第40話-9:ハチ
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。
リム(り :ぬえ
歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー
ラウラ(ら 竜人
8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。
グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。
マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。
美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。
空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー
▼かぶりつき:敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
9.ハチ
いろんな種族がいたな。
町だけでなくて、王宮にも、性格や能力に応じて、妖精族以外の人たちもたくさんいた。
お父様…父は善政をしいていた、って言えると思う。
国民…王国のみんなは生き生きしていた。
自分の為じゃない。自分は大切に、でも、人も大切に って教わった。
あとから色々学んでいたら、それってなかなかない事みたいだった。
ひとりひとりはそれができるのに、集団とか、社会とか、国レベルになると、なんかどんどん思ったのと違うものになっていってしまう。そういう話や現実の方が多いっていうのを知って、ショックを受けた記憶があるな。
だから、わたしは幸せだったと思う。
毎日は楽しかった。
教養とか護身術の実技とか。座学はわりと寝ちゃうことも多かったけど。
国っていうのはほんとにいろいろみたい。
歴史を見ても、現実も、遠く離れてるとこだけど、正義と正義で殺しあってるし (泣)
略奪国家なんてのもあるみたい。
そうなるともう好き嫌いでしか言えないな。もしその国に生まれてたら、きっと私も戦士になってたと思うし。
…うちは、平和だったけど民優先だったから、税はごくわずか。やりくり大変だったな~
逆恨みとか、悪意の連鎖ってこわいよね
国が豊かになる。テーマはそれでも、その意味が
<王族だけが、側近だけが、長だけが豊かに>
...なんて、「搾取」の正当化の提案なんて、あたし達は認めない。
よその国からやってきて、そーゆー提案を拒否されたら、誹謗中傷にテロリズムをあおりはじめる人たちもいた。
国民たちが怒っちゃって、なんとか助け出して国外におくりだしたら、他国で侵略戦争をあおったり。
近くにはそれに踊る王や国はなかったけど、それを信じたり口実にすることができるのも事実でー、世界ってゆーか、ヒトの社会って、すごく不安定なものなんだなって考え込んじゃった。
あたしがかけられた呪いも、そういった不条理な要求や望みを断られたひとたちの手によるものじゃないかって話もあったけど、真相はわかんない。
呪いに対する呪いよけ。王国のまもりの1つに、それもある。でも、それをかいくぐってしかける…。
怨みや悪意の固まりっていうのを、生まれながらに背負っていたんだよね。
王族の娘で、妖精族なのにひとりだけ羽を持たない王女。
すごく変だよね。
でも、誰も何も言わない。みんな普通に接してくれていた。
あたりまえだと思っていたことが、あたりまえじゃないっていうことも、年を重ねるにつれてわかってきた。みんな、すごいな。ありがたいなって思った。
竜もねー、私のところでは罪人をイケニエにするのがならわし。
へんだなっていうより、なんかあたりまえのことだった。
悪いことしたら罰…これって、どうなんだろー。
ほんとにいろんな人がいて、ほんとにいろんな感じ方や考え方があって、
正義とか、悪とか、法とか裁き、刑罰とか考えはじめると頭かきむしっちゃうよ~。
罪人をイケニエにってゆーのは、犯罪の抑止力にはなるみたいだけど、自殺する代わりに罪をおかす人もいるみたいだし。
誰かに相談できれば、って思うんだけど、オトナになると、相談できない理由をたくさん抱えちゃう人も多いんだよね…。
それでも、窓口は町ごとにおいてるんだ。
人を信用するとか、信用できるとか、信用できないとか…これも、どうしたらいいんだろうって。
あの日のイケニエになるはずだったひとも、
「悪いひとじゃない」
…あたしが子どもの頃、道に迷っていたのを助けてくれた人。
あたしは、見殺しにできなかった。
罪を犯したなら罪は罪。それもそうなんだけど、それでもあたしは人を信じたい。
あの不安な気持ちの中で、おんぶして貰ったことは、あの温かい背中を、忘れることなんてできない!
もし、竜のイケニエを助けたら牢獄行きとか、次のイケニエにする
なんて法があっても、同じことをしたと思うな
あのひとは、助かったのかな。
あのあと、どうなったんだろう…
目がさめると、少し離れたところで赤い液体を浴びてる女のコがいる。
ピンクの髪の、可愛いコ。
血で沐浴? すごいね~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハチの埋まっているあたりが派手にはじけ飛んだ。
派手な割に、音がしないのが不思議だった。
タオル巻きのスタイルのいいシルエットが浮かび上がる。
「ナシくーん! 無事だったんだー!」
「ああ」
「あれ? エリラは?」
「寝てる」
「みんなは…わーみんなも! あ、あたしもちょっといいかな…?」
結局、これで全員抱きかかえることになった。
うーん…ハチのこの、女のコらしい肉感感触とこの軽さは、やっぱり実にいつも新鮮だ。
これで、時速300キロで走るし岩を軽々抱えるし…
最初は、出てきた順に寝かしていたけれど、何度か移動させているうちにバラバラだ。
心持ち重いレンダやルルア、ミノは、先に運ぶかあとで運ぶか毎度悩む。
リムとラウラのそばがあいていたので、ハチはそこだ。
なんかこの3人は、妙に純粋な1チームってイメージだ。
レンダ、メイ、ルルア…お姉さんチームに、
キラ、ミノ、マチ…クセ者チーム うーん信頼厚いっていったら、レンダも
ルルアは変に同志って感じだしな…
ともあれ、これで9人。
飛び交っていた思念はすっかり安定している。てか、聞こえる断片はエリラのみ。
まさかと思うが、最初の目玉姿でいたりしないだろうな?
一瞬ぎょっとするシルエットがあるので飛んでいったが、石だ。
眠っている9人は、まだ目を覚まさない。
あまり…というより、今まで一度もしたことがないが、思念の中…カラダの中を深く探ってみるか。
体の中…変だな。心…そうなんだろうけれども、それもしっくりしない。
エリラと思念で会話を交わしていた感覚を想起してみる。
そう、いつもそこにいた。いつも、ここにいる。エリラ、どこにいるんだ?!
ここだよー!
どこだ
ここだってばー!
だからどこだ
ここだっていってるじゃない! バカナシ-!
その瞬間だったのか。
それとも、その直後だったのか。
時間という感覚と言葉では表現できない。
それは、状態だったというべきか。
気がついたらそうなっていることに気がついた、というアレだ。
エリラと同化した…というより、これは、エリラの意識の中。エリラの記憶-
___________________
次回「エリラ」