第17話:7日目-3 ポシェットの中の怪物
登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。エリラの魔法でむちむち萌えもえ美少女キャラの体を得るが、所有権はほぼエリラ。
竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。竜に食われて中で目玉として再生していた。同じく目玉として再生したナシとともに、1つの体を作る。ホントの姿は謎。ナシのデザインしたグラマラスボディにピンクのロングヘアはまんざらでもなさそう。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる勝ち気、前向きでキュートな元気娘。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。ふわっとしたなごみのオーラを持ち、明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛がステキ。わりと天然で、なにより素直でまっすぐ。格闘技に長け、異能は力持ち。見るものを幸せな気分にする「最高の笑顔」の持ち主
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。キューとなメガネっコ美少女で、スタイルもいい。おっぱいが自慢。偏屈気味で寡黙気味、わりと毒舌。なりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。戦闘力はめっちゃ高い。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。見せたがり気質。
美人で、自称学者。いろいろ自分の体を改造している。どっかポンコツ。異能は不死(笑)
● おやつタイム。そして...
なんか、食べてばっかりだな(な
「いーじゃん おやつタイムは乙女の常識、至福のお時間だよ」(え
「ね~~~~」(女子一同
「まー、ここじゃおやつっていっても果物くらいだけど…痛!」(え
話ながら、いつもの調子でポシェットに手をつっこんだエリラが叫んだ
どうした?(な
「どーしたのー?」(は
「…なんかに噛まれた…」(え
「え~~?」(は
手の甲に、何かにつつかれたような内出血に、ところどころ血がにじんでいる
「うそー…竜の鱗のコーティングされてるんだよ」(え
「逆。竜の血を浴びてなかったら、手首から先、もってかれてた」(み
「え」(え
(ぞお~~ っという、恐怖感が伝わってきた しゃれにならない
「竜の血…アレね?」(れ
「うん」(は
昨日、ここに来る途中そんな話はすでにレンダにもしていたらしい
中味の残量は?(な
「変わりないよ って…あれ? 少し増えてる?」(え
昨日、なんか変なこと言ってなかったか?(な
<あれ、へっちゃった? あ、戻った。気のせいみたい>
「どーいうこと?」(は
「なんか湧いた」(み
「ええ~~~?」(は+え
「あたしも同意見だわ。もし、残量の増減が事実だとしたら…中のものを食べた先から増殖している…っていうのが妥当だわ」(れ
「え~~? なにがいるの?」(え
「それはわからないわ」(れ
「でも、中の状態に変化がないって言うのは……時間が止まってるからとかって」(え
「それは仮説。それに、時間の停止とかに対して耐性があるとか…」(れ
「そんなやつっているの?」(え
「いずれにしても、放っておけない」(み
「も、もー食い尽くされちゃってるかもしれないしー、ほっとけば中で共食い…もなんかやだなー」(え
「やだよねー」(は
「やだ」(み
「あたしは、ここはポシェットごと廃棄か、焼き尽くすとか、埋めちゃうのを提案するわ。竜の血を浴びた体に、ちょっとでも傷をつけるような魔物…危険すぎる」(れ
「あーあ。せっかくのおやつタイムなのに。…ハチとミノの方は異常ない~?」(え
「ええ…いまのところは」(は
「あたしも 無事」(み
ゴキブリとか、ネズミとかが湧いたら、一気に毒ガスとかっていうのがあるが…(な
…ポイズン持ってる人ー(え
しーん
「仮に持ってても、中味は食材でしょ。だめよ」(れ
「そっかー。まず、ハチとミノの異常ない方の中味を確認しよー」(え
「そーだね」(は
お店を広げて、みんなで吟味する。
あ、これおいしそー(え
こら、つまみぐいしない(れ
これいただきまーす(は
ハチ だめよ
いつのまにかレンダが仕切っている(笑)
おいしい(み
こらミノ! いったそばから
まー基本がフリーの傭兵部隊みたいなものだし、勝手気ままであってこそ、という気がする。
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紛れ込んだ魔物
「さて、となると最後…これね」(れ
「とりあえず、ハチとミノの分でもまだ数日は大丈夫だしー…でも、そろそろ胃に食料調達しにいくメンバーを考えてもいーよねー」(え
なにげに話を引き延ばそうとしてないか?(な
「悪あがき」(み
「気持ちはわかるけどー」(は
「だってー、あたしのだけ変だって、なんかふこーへーだよー」(え
「ごめんねー、あたしがとってきた中に…」(は
「あ、そーじゃなくて、うー、ハチは悪くないよー…」(え
「ねえ、創造に対して、消滅の魔法とか消去の魔法ってないの?」(れ
「作ったものに対してならあるよ?」(え
「これを消したら?」(れ
「袋だけ消えて、中味が飛び散る」(み
「せーかーい」(え
「わー、なんかそれ…こわいきがするー」(は
「で、レンダねーさんは何を感じる?」(な
「だれがねーさん?」(れ
「あ、なんとなく…」(な
「おねーちゃーん、中何が入ってるのー? わかったらおしえてー」(え
「やめなさい!」(れ
「おねーちゃん…なんかいーかもー」(は
「アネキ、よろしく」(み
「あんたたちー!」(れ
ナシ、あんたのせいよ!(れ
ごめん つい(な
「うーん…うじゃうじゃいたりして」(な
「げ、マジ?」(え
「やっぱり、これ、これごとどっか埋めましょ! そうだ、さっきのフロアに持っていって、赤いカベの奥深くに…」(れ
「それもいっかー…てゆーか…うーん、それがいー気もするけどー。もともと竜が食べたものだしさ」(え
「でも…なんかやっぱり無責任ってゆーか…違う気がする」(は
「あたしも。触れないのが正論なのはわかる。でも、これはあたし達の落ち度」(み
「…そーいわれると…たしかに、無責任だよねー」(え
「ごめんなさい… そのとおりね でも…」(れ
「よっしゃわかった! 開けよう! で、なかのヤツがなんかわかんないけどやっつけちゃおう! だいたい、あたし達の食べ物を横取りしちゃうなんてゆるせない!」(え
いやー、それは竜のセリフだから(な
あはは(は
盗っ人猛々しいというのはこれね(み
「はあ。わかったわ。じゃあ、とにかく中を見ましょう。たぶん、そーとーの魔物だと思うから、それなりに覚悟を決めた方がいいわ」(れ
「だーかーらー、おねーちゃんは気負いすぎー! もっと気楽にいこー」(え
「賛成」(み
「そーだねー。このメンバーなら、たぶんなんとかなるよー」(は
脳天気なのも、俺たちの強みかもな。ま、いざとなったら逃げよう。穴に入って、入り口を炎のカベとか、岩のカベ出しちゃうとか、エリラ、どーにでもいけるだろ?(な
「まねー なんてったって、増幅があるから」(え
「そっか…。逃げるって選択肢、忘れてたわ…」(れ
「アネキ単細胞」(み
「おだまりなさい!^^ わかったわ。じゃあ、あたしも全力でいくわ」(れ
「そっか、もしかしたらレンダさんの全力が見れるかもしれないんだ」(は
「…なんでいきなり敬語?」(え
「あ、おねーちゃんって思ったらつい…」(は
「よっしゃ、じゃあ10m…15mくらい離れて このへんでいいかな?」(え
「向こうのカベまでもってっていいんじゃない?」(れ
「そだね」(え
向かい側の壁ぎわにポーチを置いて、エリラは戻ってきた
「いくよー 形状固定解除 消滅!」(え
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるで、画面が切り替わったように、向かいの壁ぎわまわりに大量の小さいトリみたいな奴らが現れた。
ぴよぴよぴよぴよ
声は、ひよこのようだ。しかし姿は、体高30〜40cmくらいか。フクロウに似ている。体に不釣り合いながっしりした2本の脚と、ツメのある足。ただ、頭部のくちばしと目のサイズが、フクロウの2倍以上はある。見るからにヤバそうな姿だ
「うわーすっごいいるねー」(え
「でもかわいー 声も可愛いよ?」(は
「すごい数だな。あれが中で増えたのか」(み
「……」(れ
レンダ?(な
「ピヨピヨピヨピヨ」
こちらに気づくと、そいつらは一斉にこちらに向かってきた。黒い帯が、まるでビー玉かビーズをひっくり返したように、どーーーーーーーっと向かってくる。すごいスピードだ。あっという間に10mくらいまでせまってきたところで、走ってきている奴らの半数近くが一斉に飛び立ち、残りはそのまま突進してきた
エリラ、岩窟ガード(な
「おっけー」(え
岩場の特性を利用して、岩でつくる厚さ30cmくらいのカマクラだ。
外側にぶつかる音がどんどんと響き、粉が落ちてくる。どちらかというと、どだだだだだだと、外で道路工事をやっているような音だ。遠からず突き破ってきても不思議じゃないかもしれない。
岩の性質って、もっと硬くできるか?(な
わかんない やってみる(え
「シャレにならないわね。えりにえってあれ?」(れ
「しってんのー?」(え
「あれは、ホラヘリ」(れ
「はらへり?」(え
「ホラヘリよ! 何年か、十何年に一度大量発生する災害級魔物よ。普通は他の魔物や動物を襲ってくらうだけだけど、集団になると動物や魔物は当然、植物も家屋も、人間も、進む先にあるものは全てくらい尽くす…。これが大量発生した時は、敵対している国同士でも共闘して軍隊を派遣するのはもちろん、冒険者、異種族ですら討伐に加わって、それでようやく駆除できるって言われてるわ。聞いたことない?」(れ
「あれかー....。でもたしか、…十数年前に絶滅させたって聞いたけど?」(え
「あたしもなんとなくだけど」(は
「うん」(み
「情報操作よ。現実に、絶滅は無理。それに、群れない限り普通の魔物と変わらない。ただ、混乱と恐怖が大きかった分、人心を安心させるためにそー言うふうに発表しただけよ。現に、大陸によっては特別指定絶対駆除魔物に指定しているところもあるわ」(れ
俺の世界でも、何年かに一度数億匹クラスで大量発生して作物・植物を食らいつくすバッタがでるってことがあるが…。さすが魔物、しゃれになんねー(な
「なーにが『しゃれになんねー』よおこのクソバカオタクー! どーする? やっつける?」(え
ぼこっと音がして、30cmもある岩を突き破って顔を出してくるヤツがいる。レンダが顔色も変えず、その頭部をはねた。
「栓した方がいいわ」(れ
「なるほど」(え
「ねーねー、このままこっちは籠城してさー、あいつら放置してたらそのうち、竜の内側から竜を食べちゃうんじゃないかなー?」(え
「そうね」(れ
「それいい考えかも……だめ。よくないね。竜を食べちゃうようなものを、解き放っちゃったら」(え
「世界が滅ぶかも」(み
「おーげさだよー。…でも そーだね。ぜったい被害がでるね」(は
駆除する一手だな(な
「あなたたち、あんな数をどうやって…!」(れ
エリラ。大爆発みたいな魔法ない?(な
「ないよ~」(え
じゃあ、ここでオタク文明の英知を授けよう(な
「みんなー、バカが見れるよー 集まってー」(え
なになに~?(は
ほー(み
何なの?(れ
こーゆー局面で有効なのは、土遁の術と、微塵隠れだ
ビジョンを見せる 地中に避難の略図、上蓋部分の強度、爆発の規模と方向を決めるイメージなど
ふーむ、本来はひとり用か~(え
この人数だと…いわゆるシェルターね(れ
空気が心配(み
だいなまいととかぷらすてぃっくばくだんとか…知らないものばっかり…(は
ともかく、地面が普通の岩っぽいのが幸いだな 土系魔法でなんとかなるか?(な
ぞーふくがあるからねー 深さ170cmくらいだよね なるべくみんな集まって(え
がくん、がくんと30cmくらい一気に足元の岩が消え、穴の回りに消えた分が現れる。上の方ではひっきりなしに奴らがぶつかる音がしている。何カ所か突き破って顔がとびだしてくるのを、ミノが指弾で打ち抜いていく。
立っていた部分より60cmくらい沈んだところで、回りに積んだ岩が集まりはじめる。
天井作るよー。空気が心配だから、作ったらすぐ上、爆破するからね~(え
するべきビジョンがはっきりしているので作業は早い。ただ、さすがに消耗がきつい。
爆弾のイメージって なんとかなるか?(な
炎を思いっきり風魔法で圧縮、一気に解き放つ感じかな。それも、真下のこの部分以外の方向に向かって、だよね(え
とりあえず、岩窟を吹き飛ばすくらいのイメージでいいと思う。そのあとは各自暴れて貰うのでいーと思うけど..気をつけてくれ(な
準備オッケー みんなーいーかな?(え
背中合わせに四方を向いて集まっている。ハチが、青いオーラをまとう。ミノは、見た目はさほど変わらないが少し身をかがめた
ふう。じゃあ、あたしも…(れ
レンダは髪の毛をまとめて長いポニーテールにして、ポシェットから4本の剣を出して、慣れた動作でそれぞれ、腰と背に装備する。目を伏せると、口もとに小さなキバが現れた。2本の剣を抜き、額の目が開く
気配が、ガラッと変わった
「うひょー まるで雰囲気が変わるねー かっこいー」(え
「こ、怖いくらい…。なんか空気がぴりぴりするよー」(は
「ケモノだな ..ケモノだったな」(み
「いいわよ エリラ」(れ
「じゃあいくよーーーーーーー! どっかーん!」(え