第8話 ハチ
「血で沐浴? すごいね~」
声にふり向くと、半身を起こして、きょとんとした美少女がこちらを見ていた。胸もとにシーツをあてがったポーズに、妙に品がある。むき出しの肩が妙につややかで、無邪気な表情と対称的に、大人の色気がある。
「あ、起きたの~?」(え
「ごきげんよう あの、はじめまして…私、ラギンパイリンレンド36世の子、ハルミント・フェイン・ハチと申します」
すっと姿勢を正すと、シーツをうまくまといながら優雅に会釈のポーズをとった
長いな(な
ながいねー(え
「うーん ハチって呼んでいい?」(え
「いーですよー」(は
想像以上に素直だ。そして、笑顔も可愛い。
「あたしは魔導師のエリラ! それとー…ビックリすると思うけど、この体には間借りしてるもうひとりがいて…」(え
おい、いきなり紹介するのか?(な
いーんだよ あとでパニックされるのもめんどくさいしー(え
「は?」(は
「ナシちゃんっていうの ちょっと代わるね!」(え
目の色が変わる
「あ、ども…。俺は…まー、ナシっていわれてる。よろしく…お願いします」(な
「は、はい、こちらこそ」(は
ちょっとーなに照れてんの?(え
しょーがないだろ、こんな美人のこんなシーツ一枚の美少女なんていままでみたこともなかったんだから!(な
目の色が戻る
「ごめんねー、驚かせちゃって…」(え
「い、今のは一体…」(は
「まー、話せば長くなるんだけど、こーゆー感じなんで、これからヨロシクー」(え
「あ、わかった! 二重人格ですね?」(は
「ま、まー厳密には違うけど、そんなよーなもんかな?」(え
「だったらわかります 書物で読んだことありますから~ でも、お二人とも、声も違うし、目の色も変わりますねー…」(は
「わー、気づいたのー? すごいねーハチ!」(え
「え、いえそんな あ、さっきの、ナシちゃんさま、ですか? あの方の時は目の色が金色になりましたし、その…お声が」(は
「あたしのほーがかわいい?」(え
「いえ その…なんかもっとかわいいっていうか…ごめんなさい!」(は
ふっふっふ(な)
うるさいなー(え)
顔のパーツがでかいから、表情がくるくるかわるのがすごい魅力的に響いてくる。話し方も、なんか音楽的だ
「ハチの話し方は音楽的だーってナシがいってるー」(え
「え? そう…ですか? そんなー」(は
うわー マジで照れてるよこのコ! 女のあたしが見てもこりゃかわいーや(え
だよな 何気ないしぐさにも、なんか気品があるし(な
「黙っているときは、お二人で会話してるんですか?」(は
「あ、ふつーでいーよふつーで。そう。時々黙っちゃうから、ごめんねー」(え
「いえ、べつにかまいま…かまわないよー!」(は
くああー すなおでかわいー(な
いちいちうるさい!(え
なんかまん丸目玉で眼をぱちくりさせていても、口もとは笑顔になってる。
何より笑顔になるたびに、空気が、明らかにふわっとやわらぐ。なんか、人をなごませる…っていうか、こんな人がいるのか…
ふわー すごいねー あたしもこんな人初めて おどろいたー(え
「それでー、その、エリラさん」(は
「えりらでいーよ!」(え
「エリラ達は、どーしてこんなところに?」(は
「うーん けっこー長くなるんだよなー。ハチの話も聞きたいし」(え
ハチのシーツがちょっとはだけて、豊かな乳房が見える
「あ、ごめーん まだハダカだったねー」(え
「あ、やだー これはその って、えっとー」(は (真っ赤になっている)
うーん、可愛い。なんか表情もしぐさも全てが新鮮で(な
いちいち反応してんじゃないわよ(え
しかたねーだろ だいたい、おまえがいても俺たちひとりだったんだからよー 初めての人間だし 女のコだし(な
わかったわかった! そりゃーもっともだ! でも黙ってて! 先に進まない!(え
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.服をつくろう
「先ず服をっくんなきゃね! どんな服がいい?」(え
「へ?」(は
「だからー 服だよ服! パンツとかブラとか、ブラウスがいーとかミニスカートがいいとか、好み聞かせてくれる? 特にないなら、あたしが勝手に見立てて上げるけど!」(え
「こ、こんなとこにお洋服やさんが?」(は
「ううん あたしがつくるの」(え
「えー すごーい どこに工房が?」(は
「あ、いやその、まほーでちょちょって」(え
「ああ …え~~~~魔法~~~! 使えるんですか-?」(は
「そ、そりゃまあ、一応魔導師だし」(え
「いーなー あたし魔法はダメなんで… 火とか水とか出せるのー?」(は
「そ、そりゃまあ」(え
「わー! みたいみたいー!!」(は
「そー? そんじゃちょっとだけ…」(え
空中に噴水から水で輪っかを作り、その中を火の玉がくぐったり
水玉と火の玉がワルツのように踊ったり
「わー すごーい! きれーーーー!」(は
思わず立ち上がって、両手の指を絡めて組んで、胸の前に。当然、シーツははらりと足元に落ちた
ぶ…(な)/ま、まんがだったら鼻血吹くシーンだ
「あこらー! 前まえ」(え
「へ? あ、きゃー」(は
あわてて座り込んでシーツを抱きしめる
うーん 愛すべき天然だな(な)
天然だねー(え)
「えへへー 女のコと二人っきりだからっていうか…」(は
「ナシくん、男だから」(え
「え?」(は
「男だから」(え
二度いわなくても(な
「え~~~~~~~~~~~~~?」(は
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃあ、女の子のカラダの中に、お、男の人とー?」(は
「ま、結果的に」(え
「だ、大丈夫なんですかー?」(は
「しかたないんだよ。それに、悪いやつじゃないし。そんなに..」(え
おや? めずらしくテンション低めってか… 照れてる?(な
………(え)
「まあ、とにかくね、そんなカンジだから…ちょっと抵抗あるかもしれないけど…」(え
「わかりました! いい人なんですね?」(は
「え、あ、まあ」(え
「ならいいです!」(にっこー)(は
あきれるというか、もはや唖然として、俺たちは彼女の笑顔に見とれていた
「で、どんな服がいい?」(え
「そーだなー」(は
「とりあえずつくってみよっか」(え
「え、できるのー?」(は
「うん。とりあえず、そーだなー ナシくん、キミのイメージは?」(え
「は?」(は
「あ、ごめん、あいつ意外といーセンスしてるから」(え
「そーなんだー! ナシくん、よろしくねー!」(は
つくるのはあたしだけどさ(汗)(え
ファッションはエリラの専門だろ、俺に振らなくてもよかったんじゃ…って、気ィつかってくれたのか(な
まね-。少しずつ、ハチにも慣れてって貰った方がいいから(え
「じゃとりあえず、こんな感じでどっかな?」(え
白とピンクのコルセットアレンジ、同じくピンク系のひらひらしたミニのカクテルドレス。一応、白のアンスコ。髪も、軽く紐で後ろで束ねている。
「うわー! ステキ!」(は
「せっかくだから全身見るー?♡」(え
姿見が現れた
「え? わー! ステキステキ! ステキすぎるー!」(は
かろやかに屈んだり、まわってみてり、楽しそうにしている姿は、見ているだけで楽しくなる。
「気に入って貰えたかなー?」(え
「うん! すっごく!」(は
「こっから先、着ていて気がついたことがあったら言ってね。靴なんかもあたしの感覚でサンダルにしちゃったけど、ブーツの方がいいかもしれないし!」(え
「はい! ありがとうございます! ナシくんもありがとー」(は
ぴょこんっと頭を下げるしぐさがいちいちかわいい 素直で明るいっていう点ではエリラも天然に明るくて素直だけど、このコはまた全然違う素直で明るい魅力の持ち主みたいだ。わざわざ俺にまで声かけてくれるなんてな。本質的に優しいコなんだだ
「で下着なんだけどさー、アンスコふうとスパッツふう、どっちがいい?」(え
「あんすこ?」(は
「えっと、今はいてるヤツ」(え
「すぱっつは?」(は
「こんな感じの」(え
「うーん…アンスコのほうがカワイイ! でもスパッツも、お尻が引き締まって動きやすいから捨てがたいけど」(は
「…じゃー、ミックスした感じね♪」(え
「わ! これいい! ありがとーエリラ-!」(は
抱きついてきた。細い腕が首にまきついて、ほっぺたがくっついた。おっきなおっぱいが押しつけられている。重いのに、軽い。コレが女のコか…
イロイロと新鮮だねーナシくん(え
…すみません///(な
「あ、あの、これもらっちゃっていいの?」(は
「いーのいーの! 気にいって貰えたんならなによりだよ!」(え
「ありがとー! うれしい~」(は
「あとは、髪を留めるリボンとか、なんか欲しーものがあったらいってね」(え
「うん!」(は
「それじゃ、いろいろ聞かせてもらおうか…と思ったけど..」(え
「あ、あのーひとつ聞いてもいーですかー?」(は
「なに?」(え
「お、男の人と1つのからだって、あの えっと…」(は
「?」(え
「あの、どうするんですか? その…あの.. お手洗いとか...」(小さな声)(は
「あ、それー? だいじょーぶだいじょーぶ! 一時的に死んでくれるの」(え
「えー?」(は
「死んでません 気を失ってるだけです」(な
「ですよねー(汗) って、うわー、ふたり同時にでてこれるんだー」(は
「あからさまにへんなひとになるから、あんまりやらないけどねー」(え
「ですよねー はは」(は
「ま、なんでも気になることがあったらいつでもいってね♡」(え
「うん ありがとう!」(は
スリプルが独立自我に効くとは思わなかったよ なんか新発見の連続。論文か研究発表が将来的にできるな(え
そんなことも考えてたんか…(な
「ねーねー、ところでさー、おなか減ってない?」(え
「あ……実は…おなかぺこぺこなのー」(は
「そっか じゃ」(え
必殺のポーチから食材を取り出しては並べてみせる
「うわー ど、どーなってるのその袋!」(は
「ま、いろいろあってね♡ さ、たべよ!」(え
「いただきまーす!」(は
くったくなく食べ始めるふたり。こっちに来てもう随分長いことエリラとふたり(長いこと? いーんだ。なんかそんな感じなんだから)。…ふたりだったけどやっぱり1つのからだというか…。ほんとの二人っていうのは、また随分楽しくて、心強いものだ。実際、気持ち的にというか、人格的には3人になったんだしな。