第40話-5:メイ
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。
リム(り :ぬえ
歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー
ラウラ(ら 竜人
8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。
グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。
マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。
美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。
空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー
▼かぶりつき:敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
5.メイ
私が生まれ育ったところは、専制的な王や特権的な支配者がいない統治国家。
それぞれの地域に領主がいて、合議制でいろいろなことが決められるわ。
小さな村やちょっとした町があって、経済がまわってる。
経済って苦手よ。書物を読んでも目がまわってくるわ。
領主の家に生まれて、その家を継ぐのが当たり前だった。
代々、国を動かす合議に参加してきて、領民も多いわ。
人がいれば、いさかいも起きる。だから、調停役の他、魔物が出たら討伐隊を組織したり、とれすぎた作物の配分先を手配したり。
「うちは、代々人々のお世話役」
それが父の口癖だったし、教えだったわ。
だから、小さな頃から学ぶことばかり。作法とか教養とか。
「領主は偉くないんだ」ていうことを忘れないようにって、家事や裁縫、料理なんかもやったけど、護身術と兵法はいつまでたってもなじめなかったわね。
基本的には恐がりだから、っていうか…
感覚は鋭い方だったのか、索敵術は得意だったけど、身を守るか逃げるため、だったわね。
万能繭の能力についてだけは…ちょっとね。
魔法は、そんなに珍しいものではなかった。使える人は少なかったけど、魔導師のたぐいは色々な形で町にやってきたし、居着いてる人もいたわ。
でも、この力は誰も見たことも聞いたこともないという。
しかも、イザという時、自分だけ助かる力
町の外れに魔物が出た時、負傷者が大勢出た。討伐隊だけでは無理で、傭兵や戦士の助けを借りてようやく退治したけれど、私は隠れて中でふるえていただけ。
役立たず。
自分だけ助かる力。
本当にその通り。それに、何かに驚くとちょっとしたことでも繭の中に入ってしまう私は、当然、だんだんいたたまれなくなっていたわ。
毅然とした態度をとっていても、時間がたつにつれて、私の中ではつらい思いだけが増幅していた。
竜への供物。
やはりそれは、私のいた国でも当たり前のようにあった。
領主によって、竜への対応は色々だったわ。犯罪者を差し出すもの、政敵をはめるもの、他国から奴隷を買って差し出すもの。
竜への供物、イケニエの選出は各々の領主が輪番で担当し、数年に一度、私の父のところにもまわってきていた。
不治の病や、回復が見込めないけが人が、自らイケニエを申し出てくれていた。
その意味では、父は民に愛されていたと思う。
何年もそうやってきていたけれど、その年は、死罪に相当する犯罪者もいなければ、自己申告するものもいなかった。
そうね。わたしがやらないと。
だから私が、イケニエを申し出た。
半分は、イザという時自分しか守れない私が、領民のために身を差し出すなら、みんなが認めてくれるだろうという思い。
もう半分は、領民の中から無理にイケニエを出したくない思い。
結局私、いいかっこしたかったんでしょうね。
それに、本音をいえば自分の繭に自信もあった。たぶん、生き残れるんじゃないか、みたいな。
供物の日、当日。
やっぱり、すごく怖かったわ
皆がまわりで、呪縛の術や準備をする間、私は目隠しをして貰っていた。
その直前に見た父母は、やはり悲しそうだった。でも、どこかあきらめている感じ...これでよかったんだって、自分に言い聞かせているようにも見えた。
人の気配がなくなって、私は繭を作った。
生き残れるかも、って思っていたわりには、万一生き残ったらどうしたかったのかしらね。結局、誰かの為に犠牲になるっていう美名…それがほんとに美名かどうかすら、考えてみたら考えていなかったかもしれない。
ただ、そう、酔っていたのよね。現実から逃げたい思い、それだけだったのかもしれないわ。
竜の気配がした。
目隠しをしているのに、その姿は見えた。恐ろしかった。本当に怖かった
それが、最後の記憶
にぎやかな、人の気配がする。ここはどこなのかしら
誰? 背中を指でつーってするの…
誰? すわったの? あたしの背中に?
掘り出されている…の?
遠くで、そんな感じがしていた。
やがてどこかに寝かされて、誰かが、誰かの容姿を語っているのを聞いていた。
…あたしのことなのかしら。
誰かいるの?
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
外にでている背中のまわりの地面がめくれてゆき、ゆっくり身を起こしてくる。
ゆったりと身体を反らせたメイが浮かび上がって、また下降しはじめるのを抱き留めた。布ビキニじゃなく、タオル巻きだ(笑)
「あら、ナシくん…いたんだ」
「ああ」
「ここは…」
「無事だな」
「ええ。みんなは?」
「そこで寝てる」
「そう… ふう…あたしももう少し眠っていい?」
がくっと、糸が切れた人形のように脱力するメイ。
そこそこ重いな。この、肌のしっとり感はまた独特だ。
4人の横に寝かせる。
…なんか、楽しいコトがなんもなかった人生…みたいな記憶だった。
義務と、誠実…それだけみたいな。
今度生まれてきたら、もっと自由に、楽しいことをいっぱいして欲しい。
そんなふうに思ってしまっている自分がいる。
いや、Hとかじゃねーぞ。生きていて嬉しい、楽しいって、そういう経験をたくさんして欲しいってことだ。
なんか、ツッコミに慣れすぎたのか警戒補足するくせもついてるな。
これで5人。だんだん、なかなか壮観なマグロ市場になってきた。
まったく無防備…というより、みな寝相はいいな。寝ていて思念で蹴っ飛ばされたりぶん殴られたのはエリラだけだ。
…今だに、彼女の気配はまだ…あるが、ない。
ええい、つまり消えてないことはわかるが、つかめないってことだ。
こんな調子で、残りの4人、ルルア、レンダ、ミノ、ハチが順に現れ、それぞれに記憶をなぞっては顕現していった。
そのたびに5m先や3m手前、ミノなんかは10mくらい離れたところにいた。
一人くらい目を覚まして手伝って欲しかったが…。いちいち運んだわよ。ええ。
……というのを語れるのは、ともかくまだしばらく先のこと。
眠れる美女5人…それはそれで、やっぱり心浮き立つものがある一方で、残り4人…マジで見つかるのか、現れるのか、いきなりかぶりつきが現れやしないか。
冷静になろうとするほどに、不安の要素は限りない。
その不安から逃げるように四方を見回しはじめるなり、視界に次のシルエットが現れてくれるのが救いだった。
あとから思えば、ワナかも、などとは思いもしなかったし、落とし穴もなかった。こういう、全く無警戒な時ほど、けっこヤバいものなんだが…。
そうして、次のシルエットに惹かれるようにいってみると、カベの中からにょっきり斜めに突き出されている脚…ルルアだ。
カベに寄りかかる姿勢で、股の部分から上が埋まっている。それも、ギリ見えないところから美脚が生えている、というアレだ。
そのまん前にしゃがんで、あとでひんしゅくを買ったレンダを思い出す。
どこに触れるか。
立ったまんまなら太もも、ヒザや足の甲に触れようとすれば、しゃがむことになる。
たとえバレずとも、疑わしき振る舞いは避けねばならん。…が、前にしゃがもうが横にしゃがもうが、触れるとなると、どうころんでも美脚礼賛スリスリポーズにしかならねーじゃねえか。
せめてもの敬意だ。脇に片ヒザついてそっと足の甲に触れた。ルルア...
渦巻くような感覚が流れ込んでくる。
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次回「ルルア」