第40話-4;りむ
▼登場人物
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。
ハチ(は :妖精族
竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。
ミノ(み :鬼娘
第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。
レンダ(れ :獣人
第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。
ルルア(る :ゴーレム
4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。
メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。
5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。
リム(り :ぬえ
歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。
キラ(き 魔人
魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー
ラウラ(ら 竜人
8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。
グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。
マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。
美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。
空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー
▼かぶりつき:敵の怪物
竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。
4.リム
それってウソだよね。
それってほんとのことだよね。
子どもの頃から、なぜかわかっちゃった。
いろんなことが。
だから、黙っている方がイイっていうのもわかったんだ。
ぬえの村は山奥と、森の中と、人里の近くにあった。
あたし達はあんまり枠を作らない。そのせいか鬼族や竜族、魔人とかいろんな種族とつきあっていた。半分獣のせいなのか、魔獣だからなのかわかんない。色々混じっているからなのかもしれないね。そのせいか、あたしはヒト族みたいに立って歩けたり、毛皮が脱げたり、村のみんなとはずいぶん違ったんだけど、不思議とそれでイヤな思いをしたことがないんだ。
「みんないろいろ」ってゆーのがお互いにわかってるってゆーのかな。ぼんやりしてるのかな。ただ、それって、もしかしたらすごく幸せな種族なのかもしれないね。
でも、人のことならわかるんだけど、自分のことって、わかんないもんだねー
人と同じで、ぬえの村にも個性があった。
木の上に住む群れ、洞窟に住む群れ、家みたいなものをつくって暮らす群れとか。
で、それぞれに何百年って歴史があるよ。
竜っていうのは、定住しているところに関わってくるみたいで、
ぬえの村によって、差し出すものが違った。
イケニエになるのは、尻尾のヘビの色とか、毛並み具合とか、それぞれの村独自のルールがあった。
なんでイケニエが必要なのかって?
みんな知らないか、言葉を濁す。あたしには「とりきめ」っていう言葉というか、そんなイメージが見えていた。
なんの取り決めなんだろうな。ただ、ずっと昔からの、竜との約束。
あたしの村では、一番能力の劣っているものがイケニエになるっていうのがキマリだった。
「みんないろいろ」っていうのがわかってるのに、役に立たないものが食われればいい。...ひどいよね。
でも、それを決めたのは竜じゃない。
それが、小さい頃からイヤだった。
みんなそれなりにすごいところがあって、みんなそれなりに苦手なものや、すごくないところがある。
変なのは、「すごい」のが目立つコもいれば、なぜか、「すごくない」のが目立つコもいる。
すごくないのが目立つコ…何年かの間にみんなの間でも、本人も、なんとなく「次はあのコ」
みたいな空気になっていく。
やだったな。
すごくイヤだった。
やめたらダメなのかな。
そう思うと、「竜との約束」って声が響く。約束って、なんなんだろう。
約束はやぶっちゃいけないもの。…だよね。
でも、なんのための約束なのか知りたいよ。
そしてまた、イケニエの日が近づいてきた。
あたし達はいろんな種族と交流がある。ヒト族とだって、こっちから敵対することはないよ。
他の魔獣たちや他種族とも、たいていは仲良くやってる。
でも、まれにぬえのキバやツメ、尻尾のヘビちゃんの目やキバを欲しがる人がいる。ひとっていっても、それはヒト族だけじゃなくて、他種族にもいる。
抜けたものとかを買いに来る、何かと交換に来るのは歓迎するけど、中には「狩り」と言って、殺して奪おうって言うヤツもいるんだ…。
戦闘になるのはごく稀だし、普通は撃退するんだけれど、いつの頃からかイケニエになる子が狙われるようになってた。
イケニエには呪縛の術に、外界からの魔法防御、物理防御をかけているけど、奴らは竜が現れる直前を狙ってやってくる。
ふだんは誰もがその場を離れているけれど、たまたまその現場を見た仲間がいた。
頭と、手足と、尻尾を切り落とされて その直後竜に。
つらくって…泣きながら話してくれた。私たちも泣いた。
密猟者…なんてかわいいものじゃない。
それ以来、私たちは幾重にも結界を設置し、空と地上から見張るようになっていた。
無事にイケニエがまっとうされるように。…すごく変だけど、イケニエになる子を、あんな目に合わすわけにはいかない。
何人もの仲間が怒り狂っていた。
しかし奴らは空間転移や、地中を自在に動ける魔物をあやつったりしてやってくる。
仲間を守ろうとしながら、密猟者もろとも竜に食われるものも出てきた。
約束って何?
密猟者…ハンター達は多くはただの一攫千金狙いや、食い扶持、遊ぶ金稼ぎだった。
許せないけど、裁きは私たちの領域外だもの。
最初は、所属する種族の村や町に引き渡していたけれど、やがて氷詰めにして遠くのぬえがいない土地に捨ててくるようになった。
氷が溶けたら、その土地でまた、同じことをするかもしれない。
やっつけちゃった方がいいと思うんだけど。
約束って何?
わたしは、その理由がどうしても知りたかった。
誰が、いつ、どうしてそんな約束をしたのか。もう、竜に聞くしかないよね。
捧げる日。
私は最初から竜にイケニエになることを皆に伝えて、護衛も、拘束の咒もない状態で竜を待った。やっぱり緊張したな。
ハンター達は、私たちの警戒がないことを察知すると安心してやってきた。
氷のかたまりが、わたしのまわりにいくつもできた。いうまでもないけど、氷漬けだよ。
そして、目の前に竜が姿を現した。
わたしではない
竜からそれを感じたところで、私の意識はとまっちゃった。
たぶん食べられちゃったんだろうな
わたしではない
あれは、約束のこと… 約束を交わした当事者じゃない、ってゆーより、約束っていう意識そのものを作ったのはわたしではないって意味に違いない。
伝えなきゃ。イケニエは、しなきゃいけないもんじゃないって。
どこかで、約束っていう気持ち以外のものがないくらいの「思い込み」になってたんだって。
やめても、たぶん竜は怒ったりしない。
みんなに伝えなきゃ!
目がさめたら、竜のお腹の中だった。毛皮を脱ぐとすぐ抜け出せた。
ヒモみたいな触手がいっぱい追っかけてくる。
走り回っているうちに、すごくいいにおいがしてきた。あっちだ!
ごはんだ ごはんがある!
「ごはんだー!」
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毛塊のまわりの壁面が白く氷結し、ぼっと吹き飛ばすようにしていきなり毛玉が飛びついてきた。
勢いで思いきり後ろにひっくり返った。
「てー!」
「あれー? なしー? 」
「ああ」
「ここはー?」
「わかんね」
小柄とはいえ、ぬえとはいえ、女の子を上に乗せている。うーん新しい体験というか、未体験のものはまだまだ尽きないものだな。りむは無邪気に、のぞき込むようにして顔を近づけてくる。
デカ目で、キュートな顔立ち。やっぱり可愛い。女のコだったら誰でもいいんだなオレは、と自分であきれるくらいドキドキする。もっとも、コレが逆の立場で、美形のお兄さんだったら、組み敷かれるのがどいつであろーともれなくドキドキするだろーぜ(笑)
全身、ふさふさの毛皮におおわれているのに、布をビキニ巻きにしている。
…ナシ…....見たんだね(あたしの記憶…)
ああ
出ようね。ここ。
ああ。
エリラは…ねてるね。あたしも、もうちょっと寝る。……がんばってね
落ち着き具合というか、悟り具合がハンパねーとは思っていたが。
キラやマチにひけをとらねえ過去を背負ってやがった…。
ハンターか。怒りに体が震える。目の前にしたら、まあ排除されるのはオレだが。
こっちにも、ろくでもねえ話はあっちと同じようなもんばっかりだな。キラが関わった王族と権力にせよ…
こうなってくると、竜は意図的に、目的があって食うのか、惰性でノリで食うのか。知性があるのかないのかわからなくなってきた。こういうのってのは、ほんとのバカか、こちらのはかりしれない知性と意味と目的や、覚悟と意志を持ってるかってところだが…もっと単純に、一匹じゃないのかもしれない。
竜の姿に関する記録がないだけに、個体差があるのかどうかすらわからない。
そんなことを考えながら、リムを皆を寝かしている場所に横たえる。
と、次はメイのはずだな。アイツは、背中だけ……あ、あった。近くてよかった。
レンダが嬉しそうにすわってたな。あの背中。
さて… ふう、メイは、地元の有力者のお嬢様っていってたし、領民のためにっていう話も聞いてたから、そんなに重い話を見なくてすむんじゃないかと思うんだけど…
横に片ヒザをついて、そっとその背中に手をあてる。起きな、メイ!
青と白、それに少しピンクのビジョンだ。
それほどじゃ…っというには、こいつもまた結構なイメージの奔流だぞ
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次回「メイ」