第40話-8:ミノ
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。
リム(り :ぬえ
歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー
ラウラ(ら 竜人
8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。
グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。
マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。
美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。
空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー
▼かぶりつき:敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
8,ミノ
竜は里にもでた。腕自慢が挑んで玉砕する日。
数年に一度で、祭になってる
その日が、よそではどうやらイケニエの日にあたるものらしい-というのはあとから知った。
時には集団で挑むが、何故かいつも犠牲者は1人
奴は一体何を考えているのか
犠牲者の特徴を話し合っていたこともあるそうだが、共通項は見いだせなかったという。
戦闘に関して、あたし達は貪欲。とくに勝てない相手には徹底的に分析する文化というか、クセがある。参加者や犠牲者の攻撃力、戦意、能力の傾向、攻撃や回避の順番や回数、年齢や嗜好、気候や気象条件、戦闘時間など、あらゆる角度から検討する
それで何も出てこなかったというのだから、もはや異常だ。
はっきりしてるのは、ヤツは強い。
逆に、もうそれだけで十分だったということか(笑)
鬼族はまあいろいろだ。
総じて戦闘好きだが、大きく分けて定住派と放浪派。
放浪派の方が、案外人付き合いがいいのかもしれない。
そして、何が面白いか、面白いことを探して生きる求道派と
面白いことをみつけて追求する享楽派、
あとは普通が別に普通の普通派。
そのへんの個体差は、鬼族といっても他種族とあまり大差ない。と思う。
あたしは空き巣のスリルに夢中になった。
もともと、傲慢でイヤな金持ちや天狗になってる権力者に一泡吹かせたかっただけ。
ぶっ殺すとあとが面倒
世直しという概念に準ずるほど高潔ではない。
古道具屋やマニアってのもなかなか面白い。
あいつらが、お宝に目を輝かせるのは、お金のためというよりも好きで好きでたまらないっていう、純粋な歓び。アレを見るのは何か嬉しい。
子どもでもひねたのはいるが、いい大人で、素直な喜びにあふれた状態をさらけ出す…そういうバカっていうのは好感が持てる。こっちまで幸せな気分になる。
空き巣のスリルと盗む工夫と達成感は、無論捨てがたい。
だが、それに付随して生じる人の笑顔を見るのは、やはりいい。
食うために盗む、
ただ盗みたくて盗む、
金持ちになりたくて盗む
いろんな盗人にあった。
美意識と目的の違い、嗜好性の多様さは当然としても、不快な盗みや売買はあるな。
矜持の違いだ
子どもや臓器を売るために、人や動物盗む奴らってのは、出会ったら単純に叩き殺していたが、怨みを買ったらしい。当然か。だが、見過ごせない。放置して後味が悪いよりもマシ。
その町は、俗な表現をすれば病んでいた。
見た目は普通。でも、教会と権力者と盗賊が結託していた。よくある話。歪んでいるといえば、人格の悪くない金持ちを狙わなかったら私とグルだとかの風評が立つくらい。
派手にやって、密かにもどそうと思ったが、それすらゲスなやつらには攻撃の格好の的だ。なので人品下劣なやつの家の前に、もっとも人通りの多い時間を狙っておいてやることも考えたが、ああいうやつらほどそれをうまく懐に入れることに長けている。
天も神もいないと思い知った。ま、私も青かった。
まあ、イヤな街という意味では、正直で普通の庶民がしあわせになれない商取引とか、貢ぎ物ができないと虐げられるみたいな。
だからそのへんに関係する書類とか密約書とかを盗み出してばらまいたこともある。
ちょっと面白かった。一部は、マニアに売れた(笑)
あの町には長く居すぎた。ほかの町より、好事家の種類が多かったぶん、いろいろな注文が出てきて面白かった。盗みがいのあるイヤな金持ちは多いしや防衛策も多彩で、突破しがいもかなりあった。それが不覚と言えば不覚。
つかまるドジはしない。だが、通りすがりの見知らぬ親子をダシにされた。
さからえば殺すと。
魔法防御やら、爆弾魔法が目の前でかけられていく。こうなるとお手上げだ。
炎上か、真空か、水球、地玉…。並の人間ならひとたまりもない。
仮に連れ去ろうとしても、ご丁寧に、距離が離れると発動する術だ。
お宝にかけられたそれなら、解呪の石とか紋とか、やりようはいろいろあるものだか
ヒトサイズとなると扱いは難しい。ミニマムだけでも魔力を感知…で発動、一巻の終わりだ。たぶん。
油断しすぎた。
無関係のヤツを見殺し…むしろ巻き添えにできるような見上げた根性は持っていない。
奴らとぐるか、芝居の可能性もあったが…あれが芝居だとしたら見事だ。
その町では、犯罪者を竜のイケニエにする伝統。
真っ先に町長とか司教とかがなるべきだが、あんなものを食ったら、竜が身体を悪くするんじゃないかしら。
だいたいやり残したことに思いをはせるほど、先に向けて生きていたわけじゃない。
そういう意味では、刹那を生きていた
まあ、それなりに存分に楽しんだし、後味の悪くない人生だったんじゃないか?
コレが竜か。里では、あたしは不思議と関わる機会がなかった。
目の当たりにしてみると禍々しい見た目のわりに、邪気と凶気がない。へたな魔物よりも純粋だ。
コイツは一体何ものなんだろう。
記憶はここまで。
タヌキ寝入りって知ってるか?
だったら何?
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バコオンと、岩が砕けた。
煙の中に、角の生えたメガネっコがビキニ巻きで立っている。
ナシ、生きていたか。
ああ
エリラは寝てるのか?
ああ
みんなも寝てるのね。それじゃ。
どいつもこいつもほとんど挨拶なしに倒れ込むから、そのたびにあわてて抱えることになる。
今回もそーじゃないかと思っていたから、対応するのは楽だったが…
メンバーの中でも小柄だから、姫抱っこはしやすい。しかし、ずっしり感は随一だ。
重さに対して、メガネしっぱなしで寝こけている表情はやっぱり美少女だ。
メガネが落ちかけてるのはなんか新鮮だ。
ミノの過去は最初の頃に少し聞いていたが…真っ直ぐだな。
これで8人目。
女のコの寝姿8人分って、ずいぶんだな。横に並べると広くなりすぎる
かといって重ねるわけにはいかない。思わぬことで悩む。
へたに並べると死体置き場みたいで気分が悪いしな。
やはり、全員そろうまで起きないシチュエーションか。
最後の一人、ハチは…
あたりを見回してみると、後ろだ。手が出ている。
距離にして2~3mくらいだが、…みんなを寝かしたところから微妙だな。
まあ、移動距離はたいしたことないが、一人ずつまたそっと抱える。
我ながらよく落とさないものだ。
ただ、毎回運ぶので、そのぶん小まめに様子を確認できるというのはある。
女のコ、女の人、レディ…だからなのかわからないが、
人ひとりの存在感というのは、こんなに大きなものだったんだろうか。
妙な、新鮮な感慨がおとずれる。不思議な感じだ。
カベからつきだした手。
エリラと探索の旅に出て、すぐだったけれどもコレを目にした時の驚きと喜びは忘れられない。
明るくて前向き。わりと無知なところもあるわりに博識で、なにより無垢。
いるだけでまわりを明るい気分にさせるっていうキャラが実在するっていうのにも驚かされた。
…掘り出した時、マジマジと見てしまった美しい体の記憶もよみがえってくる。
ある意味、一番ドキドキしたな。
ハチ、起きろ。
そっと手首に触れる。考えてみたら指先でもよかったんだが。せっかくの機会を惜しいことした。
音楽…というのだろうか
その言葉が想起されるようなイメージが流れ込んでくる。
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次回「ハチ」