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第40話-3;キラ

▼登場人物

ナシ(な :異界もん

竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。成り行き上エリラの体に入っている。竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。


エリラ(え :魔導師 

17才らしい。蒼い瞳。ナシとともに1つの体を作る。あでやかなピンクのゴージャスヘアはナシのデザイン。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる。前向きでキュートな元気娘。異能は創造。


ハチ(は :妖精族

竜の中で再生していた生存者1号。明るく優しくほがらかで、スタイルもいい。ゴージャスな黄色い髪の毛。わりと天然。素直でまっすぐ。格闘技にたけ、異能は力持ち。


ミノ(み :鬼娘 

第2の生存者。かわいいメガネっこで、スタイルもいいプチグラマー。おっぱいが自慢。寡黙気味。かなりの切れ者。自称空き巣。特技は指弾、異能はミニマム。縮小と巨大化の魔法を操る。


レンダ(れ :獣人 

第3の生存者。蒼いロングヘアーのイケイケおねーさん。美人で、自称学者。どっかポンコツ。鼻がきく。大人の落ち着きとお色気が自慢。身体能力は高く、通常は2刀流。不死だってー。


ルルア(る :ゴーレム

4人目。落ち着いた口調、常に冷静。Hをもって全てを癒す…というコンセプトの元に作られた使命に忠実な癒しのセクサロイド。転移や治癒などの能力を持つが、その動力源はぎりぎり15禁という歩く18禁美少女。


メイ(め :驚くほど普通の子女…だったんんだけどねえ。

5番目に発掘された。赤銅色の肌に黒髪、均整のとれたプロポーション。常識人で堅いくらいのまじめなひと...だった。索敵能力を持つ。異能は物理・魔法攻撃無効がウリの万能繭。


リム(り :ぬえ

歩く「ぬえの擬人化キャラ」明るく陽気、元気で素直。物事やヒトの本質を見抜く力に長けている。雷を落としたり凍結魔法つかったりするうえに雲に乗って空を飛ぶ。


キラ(き 魔人

魔族とは違うが強大な魔力を誇る。スタイル抜群でセンスもいい超スタイリッシュなかっこいい系おねーさん。勝ち気で物知り、思ったことは何でも言うし思ったように動く自由人。空も飛ぶよー


ラウラ(ら 竜人

8番目に発掘された。明るくて元気でわりと口も減らない。

グラビティ系の魔法が使える。空も飛ぶ。いたずら好きのやんちゃ娘。


マチ(ま 天翼人 9番目の生存者。

美人でやさしそうだけど、性格的にけっこうあくが強い。

空を飛びます。凶悪最強のオーラの持ち主。どっか好戦的というか、ケンカ好きだねー



▼かぶりつき:敵の怪物

竜の体内で、エリラ達を襲ってくるモンスター。ホメオスタシスの一環か、白血球みたいなもんっぽいが、意外と散発。犠牲者の発掘後にはほぼ必ず現れる。


キラ


魔人は成長早くてさー、わりとすぐ一人立ちするんだ。

ただ、自由気ままの代わりに、生きる目的を探せ、自分で自分の始末はつけろ

みたいなのを、親や同族といる間に叩きこまれるってゆーか、そーゆー意識が身に染み込んでるね。あとは、行動原理があるとしたら自分の感覚や気持ちに従う だねー


同じ魔人でもホントにいろいろで、能力や属性もそうだけど、主義も嗜好性もバラバラ。

好きに生きろってゆーか、何でも自分で決めろ みたいな感じで、独り立ちしたあとの身の振り方もいろいろだね。ずっと個人で動くのもいるし、コンビやグループになってたり、コロニー作ってたり。

互いに旅人みたいな感じのつきあいってゆーの? 関係も多種多様だし、他種族に関わるのもアリだし、ほんとに生き方は千差万別って感じ。

いろんなとこいったり、いろいろやったり、ま、あえて言えば旅かな。行く先々がアジトになるって感じだね。居心地がよければかなり長いことそこに住むし、イヤだったら他のとこ行くし。

話が通じる相手なら、相手が欲しいもの探してくればたいていこっちが望むものも手に入るし。生活…ってゆーより、生きてくのに不自由はほとんどなかった。

そのせいかねー。不思議と冒険ってゆー感覚はなかったな。知らないところも、全部自分ちみたいってゆーのかな。楽しかったね。


ま、うっとーしいのはヒト族の土地概念かな。獣にも魔物にもどんな種族にもテリトリーとかなわばりって感覚はあるけどさ、なんかへんだよね。あいつら。

ま、よその種族の文化、居心地が悪きゃー近づかないってだけだったんだけどさ。


お気に入りのエリアがあってね。魔物と獣と鳥と魚だけってゆーのかな。木々や草もしげしげでキラキラしててさ。

景色も雰囲気もすごくなんか好きで、いるだけでほっとするところだったんだ。

ある日、そこに立ち寄ってみたら…。ん…思い出しても怒りで震えてくるんだけどさ、たくさんの生き物が、殺されて放置されてるんだよね。

わかる? 放置だよ。あたし達は、必要があるから殺して食べる。殺すからには、理由がある。当然、命を奪ったなら、その死を粗末にはしない。

無論、襲ってくる魔物はぶっ殺すし、それはもう、それ自体が関わり合いで、お互い納得してる関係性って思ってる。殺しちゃったヤツも運がよきゃ食えるし、ツメや歯や翼や毛皮、内蔵とかなんかでも持ってくと喜ぶところがけっこあったりするしね。

そんなのは自己満足だってゆー奴らにもあったけど、そいつらだって、ムダな殺しはしない。

でも、奴らは違った。


王族なんだってさ。王家のものが見つけて、王家の土地にしたんだってさ。

でかい船で、金ぴかの変なヤツらが何人もやってきて、手当たり次第動物も、魔物も殺すんだ。毛皮をとるとか、肉を食うとかじゃないんだ。狩って、売るんでもないんだ。

剣と、魔法の効果を試すとかいいながら、殺して楽しむ。

奴らにいわせると、それってムダじゃないんだって。

必要なんだそーだよ。

まー、よくある価値観の違いってことだね。なら好きにすれば? ってゆーことで、あたしはそいつら皆殺しにした。

 神が許した?

 我々の権利?

 畏れ多い王の系譜はそーゆー資格を持っている?

ヘドが出るよ。そーいう言いぐさってさ。


それでも最初は見のがしたんだよねー。脅かして、逃がしてやったんだ。

そしたら、軍艦で、魔導師と戦士が大勢やってきた。先頭に立って殺しを楽しんでたクソ王子と取り巻き連中もいたけど、一番後ろで結界と護衛に囲まれてにやにやしてんの。

あの、護衛とか戦士とかってのもアレで生活してんだよね。てわけで、王子の首引っこ抜いてやった。それでも向かってくるなら、人望のある王子だったってことだって思ってね。

誰も向かってこなかったね。

そしたら、命令するバカがいてね。そいつは坊主くさかったね。

不愉快なそいつも真っ二つにして、あとの奴らには帰んなって伝えたけど、命令で動く兵士ってのは気の毒だと思ったよ。痛々しいのは、生き残るわけにいかないってゆーへんなこだわりだったね。仕えてるのがあの王族じゃ、生き残ってもろくなことはないって感じ? やだやだ。

殺してやるのが情け、っていっても、こーゆー虐殺ってのはイヤなもんだね。神なんか知らないけど、さすがのあたしもはじめて冥福を祈る気持ちになったよ。不思議なもんだね。


 …そ、あたしはバケモノさ。


食うつもりもなく、売ることもできない人の死体を山ほどつくっちゃったね。まあせいぜい、魔物や動物や魚たちに食ってもらえれば助かるな。

別に、もーあのバカ王子と違うなんていわないよ。全然、楽しくはなかったけどね。

絵ヅラは同じ。


船のほうをどうしようかと思っていたら、知り合いの、海のおっさん魔物がひと飲みにしちゃった。あいつ苦労人でね、こーゆー場合、ヒト族は行方不明が一番いいんだって。

そーしておかないと、生活かかってるだけで命令に従う戦士や魔導師があとからあとから大勢くるんだってね。やだやだ。

結局、おっさんに借り作っちゃったんだけどさ。


で、魔人ってのはヒト族と縁が悪いのか、邪悪なヤツを殺すと肌の色が黒く染まる。

いわゆる罪のない、無垢なものを殺すと白く輝く。

あたしの肌は、黒く染まった。

ワリに合わないよーな、少しばかりフクザツな気分だったね。話には聞いてたけど、自分がそーなるとは思わなかったよ。


魔力を抑えるってゆーか、本来の力の半分以下…って状態にしておけば、もともとの姿と変わらない。黒は黒でかっこいーけどさ、ふだん使いの魔力や力なんてたかが知れてるし、全開にならなきゃいけない時には解放すればいいかって感じ。

ブラックスキンのままって、もーあからさまにヒト殺しですって宣言しているようなもんだし、出会った仲間にいちいち、ちょっとバカ殺っちゃってさーって説明するのも面倒だしね。

しかも、ヒト族の間じゃ黒い肌の魔人を悪魔っていってるんだよね。で、白いヤツを天使。同じ人殺しなのに笑っちゃうよねー。


それからだいぶたったころかなー。例の借りを作った海の魔物のおっさんがね、あいつ、例の王国のやつと色々交渉してくれてたそうなんだけど、どーゆー流れかおっさんの恩人が竜のイケニエになるって話しを聞きつけて、あたしにそいつを助け出してくれっていってきた。ご丁寧に、転移石まで見つけてきて。


転移石ってゆーのは、深海でとれるとか、空から降ってきた石の中にあるってゆー、希少な石。

それを割って、1つは自分で持ってて、貰った方がもう半分を噛むと、相手の方に瞬間移動するっていう代物で、あたしも実際に見たの初めてだった。

実験してもいーってゆーからやってみたけど、すごいね。


依頼内容は、イケニエの庭に飛び込んで、相手にそれを「がりっ」てやって貰うだけ。

黒肌化してれば、竜の目の前でも飛んで逃げるのはわけないって思った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜については、何度か見たことがあった。

ばかでかいわりに早いし、人を食うわりには邪気を感じない。変に静かな気におおわれた、不思議な存在。

魔人の里ってゆーか、あたしらはそーゆー固定した居場所がないせいか、イケニエって感じの伝統はなかったなー。コロニーによってはあるみたいだったけど。


で、当日。

くだんのイケニエは魚人系の戦士。戦士というには、うん、巨躯だし、戦闘力は高そうだけど、知性も高そうなじーさん。一目で賢者とか、そーゆー感じの気品と風格があるのがわかった。はめられたか、すすんで、とかじゃなきゃまずイケニエになんてならないタイプに見えたな。


魔法封じやら呪縛やら、まあ、自力では抜け出せそうにない陣っていうのは一目でわかった。これじゃ、転移石も無効化されるかもじゃん。

 「海のおっさん…クラエルに頼まれてきた。これ、かじって。あたしは、封印ぶっ壊すから」

 「(黒の魔人か…)…すまぬ」 

吐き出されるかと思ったけど、素直にくわえているところを見ると、はめられたか不覚、って状況だったようだね。地面に描かれた各種の呪陣を無効化していく。思ったより手間がかかる。竜の気配が近づいてきている。

よし! と思ったのと、魚の賢者が消えたのとほとんど同時に竜が目の前にいた。この距離でも、まだ楽勝!

  気がつくと、肌の色が黒じゃなくなっていく。竜の気を浴びて? 

  やばいかも。それが最後の記憶


   我ながらドジだねー。一生の不覚だよ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あちちちち! 誰よー一体? ん?どこよここ…

 く、動けないじゃん...

   なによ、バカみたいな思念がたくさん..


 うひゃーーーいったいどっからかき集めてきたのよーっていうメンツだねー

 さっき炎熱魔法やったのだれよ 

 ふーん…ゴミの魔導師か…その割には…て

 な、なに? あ、あんた、中に何飼ってるの?

   ……あんた、この世界のもんじゃないでしょ


 そう、ふつーだったらまずあり得ないメンツ。

 そして、異界のへたれ… 本能に忠実なようでいて、中途半端で、情けないヤツ。でもアイツは、信頼できる…


_____________________

岩壁(?)に両腕のヒジから先と、下半身が埋まっているあたりに光が走った。

ひび割れが走り、光が漏れる。ついで細かく亀裂が無数に走ると、それぞれまた光があふれた。

逆光にキラの美しいカラダが荘厳な陰影に彩られて現れる。体のまわりにオーラをまとっているのに、陰影は陰影でできるんだな。

まばゆいような光がさし、ゆっくり闇が戻っていくと、とん…という感じに、静かでかろやかに、キラが降り立った。

ちょっとアゴを上げて首をかしげ気味にして、こちらを見る。いつものキラのキメアングルだ。でかいつり目が、涼やかな眼差しを送ってくる。


 ああ、ナシくんか。無事だったんだ

  ああ

 エリラは?

  寝てる

 …みんなは?

  マチとラウラがいた。寝てる

 そか.. …じゃ、あたしも少し寝るわ よろしく…


オレが受け止めるのが当たり前のように倒れかかってくる。

…ビキニスタイル、流行っているな。

頭が顔の目の前だ。このコも、不思議ないい香りがする。

支えながら姫抱っこするのも、3人目だとだいぶ慣れた感じだ。

困ったな。ほんとに女の人を姫抱っこしている という気になる。さすがキラというところか。妙に感激しているぞ。オレ。


しかし…

普段はひょうひょうとさばけているようで、正義感の固まりだな。こいつも。

それも正義なんてもんが、つまるところぁ独善的な価値観念にすぎねえってこともわかってて。…俺、こーゆーヤツめちゃくちゃ好きだな。

ともかく、マチとラウラのそばに運んで、そっと横たえる。3人目...だ!

 やっぱり嬉しい。



ほっと息をついて、ふと目を上げたちょっと先に何かまた現れているのが目に入った。

…あれは……毛の固まり?


マチ、ラウラ、キラ、と来れば、コレが発掘された後ろからの順だってことは明白だ。あくまで、法則性を想定すればだが。とすれば、次はリムだ。

…どこで掘ったんだっけ?


そうだ、彼女は俺たちの食事に乱入してきたのが最初だ。

自分で目覚めて、自分で脱出してきた…。

そういえば、俺たちの前では一度も毛皮をまとった姿にならなかったんじゃないか?


近寄ってみると、カベから結構長い毛の敷物(笑)が出ている。尻尾がでている。…ヘビだ。パクちゃんか。このコもねてんな。リムに間違いなさそうだ。

そこまでの距離は、およそ3mくらいだが…3人をひとりずつそばに運んでくる。

いちいち抱き上げるんだが、みんなよく目を覚まさないものだ。



リムは頭を外に出して、カベの中でネコみたいに丸くなっているのか。ともかく頭っぽいあたりに触れてみる。

剛毛っぽい印象のわりに、繊細な毛質だ。触ると気持ちがいい。

手のひらを通じて、細かい色の無数の断片みたいなビジョンの嵐が吹き込んできた。


__________________

次回「りむ」


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