発掘品(み
今はいいから(え
ハチは黄色いオーラをまとって、身を守りながら四肢をふるっていた。折れた物体が音を立てて落ちる。
「こりゃうざいねー」(き
キラはカラダに当たった先から力を逃がすのか、ぶつかって止まった小ヤリを端から払いのけるようにして叩き折っていく。
ミノは戦闘スタイルの肌合いが悪い。避けては掴んで折っていく。それはそれですごいが。リムがすぐそばにいって援護する。氷のカベや槍先を凍りづけなど、カンがいいのに加えて発動速度も速いのはついみとれるくらいだ。
ありがとリム(み
「あぶない」(れ
レンダの声に瞬時にルルアが電磁バリヤをはった。エリラとメイの目の前で串の先端が止まる。
「ありがとルルア! あたしも!」(え
串先が燃え上がって消える。炎と風をまとって、めいとルルアの前に立つエリラ
ほどなく2重目、3重目の繭がおおい、ようやく静かになった。
「少しずつ、キケンになっていくわね」(れ
「よし、脱出しよう! みのー、悪いんだけどお願い」(え
「ミニマム。るるあ、頼む」(み
「おまかせです」(る
胸ポケットにエリラを入れながら四方を見渡すと、片腕をミノと腕組みし、片腕にバスケットをかける。
「みんないますね? では」(る
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藍のエリア、いつもの場所にもどってミニマムが解除される。
ほっとするのもつかのま、レンダとメイが叫んだ
「なにかくるわ」(れ
「かぶりつきよ。森の中、上空、池の跡地、あちこちから多数!」(め