第12話-1 鬼ムス
登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。エリラの魔法でむちむち萌えもえ美少女キャラの体を得るが、所有権はほぼエリラ。
竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
普段は念話で語るが、表に出てくるときは金色の瞳になる。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。竜に食われて中で目玉として再生していた。同じく目玉として再生したナシとともに、1つの体を作る。ホントの姿は謎。ナシのデザインしたグラマラスボディにピンクのロングヘアはまんざらでもなさそう。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる勝ち気、前向きでキュートな元気娘。
異能は創造。メンバーの衣装を自在に無からつくってしまう魔法のお洋服やさん(笑)
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。ふわっとしたなごみのオーラを持ち、明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛がステキ。わりと天然で、なにより素直でまっすぐ。武道、格闘技に長け、異能は力持ち。パワーはゴジラ、スピードは新幹線なみっぽい。
最大の魅力は、見るものを幸せな気分にする「最高の笑顔」に尽きるんじゃないかなー。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいい。おっぱいが自慢。古い言葉でいう「トランジスター・グラマー」。
かなり偏屈気味で寡黙気味で、口を開くとわりと毒舌。
ここまでのお話(笑) まだ3日目 /荒野初日
竜の腹の中。なぜ通路があるのかわからない。
生物の体内なら、液体に満たされていると聞いたことがある。そのわりには、カベこそ赤っぽく、血管めいたものが浮き出して生物らしさがあるが、暗さはないし(これは、エリラの知覚制御によるものらしいが)、とにかく歩ける。延々と続く洞窟、という息苦しさ…という印象もない。
通路は人が最低でも2人くらい楽に並んで歩ける幅があり、通常は4~5人並んで歩けるくらいだろうか。天井は高く、最低でも2m、3~5mくらいまで幅がある。もう、道と表現したい通路は、500mから1キロくらいも行くとちょっとした踊り場…5m~10m四方の広い空間が広がっていたりすると、ここが竜の腹の中であることを忘れる。
また、カベの色がかわると、微妙にそこに現れるモンスター(笑)、怪物のタイプが変わるようだ。最初にいた胃の近くこそ赤いカベ、出てくるのは食材が混ざったようなヤツ。少し先にいったところで色合いは鈍い橙系の色になり、四つ足のケモノっぽいのが現れた。
そして、いきなり開けた荒野。まったく、ここがどこなのかわからなくなった。
そして3人目の生存者…といっていいのかわからないが、洞窟の入り口のカベに埋まっていたのは鬼族の娘。いまのところ、…といっても俺にエリラ、そしてハチ、食われた状況にまともな理由を持っているものがいないのが笑えるといっちゃあ笑える。…文字通りイケニエ状態から食われた俺が、なんか一番まともっぽくさえ思える。
ともあれ、鬼ムス、このどっかひねくれたメガネっコを迎え、彼女を見つけた場所…この荒野…なんもないだけに、さしあたり洞窟のそばに陣取って、俺たちは例によって食事をとることにした。時間の感覚がないので、腹が減ったら食事だ。
ハチが初めてのおつかいにでた場所が、およそ出発地から10km地点。そこからほんの2時間くらいのことで、こんな荒野が現れるとはシャレにならない。距離にして8キロくらいだろうか。トータル18キロ到達。川崎あたりというところだ。
ともかくは先を急ぐ、というより、竜に食われて生き残った、というか腹ン中で再生したヤツがいないかを探しながら出口を探すという、なんか実に緊張感のないのんびりした旅である。
人格的には4人だが、実質上、まだたった3人のパーティ。数の上では、いつ全滅してもおかしくない。そう考えると不安になってくるが、現れる敵がこちらのレベルにあわせてくれるのか、いまんところまだ全滅の危機に見舞われることもなく、だらだら楽しくやっているというべきか。
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● 鬼ムス
「肉に果物、野菜…なんでもあるね」(み
「でしょー♡ あたしがとってくるんだ」(は
「狩り場は」(み
「胃♪」(は
「い?」(み
「竜が食べたものを、溶かされる前に拾い集めてくるの!」(は
「どろぼーだな」(み
「まあ、そーだね~」(え
「寄生虫」(み
「否定しな..」(な
「でてこないで」(み
やっぱり俺、きらわれてるな(な
しかたないよー(え
「鬼族って、かなり感覚が鋭敏なんだねー」(は
「にぶいのもいる。あたしがへん」(み
「そーなの?」(は
「だからひとり」(み
「ふーん」(は
「気楽がいい」(み
「そーなんだ…」(は
「あ、あのさー、あたし達こっからでたいんだけどさ」(え
「しらない」(み
「えっと…」(え
「道を聞いてるんじゃなくて、えっとーなんてゆーか」(は
「一緒に行かない?」(え
「いかない めんどー」(み
「でも…」(は
「食事なら大丈夫。胃に住む」(み
「あ….はは」(え)
孤独じゃないっていいな(な
うるさいなー(え
黙ってろ(み
えー?(え
あっちだ(み
へーい(な
「どこにいく?」(み
「え? ああ、外にでる!」(え)
「どーやって」(み
「わかんないけど、とりあえずー..」(え)
「わかったら呼びに来て」(み
「残念だな-。ミノちゃんと一緒に旅ができると思ったのに」(は
「とめないの?」(み
「?」(は
「あたしが胃に住むの」(み
「一緒にいこ♡」(は
「ハチがそーゆーならいく」(み
「ハチー、随分なつかれたねー」(え
「あはは」(は
「迷惑?」(み
「まさかー すごくうれしーよ♡」(は
「ミノも…(うれしい)」(み
「でさー、ミノはなんで食べられたのー?」(え
「食べられていない。食べてる」(み
「えっと(汗) 竜に食べられた理由を聞いてるんだけど」(え
「いわない」(み
「ナシくんなんてねー、こっちに召喚されて、イケニエにされたんだってー」(え
「え、そうだったのー?」(は
「あ、話してなかったっけ」(え
「初耳 うわー 可愛そう…」(は
「それでか。へんなの」(み
「へんだよねー」(え
「へんじゃない」(み
「どっちよー」(え
「違和感」(み
「?」(え
よーするに、へんな違和感が感じるのはそういうことか って意味だろうな(な
「あたり ごくろう」(み
「よかったねーナシくん。存在、認めて貰えたよ♡」(え
「使い道はわかった」(み
あんまりいい認めかたじゃねーな(な
「贅沢いうな ナシのくせに」(み
「きっつー」 (え
これは、異界もん…この世界に本来存在しなかった、つまり、存在ナシだったくせにってことだと思う(な
「使えるやつは好きだ」(み
「それにしてもすっごく上から目線だねー あたしもひくわー」(え
「えっと、何の話になってるのかなー?」(は
「ナシはナシでなくていいってハナシ」(み
「はいー?」(は
このコ、もしかしてものすごく頭いいんじゃない?(え)
たぶんな それにたぶん…(存在を認めて貰えないことのつらさを..知ってるな.)
そこまで読む? それ以上はいわないで(み
……わかった すまん(な
わかればいい(み
「できるヤツね」(み
「何が?」(は
「ナシ」(み
「? よ、よくわかんないけど、ナシくんのこと認めてくれたのかな?」(は
「ハチはなぜここに?」(み
「あ、あたしは…」(は
そこからしばし、ハチがここにいる顛末や、エリラが自分のくわれた話になった。ぶっきらぼうに受け答えしながら、また一見無表情に見えるが、ごくわずかだがかなり細やかに反応している。よく見ていないとわからないくらいだが..。もしこれが後天的なものでなく、生まれつきのものだとしたら、いわゆる「集団」になじめるわけがない。逆に、後天的なものだとしたら、聞くのが怖いくらいつらく、悲しい経験や、心が苦しい生活を送っていたんじゃないだろうか。
うざ。考えすぎ(み
「じゃあさー、ミノはなんで…あ、いいたくなかったらいいや、ごめんね」(え
「いい。お仕置き」(み
「それって、イケニエ」(え
「お仕置き」(み
「ちょっと、それってひどいんじゃない? 竜に食べられちゃうんだよー! お仕置きでそんな…」(え
激高しながら、涙ぐむエリラ
「いい」(み
お仕置きの意味合いにも、いろいろあるから…(な
でも…(え
いいやつだな …タンス(み
「タンスじゃなーい!」(え
ハチも涙を浮かべながらこのやりとりに思わずほほえんでいる。ここまで読んでタンスといったのだとしたら、洞察力も尋常じゃない切れ物だ。
もちあげすぎるな はずかしい(み
わるいな(図星か)(な
案外…どころか、このコもものすごくいいコかもしれない(な
…そだね ナシくんの分析がなかったら、あたしじゃ、このコ理解できないよ(え
それも買いかぶりすぎだと思うが…(な
「あのー、なんで、えっと…足が出てた、じゃなくて、えっと…」(は
「うん。再生した理由!」(え
「しらない」(み
「…そーだよねー わかんないよねー…。質問を変えよう! いつ寝た?」(え
「しらない」(み
「…(がっくり) じゃ、じゃーさ…(ぷしゅー)」(え
「あ、かたまっちゃった」(は
「おもしろいね」(み
「お守りのたぐいとか…」(な
「でないで」(み
な、なんで(な
「不愉快」(み
「うわ、きっつー。でもー、ナシが出てくる時ってさー、ハチにも話を聞かせたいときが多いんだよ。まだ、ハチは念話使えないし」(え
「あ、あたしはあとで話してくれたらそれでいいから」(は
「わかった」(み
「ミノちゃん! 大丈夫だよー あたしのことは」(は
「ハチは、いいひとだね」(み
「や、やだ… ありがとー」(は
うっわー 真顔で、面と向かってアレは照れるわー(え
うるさいぞ(み
あ、ミノも照れてる…(な
だまれカス(み
あああ~とうとう禁断のカス呼ばわりでたー!(え
喜ぶな(な
「…(汗)えっとー なんか前より取り残されてる感が増えた気がするかも…」(は
「安心して 今度教える」(み
「ありがとう! きっとだよー(ニコ」(は
ハチの満面の笑み。いいな(な
うん アレの前にはっていうか…ミノも嬉しそう..(え
● 守護石
「ハチ、エリラ、こっちの世界には、竜よけのまじないとか竜がキライな魔石のたぐいってないのか?」(な
「竜よけかー あるにはあるっていうけど..」(え
「あたしも、ウワサは聞いたことあるけど」(は
「そもそも、竜を退治にいこーなんての聞いたことないし…」(え
「王宮にあった書物で、竜が嫌う石で村を守ろうとして、怒った竜が村を滅ぼした なんて記述があったような…」(は
「じゃーきかないんじゃん」(え
「そーだよね」(は
「いや 効くから、滅ぼしたとも考えられるだろ」(な
「! そか、そーいう考え方もできるね でも、寄りつけないほどじゃないってことか…」(え
「ただ、イケニエにされる人には、絶対装飾、宝石はつけない、っていうのは聞いたことあるかな」(は
「ハチ、けっこういろんなこと知ってるねー」(え
「いえ、そんな たまたまじゃないかなー」(は
「竜は宝石とか、お宝を集めてるとかって話もあるけど、それ見たことある人って聞かないしね~」(え
「効いた」(み
「なにを?」(え
「わたし、体の中に…」(み
「え? 体の中に? 何が聞こえたの?」(は
「はち、あんたも…」(み
「え?」(は
「どっかポンコツ」(み
「ひどーい!」(は
「効いた・体の中 …埋め込んだのか」(な
「正解」(み
「ナシ-、なんのことー?」(え
「ナシくん!」(は
「守護石かなんかを体の中に埋め込んである。じゃないか?」(な
「正解」(み
「鬼族って、そういう文化だったんだ」(え
「そうじゃない。あたしの勝手。鬼族の角は…なんでもない」(み
「?」(え
「魔力を封じる力があるものがある」(は
「ハチ!」(え
「正解。でも、それは条件がある。それに、万能じゃない。呪詛には効かないし。だから、悪意ある思念や、自分を損なうものから身を守る力を持った石を持っていた」(み
「確かに、いろんな守護石はある。でも、イケニエになるときにとりあげられたんじゃ」(え
「いや、そうなる前に落とした」(み
「はあ?」(え
「だから、落とさないように次は、体の中にしまった」(み
「えー?」(も
「鬼族は治癒力強いっていうもんね」(え
「ちょっと開いてもすぐ治る」(み
「場所は効かないでおくね」(え
「聞きたい?」(み
「やだ、あたしそーいうのダメー」(は
「ハチ…かわいい」(み
エリラ苦笑
「守護石、なんてゆーヤツ?」(え
「忘れた。見るか?」(み
「だだだださなくていー!! …胴体?」(え
「うん。腕や脚だったら、切り落とされたら効果なくなる」(み
「うわー…そーとー危ない橋渡ってるね」(え
「そうでもない。切り落とされたあとならすぐつながる。でもなくすと困る」(み
「なくす?」(え
「食われるって意味だな。獣とか魔物に」(な
「正解」(み
「えっとー、ナシくん、なまなましいっていうか、怖いんだけどー」(は
「あ、ごめん」(な
「ハチは腕が落ちたことないの?」(み
「ないよお」(は
「ごめん じゃ、こわいな はじめて落ちたときはわたしも…」(み
「きゃーいわないでー」(は
「いや、ふつー、腕落ちた経験ある人あんまりいないと思う~」(え
「そうだな」(み
「いや、あはは、じゃ、ええと、それ、こっから出てから見せて貰えるとうれしーなー」(え
「そうか?」(み
「うん 魔導師として…すごく興味ある」(え
「わかった」(み
「ねーねーミノー、きーていい?」(え
「コトバ責めだな」(み
「ななななんてことゆーのよー!」(え
「それって、質問攻めのことじゃない?」(苦笑)(は
「同じ」(み
「ちがうってばー コトバ責めっていうのは~…」(え
「なんだ」(み
「いって欲しい?」(え
「言いたい?」(み
「あの、ふたりともー」(は
「疲れた。寝ないの?」(み
「え?」(え
「そういえば、あたしもちょっとねむいかも~」(は
「そーだね 考えてみたら、ミノ掘り出すのもけっこー重量道だった」(え
「じゅうりょうどう おもしろい」(み
「ちちちちがった重労働~」(え
「もうねろ。重量道」(み
「だからー ちょっと間違っただけだってばー!」(え
「重量道もほどほどにね」(み
「うきー! なんかくやしー!」(え
ミノちゃん、コトバ責め好きなんだなー(は