第40話-7:レンダ
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。
リム(り :ぬえ
歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー
ラウラ(ら 竜人
8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。
グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。
マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。
美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。
空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー
▼かぶりつき:敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
7.レンダ
学者? おんなのくせに?
いつ時代の人間なんだか、バカが多くて困ったわ。
たまたま、立ち寄った町でのことだけど。
望みを叶えるための放浪生活。
望ってのは…理想の自分になること。
オオカミ系の母とネヌ系の父。母は毅然とした純血種。中途半端で柔軟な父に引かれたらしい。父はけっこう、よそではらませて帰ってきては空を飛んでたけど。(ぶっとばされて)
獣人の子育てってのは、…これは獣人に限ったことじゃないかもしれないけれど、社会規範のうるさいところと、たいしてないところの地域差がずいぶんあるわね。
あーしなさい、こーしなきゃだめ、こーあるべき。
幼い頃は、それがまた人によってみんな違うのよね。押しつけてくる内容が。
自分の価値観が一番。その色にそまってないと生きてる価値がない
そんなふうにいわれてののしられて、罰則だの、見せしめだのでつるされたり。
はては迫害まで。
あたしは運が悪かったのか、ろくなオトナ、ろくな社会がなかったわね。
集団って、わりとそうじゃないかしら? 同じ色に染めようというか、同じ色に染まらないとダメみたいな。
一緒じゃないと不安、みたいな感じ。
で、異分子は秩序を乱すとか、集団を危険にさらすとか、まー、一理あるのは認めるけれど、
そんなのゴメンだわ
実際、勝手に動くヤツのせいで群れが全滅しかけたこともあったけれど(笑)
獣人と一口にいっても、獣の種類だけ色々な姿や性質を持つものがいるわ。
同種族で集まっているところもあれば、他種族が大勢暮らす町もある。
小さな群れほど、掟とかルールがうるさい感じが多かったわね。
古い町ほど、おおっぴらにそういう規制をかたらないところが多いのが面白いわ。それで、無秩序ってわけじゃないんだもの。
集団の気と感覚での通じ合い…みたいなものが働きやすい集団や、場、てものがあるみたいね。
最初は、毛並みの美しさを誇っていたわ。
やがて、それだけでは飽き足らなくなった。
そう、毛並みだって十分すてき。でも、すべすべの素肌は素肌で、とても魅力的。
いろんな種族に会うたびに、いろんな種族のステキなところ、魅力がわかる。
それを自分のものにするにはっていうんで、いろんなものを学んだわ。
いわゆる外科的な移植技術、霊的、魔的な要素からアプローチする魔法手術技法、生物学と魔法を融合した生体魔法練金みたいなものまで。素材を集めるために、他を殺して奪うって手法がいやだったから、一から培養する手法にたどり着くのも大変だったわね。
何かの大家や専門家がいると聞いては、話を聞きに行ったり。
そうしているあいだに、獣人ハンターに目をつけられたり。おかげで、トラップの発見と回避の技能は随分腕が上がったわ。
ようやく落ち着けるところを見つけて、人里離れたところで研究三昧。
より理想の自分を求めての、改造実験の毎日…だったわね。
たまたま吸血鬼に出会って、一緒に暮らしてたこともあるのよ。
あの、キバで首に穴をあけて血をすするっていうまがいもんじゃなくて、キバに吸血機能があるっていう純正品! あこがれてたのよね。
結局、毎日血を吸わせてあげて養ってたんだけど、得られたのは不老不死っていう特性だけ。失礼しちゃうわ。
結局別れて、自分でキバを作ろうって思ったんだけど。意外なくらい培養が難しかった。血を吸う機能、原理的にはできそうだったのに。索敵用の瞳の培養と埋め込みかはできたのにね。
そんなふうに肉体が充実してくると、今度は着るものも気になってくる。
華美なものとかシンプルなものとかいろいろ夢中になったけど、最終的にこだわるようになったのは下着。
できれば防御力があっておしゃれなのってないかしら?って思うようになって、いろいろみていくと、これはこれで素材のバリエーションに驚いちゃったわ。
ヘビや甲冑獣、装甲虫、甲殻類みたいな生物だけじゃなくて、金や銀、宝石や魔石を編み込んだものとか。
でも、どっか決め手に欠けてるのよね。
ちょっとしたオンリーワンは、考えようによってはすぐできちゃうし。究極っていうイメージに合う下着って、どんなものかしら?
いつのまにかそれを夢見るようになっていたわ。具体的に目指す姿がわからないだけに、あこがれたわ。
そして、あるとき見かけた竜。
美しくて、しなやかで。虹色に光を放つその姿。
あらゆる物理攻撃も魔法攻撃も受け付けない…実際に、竜と戦ったって人の話は聞いたことがないけど、なぜかそんなふうにもいわれてる。あのウロコで下着を作ったらどんなものができるかしら? 小さいカケラでもないかしらね。
…なんでかわからないけれど、ふと思ったその思いが日に日に大きくなっていた。
ちょっと、竜のウロコでも落ちてないかしら?
ある日、あたしはそれを探しにいこうと思い立った。
実際、トラップ感知や回避、戦闘、逃げ足…どれも自信あったし。
間違いで不死のカラダになってたし、守護と再生の入れ墨もあるし。
ま、警戒の余地はあるけど、恐れる必要は感じなかったわ。
それに、竜の祭壇って、不思議といつもきれいなのよね。
血の跡とか、死体の臭いとかが全然ないの。ヒト族とかの死刑場なんかに比べたら、格が違うわ。
神聖な感じって、ああいうのをいうのよね。
竜は…単純な話、なんなのかしらね。
全然関わる機会はなかったけれど、どこの町や国にいっても、ヒト族の里でも他種族のなわばりでも、かならずイケニエを捧げる祭壇があるわ。
あたしも含めて、みなが、それが当たり前に思ってる。
あたりまえって、こわいわよね。でも、すごく安心してる状態でもあるのよ。
疑問を抱かない限り、その観念に依存して生きられる。それって不思議なくらい幸せなこと。
生き物は死ぬものなんだしね。病気にケガに戦いに事故...
死に意味を与えるっていう意味では、すごいなって、他人事みたいに思っていたわね。
で、竜の祭壇まわりを探索していたら、アレって、なんの気配もなくていきなりそこにいるのね。あんなに大きいのに。
認識したと同時に、終わってた
みたいね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だれかお尻触ったわね …ふ、無理もないわね。でも、高くつくわよ。
何かほってるわ そうか、あたし、埋まってるんだ。
あたし、どうしてこんなところにいるのかしら。
この手の中…これ、竜のウロコを素材にしたパンツとブラよね
思念が形を与えるっていうのは聞いたことあるけれど、実際にできたのは始めてね。はやくつけたいわ
あら、おはよう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
レンダの埋まっているあたりが、剣で切り裂かれたように裂け目ができて光の帯が流れ出した。
この演出、はやってんな。レンダは、確か中のポーズは体育ずわりだったと思うんだが。
岩のように破片が飛び散り、ほこりなんだろうが、立ちこめる煙の中にすくっと立ったオンナのシルエットが浮かび上がる。ブラをつけ、パンツをはいているしぐさがわかる。…パンツからじゃないんだな…
で、布まで持っているな。
煙が晴れると、タオル巻き姿でゆっくりレンダはふり向いた。ばさっと髪の毛をひと払いする姿が堂に入ってる。
「無事だったのね」
「ああ」
「エリラはいないの?」
「まだ寝てる」
「そう…みんなはあそこね」
「ああ」
「あたしももうちょっと…寝るわね」
普通に歩き出そうとしてばったり倒れかけるのを、慌てて支えた。
しかし、どうしてどのコもいい香りがするんだろうか。
体勢上、はからずも肩に抱える荷物背負いポーズになってしまったが…うん、オレでもできるもんなんだな。
レンダが、見かけの割に重すぎないのもあるんだろうか。しなやかな肉体だ。
あとふたり、ミノとハチ。
…勘弁して欲しいな。10mくらい先じゃないか? あの、カベからつきだした足は。
7往復…
万一こいつらにこの間の記憶があったら、あとで腹抱えて笑うだろうな。
ふつーに考えりゃ、放置しといても大丈夫っ なんだろう。
そばにいても、神隠しに遭う時はあう。
ビジョンを見ている最中は、外界の意識はほとんどない。
しかし、「そこにいる」。その感じが、バリヤーかシールドにでもなっていやしないか。
なってなくても、なってるかも という、原始的な思いだろうな。
その方が安心する気がする。その感覚を、オレは大事にしたい。
だから…俺の世界じゃ生きにくくってしょうがなかったが。
実際、そんな気がする…で、そうじゃなかったことの方が多いんだが、その通りだった…ってのが皆無じゃねえってのが罪深いぜ。
全員運び終えて汗だくだ。
さて、ミノ。
繊細にして頭脳明晰、知性豊かにして感性も鋭く、勘もいい。
その上可愛くて力持ちと来ている。
発掘では、このコの勘の良さには何度も助けられたな。なにかするときの相棒としちゃ、最高のパートナーかもしれない。
起きてくれ、ミノ。
オレは迷うことなくその細い足首をつかんだ。
稲妻のように強烈な電撃をくらったような、衝撃のような流れが走る。ビジョンとは思えないエネルギーだ。
ダテに、鬼娘やってるわけじゃないのを一瞬にして思い知る。
________________
次回「ミノ」