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第1話 目玉

いてて…何だろう ケツが痛い…足か? 随分床がごつごつしている感じだ。

目をあけてみる… あとで気づいたが、実際には知覚を起動した…のだろうか。なんか洞窟の中のようだ。しかし、随分目線が低い気がする。


「やっほー 起きたー?」

  女の子の声だ。明るく、なんかうれしそうだ。...って?

声のした方を向くと(…なんか体ごと動いたような気がしたが…ケツがすれて痛い?)まん丸な目玉がひとつ、そこにあった。



「ずっと一人っきりで退屈だったんだよー いやー、来てくれてうれしーよ~!」

   念話? テレパスか? 頭の中に響いてくる…って、あたま?


「あたしは魔導師のエリラ。ちょっとしたアレで竜にたべられちゃってさー」

   …と、いっているのはこの目玉かー? きれいな紺碧の瞳だが、なんでおまえは! というかここは…。その紺碧の瞳の中に、金色の瞳をした目玉が映っている。


「そ、それが今のキミ」

   ええええええっっっっっっと

「まあ、混乱するのは無理ないけどさー、今に慣れるからっ」

   あきれるほど軽いノリで、友達のように話しかけてくる


「それでね、ふつーは食べられて終わりなんだけどさ、まれにねー残るのがいるんだ。こんなふーに」

   …確かに、俺はあの時竜に…


「ここは…どこなんですか?」

「胃の近く。なんで敬語なのー? ふつーでいーじゃん」

   とゆーことは、やっぱ竜の腹の中ってことか

「…どーいう空間?」

「わっかんなーい」

   (汗)

「竜の胃っていうのはね-、生き物も岩石もヨロイも何でもとかしちゃうんだ」

   腸に流れていくのとは違うのか?

「で、溶けずに残ってたのがキミ! いやあー あたしも驚いたけどさー」

「あんたが俺をここに?」

「押して転がして。たいへんだったんだよー びみょーに坂あるし。マホーがこの中じゃほとんど使えないんだけど、ちっちゃいからねー、ちょい風魔法で、すこーし浮かせてすーいすい」

 「全然大変じゃないんじゃ…」

「魔法をつかいながら動くのは大変なんだー やってみればわかるよ」

 「おれ、魔法…使えないんで」

「あ、そっか …あんた異界のひと? 異界もんねー。魔法ダメかー。…でもなんかあるんでしょ?」

 「なんかって?」 

「特技とか特殊能力とか」

「……」

  ないとはいえないけれど…

「なーんにもないのー?」

   ……誇って語れるようなもんじゃなし…

「ま、本人がわかってないってゆーか、自覚してない何かってゆーのもあるもんだからー、ま、気にしないでー。それよりさ…てか…実際……」

「なんでしょうか」

「あんたが来てくれて嬉しかったよ」 

「?」

「ひとりだったからね」

「…」

  目玉1つ。いや、俺と並んで2つか。目玉なのに、寂しそうに目を伏せて見える。

「ずっとここに…いっこで?」

「ひとりで、だよ!」

「200年とか、数百年とか?」

「ううん、20年くらい」

「ふう…」

   微妙にがっかりしたような、しかしそれでも二十年… ちょっと想像したくないな。

「そう…ですか じゃあ年は…」

「女の子にトシ聞くー? 17だよ」

 「えっと…じゃあ今さんじゅう」

「17! 17だよ17!」

  目玉がぴょんぴょんと跳ねているのは妙におかしい。しかし、どこからつっこめばいいのだ


「実際さー、時間の感覚ってわかんないんだよ。すっごく長く感じる時間だって、1瞬だったり」

「てことは、ここからでたら何百年もたってたりとか?」

「かもしれないしー、おととい来い!とかだったりするかもねー」

「おととい…」

「まー、先のことはあとで考えよー!」 

  それでいいんだ(汗).. それにしても終始一貫、なんてアクティブでなんて前向きでなんてやかましい目玉なんだろう。というか…女…のコ…だよな…たぶんこれ。どう見ても、目の前にあるのは、タダの碧い瞳の目玉だ。考えてみたら、タダの目玉同士で会話になるのが不思議だ。口も耳もないんだが…



「でね、実は、あんたが来てくれたことで、あたしひとりじゃあ無理だったことができるワケ!」

「できること?」

「こっちきて」

「…う 動けません」

「ぶきよーだなー ま、なったばかりだからしょーがないか こーやって…」

  コロコロ 

「はい目ん玉キッス~♡」 ぴと

「な……」

  なんだろう どきどきするぞ (お、女の子がぴと…という絵じゃあないんだが…)

「ほーーーーーーーーーー、異界もん、って聞いたけど、やっぱなんか違うよ。入ってるもの。それにキミ、思った以上にビジョンのちから、ツヨイね 他にもあんまり知らない力を感じるよ!」

「え?」 

「いい、まず、手足をイメージして」

「は?」

「ふたりいればなんとかなるはず あたしの魔力とあんたの…そのよくわからない力 さあ、いくよ 手足にカラダ!ごー!」 

  え? てあし? カラダ? 目玉に手足? というとバレーボールのアレか、お父さん…そんな、ビジョンがよぎった直後のことだった。


ちょーん


  な、なんだこれは、まるっきり●太郎のお父さん…じゃないな、体は…プリプリの女のコ型SDキャラだ。

「じょーできじょーでき! キミ、けっこうHだねー でもいいビジョン力だよ~! ほら、歩けるしょ」

「ほ、ほんとだ」

  てくてく 

「うわ」

    コケ

  にしても、二頭身キャラで体がちゃんとHで手足が短くて可愛いのに、顔が目玉というのはいささか..

「けっこーぶきみだねーキミ」

  あんたがいうか… 

「それにしても…いくらふたりでも最初からこの精度で…このレベルで創造ができるなんて…」

「?」


「あのね、あたし、一通りの魔法は使えるんだけど、特に創造っていう珍しい力持ってるんだ。いわゆるレアスキルってやつ。でもね竜の中だと、全ての力がほとんど使えないか、使えてもほんのちょっぴり。創造にいたっては、あっちにいた頃でさえ、小さな人形くらいしかできなかったんだけど…」

「?」

「だから、ほんとは先ずは、あたしだけのつもりだったんだけどねー^^」

「……」 

  さらっととんでもないことを口走っているけれど、なぜか腹が立たない。むしろ、むき出しの目玉が、にこっとしたように見えたのがおもしろかった。



「さて、じゃあ今のうちに、もう一段階チャレンジしてみよっかー」

「?」

「知ってのとーり、ここは竜のおなかの中だ。あんまりひとところでうろうろしてると、

 あー! きちゃったー!」

  あっちの方を見て見るとなんか、紙を食うシミみたいな平たいもんが近づいてきている

「あれ、食べ残しとか侵入者を食うんだよねー いままでは、なんとかやり過ごしてきたんだけど…」

「ああ、アレがいるからあんなにきれいだったんだ」

「なんのことー?」

「いや、食われるときに、竜の歯がすごくきれいに磨かれていたんで」

「あほかー? きみ、おもしろいよ~ すっごくかわってるー!」

  目玉チビが腹を抱えてケラケラ笑っている …じつにこれは…レアだ

  そうこうしているうちに、得体の知れないものが少しづつ近づいてきている。なんか、葉っぱに細かい足がついているような…あんまり記憶にないデザインだ。


「と、とにかく逃げましょう!」とオレ。

「待って、ためしてみる!」

「?」

「手握って!」

「え?」

「ファイア!」

彼女の手から、炎の弾が飛んだ。いわゆるファイヤーボールだ! でも、アニメなんかで見るよりもだいぶ小さい。むしろ流線型か? 妙な力強さとスピード感、..そう、火に力強さがある!

それは、ぼぼぼっとその怪物?に当たると、一気に焼き尽くしていた。


「うひょーーすっごーい! キミ一体何ものー? 確実にあたしの力、増幅してるよー 今まで、こんなん、こん中じゃ使えたことなかったんだからー!」


 目玉が抱きついてきた。目がでかすぎて結構抱きにくい。純粋なすごく嬉しそうな喜びが伝わってくる。どきどきしてきた。アホか俺は


  (エリラの思惟)うーん、異界もんっていってたけど、確かになんか感じたことのないなにかを感じるし…外にいたときでさえ、あたしのファイア、パワー的にはせいぜいあの半分…どころじゃない。うん。こんな強力になるなんて、信じられない。竜の中だよ。

一体コイツ…うーん、どう見てもタダの目玉ちびにしか見えないし…。でもこうしてみるといい瞳の色してる...。金色で…



 何を考えているのか、でかくて碧い瞳がのぞき込んでくる


「よし! 決めた。やってみよう!」

  また、何か思いついたらしい。俺はここまで起こったことをゆっくり考える間もなく、完全にそのコのペースに巻き込まれていた。



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