第9話-2日目-1 ハチの話
登場人物(笑)
ナシ(な :異界もん
竜への生け贄としてこっちの世界から召還され、はかない命を閉じたあと竜の腹の中で再生した。エリラの魔法でむちむち萌えもえ美少女キャラの体を得るが、所有権はほぼエリラ。
竜の肉を掘る力と、仲間の能力を増幅する「増幅」の異能を持つ、ちょっとHな絵師もどき。
普段は念話で語るが、表に出てくるときは金色の瞳になる。
エリラ(え :魔導師
17才らしい。蒼い瞳。竜に食われて中で目玉として再生していた。
同じく目玉として再生したナシとともに、1つの体を作る。ホントの姿は謎。ナシのデザインしたグラマラスボディにピンクのロングヘアはまんざらでもなさそう。4大の魔法ほか、けっこー色々つかえる勝ち気、前向きでキュートな元気娘。
異能は創造。メンバーの衣装を自在に無からつくってしまう魔法のお洋服やさん(笑)
▼2日目の朝
「あれ? 寝ちゃってたんだ あたし…」(は
そっかー…昨日、エリラ..とナシくん…か何か不思議..
zzz(横で寝てるエリラ)
これから、どーなっちゃうのかな。どーしたらいーんだろー…。昨日のこと、エリラ、ナシくん、ご飯 そして…こんな寝床まで…。なんか、いろんなことが夢みたいに、不思議な気がする…でも… 敷物や、狭いなりにもまわりを囲う空間、そして、横で寝ている女のコ。かわいいよね、エリラ…。
じっとしていると、なんかたまらなく不安になってきそうで、ハチは昨夜のことを思い出していた。
▼ 昨夕:食事のあと
「さて、食べた食べたー」(え
「ごちそうさまでしたー♪ 」(は
「なしくーん 今日どのくらい歩いたー?」(え
「…旅にでたその日に…数時間どころか2~3時間のところに、生存者が埋まってるとは思わなかったな」(な
「そだねー」(え)
「そーなんだ」(は
「実はそーなんだよー さあ、生存者捜しの旅にでるぞー! ってでてきてー」(え
「2~3時間 距離にして…たぶん数キロでハチがいた」(な
「あたしたちばかみたーい あははははは」(え
「いや、近場にいてくれてよかった この中、いくらエリラが魔法使えても、たったひとりってのは心もとない」(な
「あたし、役に立てるかな… あたしがいても、たったふたり」(は
「二倍だよー、二倍! すごくうれしーよー!」(え
「そお? ありがとう」(は
「とゆーわけで、お腹もいっぱいになったことだしー、ねよっか」(え
「はい?」(は
「どれにしよーかなーっと」(え
と、ポシェットの中をあさって、果物とかいろいろ並べてみる
「…それ、小さいのにたくさん入ってるねー さっき見た時も驚いたけど..」(は
「あーこれ? まねー。コレの説明はまた明日ね! あ、これなんかいいかな」(え
手にとったのは、オレンジふうの実だ 割れてて、中味も半分くらいだ。
「たべちゃお。うぇーうぇー、わちわをあえゆー」(え
「はあ?」(は
食ってから言え(な
「ごくん ごめん、ナシくんとは声出さないでしゃべってるからついー。ハチも食べる?」(え
「ああ(笑) じゃちょっとだけ…」(は
ちょっと手を出してつまむしぐさが可愛い。
「でわー! 今日はこれをおうちにしましょー!」(え
ま、いわゆるボールを真っ二つ。ドーム型だ
「えっと、何を?」(は
「あ、ナシくん、たのむねー! それー!」(え
光が包み、オレンジ色のドームが現れた。高さは立ったエリラのアゴの下くらいだろうか。
通路のど真ん中だが、両脇のカベは、人がまあ通れるくらい開いている
「わー なにこれー!」(は
「カベに寄りかかって寝るより、気持ち屋根がある方がイイでしょ? ナシくん、トビラ作って」(え
ああ。 …これ意外としっかりできてるぞ(な
「じゃあ、刃物」(え
右手の手甲が伸びて、ナイフになる
「わーそんなことも」…」(は
屈んで入れるくらいの穴が開く。床はむき出しだが、悪くない空間だ。
「あと、敷物ね~」(え
これは、ポシェットに入れていたお気に入りの簡易マント兼、敷物兼、毛布。出発前に、気の向くままにいくつか作って持ってきていた。
「別に寒くないと思うけど、やっぱ寝るのもムードが大事だよねー」(え
「そーですねー」(は
受け取った毛皮に嬉しそうにほおずりしている
「きもちいい♡♡ エリラさんすごいー ありがとー」(は
「いやー、それほどでも。中、並んで寝ていいよね?」(え
「もちろん!」(は
「あ、エリラは寝相が悪いから、蹴ったらごめん」(な
「そうなの?」(は
「えー あたしそんなに寝相悪くないよー」(え
「思念の方で、俺何度も蹴られてる」(な
「あれ? そうなの?」(え
「し、思念って… えっと…?」(は
「ま、いーからいーからー」(え
「あの、あたしもあんまりその…寝相いい方じゃないから…その」(は
「気にしない気にしない! じゃおやすみー!」(え
「おやすみなさい」(は
(なんか…信じられないようなことばかり… 眠れるかな..?(は
エリラはいつものように速攻で眠ったようだ。ハチにもう一声かけようか迷いながらようすをうかがっていると、ゆっくりそばで横たわる気配がする。こ…こーいうのはじめてだ。こんな可愛いコの横でというか… なにより、人の気配、女のコの肉体がしなやかに横たわる動きの存在感。生まれて初めての経験だ。興奮して一気に目がさめるような気がしたが、ほんとに俺も疲れていたのだろう。あっという間に眠りに落ちていた
のし
何かが乗る揺れがして、俺は目がさめた。胸の上に手が乗っている。脚の上にも重みを感じる。足が乗っているようだ。そっと横を見てみると、気持ちよさそうに、眠っているハチの顔が目に入った。可愛い口が少し開いている。しあわせそうな、優しい寝顔だ。その寝顔を見るだけで、なんか安らかな気分になった。俺は再び眠ってしまった。
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朝:あらためて旅に出て2日目(笑)
「おはよう …眠れたか?」(な
「あ、おはよーございます …ナシさんですね」(は
「ああ」(な
小首をかしげて屈託なく話しかけてくる。自然な動作が、不思議なくらい愛くるしい。
「なんか悪いな、俺ら」(な
「いえ、そんな-。それより…1つのカラダを二人で使うって、大変じゃないんですか?」(は
まあ、当然の疑問だ。他にも聞きたいことは山ほどあるんじゃないかな…
「そりゃま、ふつーじゃないってか…ていうより、……エリラだったらどーってことないよーっていうだろうな」(な
「………(わあ…)信頼してるんですねー」(は
「てか、ま、なりゆきかな。あんなやつでも、結構気ィ使わせちゃってるしな」(な
「やさしーんですね」(は
ほがらかに、歌うようにしゃべるって言葉があるけど、まさにこんなカンジなんだろうな。コルセットふうのボディスに、あふれるようなおっぱい… うーんマジ柔らかそうだ。どうしても目がそこに吸い寄せられる。
「どーしましたー?」(は
ずいっとのぞき込むように顔が迫る
「いや」(な
この近さで、このコのアップは… 無邪気、天真爛漫って、こーゆーことか。なんだろう。一緒にいると、やすらぐっていうより、なんか優しい感じか…甘い香りがするような気さえしてくる
すごいよね、はちって(え
「うわ」(な
「ど、どーしました?」(は
「いや、エリラが起きたみたいだ。代わるな。じゃ、また あ、今日もヨロシク」(な
「はい♡」(は
べつにいーのに キミも苦労性だねー 見かけによらず。ま、キミのいーところだけどね(え
…////(な
「おはよーっ!」(え
「あ、エリラさん、おはよーございます」(は
「敬語じゃなくていーよ エリラで」(え
「あ、うん」(は
「眠れた?」(え
「おかげさまでぐっすり!」(は
「あたし蹴らなかった?」(え
「うーん ぜんぜん! あたしこそぶったりしなかった?」(は
「あははは ぜーんぜんそんなことなかったよー!」(え
よかったー あんな狭いところで…しかも起きたら急にこの世界、心配したよ(え
俺もだ。まあ、心細いのはあると思う(な
(昨夜の寝相のことは黙っとこう)
なんかあったんだー(え
聞かぬが花ってやつだ(な
「お話中?」(は
「あ、うん、ごめんねー …ってなんでわかるの?」(え
「なんとなく 二人のムードって、なんか一人しか目の前にいないのに、すごく仲いーなーって」(は
「そんなことないよー いっつもけんかばっかだし」(え
「そーなの?」(は
「そーそー 口は1つしかないのに、食べたいものが違ったり、あたしがブラがゆるいからすこし締めたら、きついとか…。あたしの体なのにさー!」(え
「あのーボクの体では..」(な
「わ びっくりしたー!」(は
「いきなりでてこないでよー」(え
(笑)
「ま、こんなかんじ!」(え
「あはは(汗) でも、そーゆーのもなんかすてきかなーって」(は
「代わる? 代わってあげてもいいよ~?」(え
「え、ええーそれは..!」(は
おまえ、わざとだろ(な
にししー(え
「で、できるんですかー?」(は
「へへー、ムリ」(笑)(え
「なんだあ~(ほ)」(は
軽く食事をして、俺たちはそこをでた。昼も夜もない洞窟というか、トンネルの中、なんとなくケジメが欲しかったのかもしれない。
「あっちいってみる?」(え
「そーですね?」(は
かわり映えのない道が続く。ものの数分もたたないうちにエリラが口を開いた。
「ねえ、そろそろ聞いてもいいかな? やっぱりハチもイケニエになったの?」(え
「あ、それは..その」(は
「あ、いや話にくいってゆーか、話したくなかったらムリに話さなくていーから」(え
「いえ」(は
急に、顔が曇る
「お話ししますね!」(にこ!) (は
「じゃ、ちょっと座ろうか …イスか、敷物いる?」(え
「あ、うん大丈夫!」(は
エリラはあぐら、ハチは、いわゆる横ずわり。太ももとふくらはぎの筋肉につい目が行くが、いまはそんな時じゃない。ハチの顔を見ると少し目を伏せて、ちょっとなんか考えているようだった。そして、ハチは話し始めた。
「うーん あのなんとゆーか…あたし、竜のイケニエになってる人を助けて、…代わりにたべられちゃったってゆーかー」(は
「えー?!」(え
「その…盗賊って、悪い人なんですけど、あたし子どもの頃…迷子のころ、おぶって家まで連れてってもらったことがあったのを思い出して…。で、どうしてもやっぱり見殺しになんてできなくて」
話を聞きながら、えりらの心が震えているのが伝わってくる。いつも暴虐武人なくらいマイペースだが、同時にとても素直で、純粋な心の持ち主なのは一緒にいてよくわかっていた。
「竜が現れて、とっさに飛び出して、…バカですよね、あたし!」(は
笑顔で話しているが、ムリしているのが伝わってくる。小さな肩がふるえている。
なんで、笑顔を作るんだよ… (な
悔しさでも、悲しさでもないね… これって、残された人を想ってる…(え
「ステキだね」(え
「え」(は
「好きだよ。ううん。大好きだな ハチみたいな人」(え
「エリラ…」(は
「誰にもできるコトじゃない。ハチのご両親も、きっと誇りに思ってると思うよ」(え
「…そうかな バカな娘って…」(は
「親ってさ、それでもハチのやったこと、理解してくれていると思う。それに何より、あたしはハチみたいなコ大好き! たぶん、コイツもね」(え
自分の胸を親指で示す(え
ありがとよ。さすがにわかってんな(な
とーぜん! ブイ(え
「う…わーん」(は
「あ」(え
「わーん うわああーん」(は
横にまわって、エリラはそっとハチを抱きしめてやった
気がすむまで、泣くといいよ..(え
エリラも涙を浮かべている いいコだ。ほんとに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「落ち着いた?」(え
「うん」(は
「ごめんね、つらいこと話させちゃって」(え
「いえ… 私こそ..ごめんなさい」(は
「いーっていーって! ハチが竜に食べられちゃった理由はよくわかった。で、次は、なんでこんなかで生きてたのかっていうか、あんなところにいたのかっていうのが..」(え
「それは…わかんない。目がさめたらカベの中に埋まっていて…」(は
「そっかー..。それともうひとつ。あの力。竜の触手を引きちぎる力! あれはあたしの魔法でも通用しない。ま、ナシくんは特別ってゆーか、竜の肉を掘れるくらいの不思議な力を持ってて、アレにはあたしも驚いたけど…ハチのアレは…ふつーは無理だよ」(え
「…いわなきゃだめ?」(は
「あ、ああ、ムリにいわなくたっていーけど…」(え
代われ(な
ナシくん?(え
「ふう…。……ハチ、俺たちはよー、別々に食われて、竜の腹ン中で出会ったんだ」(な
「へ!」(は
「それも、この体じゃない。二人とも、目がさめたときは1コの目玉だったんだ」(な
「ええええ~?」(は
ナシくん! その話は刺激がつよすぎ…(え
「バカな話さ。信じらんねーだろ。目玉だぜ。それなのに、俺たちは意識があって、心があって、この中で生き残ったのさ。そして、エリラの魔法の力で、この姿になった。ありえねーだろ?」(な
まーたバカみたいにニッとしちゃって(笑)(え
「そん..な そんなことってあるの? 信じられない..」(は
「で、いつかは、それぞれの体にまた、もどりたい。でも、とにかくはこん中からでなきゃ何も始まらない。それで、竜の腹ン中の大冒険が始まったってわけだ。そして…」(な
じっとハチを見つめる 金色の瞳が、ゆっくり蒼紺にかわっていく
「そんで生存者はっけーん! ていうのが、ハチだったんだ!」(え
目をぱちぱちさせ、そしてうつむくハチ 目に涙を浮かべている
あれ? やっぱり刺激が強すぎたかな?(え
すまん 他に思いつかなくて…(な
いや、遅かれ早かれ伝える必要はあったことだから。でもキミ、自分のことは何も話さないで全部あたしの力のせいみたいに話すなんて、かっこよすぎだってーの!(え
いや(汗)複雑になるだけだから かんたんなほーがわかりやすいし(な
まーたまたー この…(え
「わたし…!」(は
顔を上げたハチが、ちょっと暗い表情が、ぱあっと明るくなった。きゅっとむすんだ唇が笑みを浮かべ、キラキラ光る瞳が、まっすぐこっちを見つめている。
「わたし、妖精族なんだ!」(は
今から思えば、この時からハチの口調がかわったんだ。くったくのない話し方に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えー? 妖精族っていったら…」(え
ハチは、ふっと耳に手をやった。耳の先がとがった形に変わっていた。
「マジ…? でもその耳、確かに…いや、しかし…」(え
どーしたんだ?(な
妖精族ってのは、羽をもっているはずなんだ。こーんな大きな..(え
「羽は? ハーフエルフ…でも、小さな羽は残るはずでしょ?」(え
「私、魔精霊と邪精霊の呪いを受けて生まれたの。だから、羽がなくて、空を飛ぶ力はないんだ。そしてなぜか、みんなより腕力が…その…とーっても力持ちなの!」(は
「魔精霊と邪精霊の呪いを受けた妖精は、輝妖精、稀妖精とかっていわれていて、歴史上でも学術的にもほとんど記録がなかったと思う。超レアだよ…。あたし、本物に合うとは思わなかった! よく追放されなかったねー てか、よく生まれてすぐ殺されなかったね」(え
「うちの王国はみんなのんびりしてるのー あはははは」(は
イイ笑顔で笑うな…(な
しかしそりゃ、わざわざ二重の呪いをかけた方としちゃたまったもんじゃないわ…(え
「けっこ、苦労したんじゃない?」(え
「うん。小さい頃から、ほ乳瓶をかみくだいちゃったり、おもちゃの柄を握りつぶしちゃったり、はいはいして行った先で、カベぶち抜いてそのまま歩いて行っちゃったり…したんだってー」(は
「なーるほどー それならいろいろ納得がいく。竜の触手を引きちぎったことも、竜の目の前から盗賊を助けるスピードと、…たぶん、バインドでしばられてたはずだもん、その盗賊…」(え
「あは 魔法陣のある地面ごと引き抜いてあっちにほおって…良しって思ったらがぶって…」(は
「………」(あぜん)(え(な
すまん、代わってやりたいタイミングだが、俺の手に余るわ(な
「びっくりしたでしょ?」(は
「びっくりした。いやー、いやーちょっと感動してるよ。あ、握手してください いやー夢のようだあ」(え
「やだもーエリラったらー そんな特別なもんじゃないよー///」(は
「特別だよ!」(え
「え?」(は
「竜に食べられて、それでいていったん吸収されたにもかかわらず再生したってこと。可能性としてはあり得るんじゃないかとは思ってたけど、まさかこーゆーことだったとはねー」(え
「そー?」(は
「ぶっちゃけ、かけられていた呪いが、ハチの場合は加護になったってことだ!」(え
駕籠か(な
アホ(え
「邪精霊の呪いは、怪力とかの異能を与え、 魔精霊の呪いは、あるべきものが失われて、集団の中では生きづらくなる呪い。いわゆる、異端者をつくりだす。どっちに転がっても、普通の集団の中でははじかれる。だから、それがわかったら即、生まれなかったことにするぐらいの方が当たり前なんだ。それに、そうでなくても、いずれ自ら命を絶つとかも多い。この呪いは、そーいう点すっごく陰湿な嫌がらせなんだ。
それを重ねがけって、念入りにもほどがあるけど……愛ってすごいね」(え
「ねー、怪力でないのもあるの?」(は
「うーん、どんどん太って体重がものすごくなるとか」(え
「いやー!」(は
苦笑(え(な
「あとは、目があっただけで相手が惚れちゃうとか、どっちかっていうとサプライズ系で、単独なら解咒もわりと楽な呪いだよ。ただそのかわり、他の魔法と重ねがけされちゃうと、どーしよーもないっていうのも特徴で…」(え
「うわー」(は
「だから、それがわかってるから最初にもう、終わらせちゃうっていうのがわりとフツーなんだよ。悲しいけど。当然、記録も記憶も闇から闇へ。だから、ハチがいるっていうこと自体が、もうすごい奇跡なんだ!」(え
「くわしーんだね」(は
「まねー これでも一応、魔導師だから」(え
「……そっかー だからあたし…」(は
「ハチ?」(え
「二人に会えたんだね!」(は
花が開いたような笑顔だった