第7話-2 生存者?
<前話より>
それからほどなく、大きくカーブした道沿いに歩いて行くと、トンネルの途中に、木の根っこのようなものがつきだしているのが見えた。
おい、アレなんだ?(な
何かあるね!(え
俺たち(1人なんだが)はそこに向かって走り出していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
手だ(な
「手だねー」(え
女の手だな(な
「女の人だね~」(え
…なんか予想通りって顔…でもないか..(な
「まね…」(え
なんとなく、とびはねたいよーな、まだ早いよーな…という気配だ。珍しく考えているようだ。
「うん。やったーっていうには、ちょっとまだ…早いかな…」(え
「掘る?」(え
ああ…(な
赤黒く、カベの色と同じ色になっている 同化しているのか…
どーかしてる …あたしたちどーかしてるよね(笑)(え
…へんに言い得て妙だな(な
ふたりとも軽口は叩いているが、けっこー緊張している。鼓動が早い。えりらがそーっと手を出して、ちょん、ちょんとカベからつきだしている手の指先に触れてみる。わ!といいたいところだが、さすがの俺もその気分じゃない。
…これ、いきなり握ってきたら怖いな(な
ちょっとー、怖いこと言わないでよー(え
慌てて手を引っ込めて、俺たちは少し後ろに下がった。
すぐにも助け出したい…。いや、腕の先がちゃんと埋まっているのか、腕だけのモンスターなのか、いろんな可能性や危険性が頭の中をぐるぐるする。なんにせよ、焦ってろくなことはない。突きだした手から後ろに下がると壁に当たったので、そのまま腰を下ろした。
どう思う?(な
「うん」(え
ゆっくり、確かめるようにエリラは話し始めた。
「…この世界にはさー、いろんな国や文化がある。で、世界中のあちこちで、いろんなものが竜に捧げられている。そして、竜は供物として捧げられるものは何でも食べる」(え
ああ あの胃を見てたらわかる。捧げ物ばかりじゃあないようだが(な)
「うん。そりゃあ、ね。捧げ物、供物は、ケガレなき処女、邪悪な魔女、悪党や犯罪者、そして異端、異能者 ある時は神聖なものとして、またあるところでは刑罰・処刑として、或いは見せしめとして、いろいろな人間が捧げられてる。キミもそうだったよね」(え
…ああ(な
食材集めの時、時々明らかに人間とわかっているのを目にするときもあった。俺たちは、どっかのパーツでも残ってくれることを祈って、できる範囲だったが、丁重にあつかったものだ。蘇生できればっていう、涙を浮かべたエリラの悔しそうな思いが忘れられない。
そういえば、おまえはどうして食われたんだ? やっぱり、なにかしでかしてイケニエにされたのか?(な
「ちょっとー、あたしをどーゆー目で見てるのよ-!」(え
あ、すまん(な
「いやなにね、…うっかり ドラゴンの見学がてらキバか鱗でもあればとおもってうろうろしてたらぱくって。いやー、まいったなー」(え
………らしいといえば、らしいな(な)
「目玉1つで気がついて…てゆーか、キミが来るまでずーっと考えていたんだ。ほかにも、吸収されてない人がいるんじゃないかって」(え
<そこでだ! 仲間を捜そうと思う!>
アレにつながるわけか。他にも確か…感覚制御の話の時だったか...
<最初からここで生まれたものとか、ここで再生すれば、最初から適応できてるだろうけどね>
<…ここで再生すれば? なんか意味深というかまだなんか裏か、奥があるみたいだ>
<ほー、いーカンしてる。でも、それはまだ可能性の話だからまた今度ね」>
「よく憶えているね。そーいうこと。いったん吸収されて、そこから自分のカラダを自分で再生しちゃうよーな…キミのオタク文明の中にあるみたいなことも、ありうるんじゃーないかなーっって!」(え
オタク文明(笑) まあ、何でもアリだからな…(な
「よし。じゃ、掘ろう!」(え
え(な
「掘り出すの!」(え
手…てだけってことは?(な
「とーぜん、それもありうる。でも、もしかしたらっっっってねー」 え
そういいながら、エリラは手の元に近づくと、手をふりあげた。
ぐし
カベに手を突き刺して掘ろうとしたのか、手がカベにはね返される。
「いったあ~~~~~!」(え
なんでこっちに痛覚切り替えなかったんだ?(な
「わ、わすれてた~~ つー やっぱ竜は中もカタイなー」(え
たた、確かにいてーや(切り替えられた感覚が襲ってくる)(な
俺にやらせろ(な
「いーの? てか、そだね、まかせた!」(え
瞳が、蒼紺色から金色に変わる
ふっふっふ、俺の出番だ(な
あいかーらずへんなとこでなりきるねー、キミは(え
本体が埋まっているかもしれない。
それは、文字通り期待に胸躍る可能性だった。
______________________
▼発掘開始・土木工事だ
ふー 息を吐ききると、胸一杯に空気…かどうかわからないが吸いこんだ。
水っぱらにならない~?(え
あほ(な
さて(な
わくわく どきどき(え
おっと! その前に… 握手! (にぎにぎ)(な
おおお~! あ、あんたやっぱかわってるわー あたしでもその発想はなかった! かー負けたー! あたしもあたしも!(え
にぎ
笑)何か感じるか?(な
……うう~ん… この手、…なんか..吸われてるね..。そんなかんじってゆーか、中に吸引力が働いているような感じ..(え
てことは、竜にとってはりっぱな養分ってことだな。手だけにしろ、本体が埋まってるにしろ。…握りかえしてこなかったな(な
やっぱり死んでるのかな~(え
寝てるか気を失ってる…と思いたいな(な
握りかえされたら怖かったねー(え
握りつぶされなくてよかったかもな(な
よくそんなこと考えるねー(え
考えてたら握手なんかするかい(な
俺はあらためて壁に向かった。手刀型に構えた手を、指先を、カベから突きだしている腕のそばにあてて、そのまま押してみる。面白いように、手がカベの中に入っていく。ぶしゅうと、激しく赤い液体が噴き出してきた 深紅と言うより、ピーチドリンクだ。かわいい(笑)
キミ、いったい?(え
掘れるぞ これ(な
海辺の砂を掘るように、肉のカベをザクザク手をつきたてては、えぐりかき出す。
ぷ すごい血しぶきだね …これ..これももしかしたら、キミの異能かも…(え
昔、マンガで畳を手刀で貫くっていうのがあってな、それをやりたくていわゆる貫手であちこちなぐってたことがある。てか、突いてたっていうか。最初は随分突き指をしたもんだけど、とりあえずコーラの缶くらいなら抜き手でべこべこになるくらいまではいったんだ。その先は…瓦も割れなかったけどな(な
単語は理解できなくても、イメージでなんとなく伝わっているらしい。
手抜き…(え
貫手だ(な
ついたて(え
突いてた!だアホ 手元が狂ったらどうするんだよ(な
あはは(え
(…どうやら、生前のたしなみが強化されてるようだね~。それも増幅の効果なのかな…
でも、あたしの魔法も、多少ベースそのものが強化されてる感もあるし…(え
ヒジが見えてきた。まだ、その先がある。激しい流血は止まったが、えぐられた場所から時々びゅびゅっと血が噴き出している。
肩だ。体もあるよ!(え
これで首がなかったらヤダな(な
そ、それはやだねー やめる?(え
その時、血に染まったその手がゆっくり動き、ぐっとこぶしを作った。気がつくと、手と腕から最初の赤黒さがなくなっている。白っぽく、きれいな肌だ。握ったこぶしも女のコの手だからろうか、かわいいこぶしだ。しかし、そこには「負けない」という、強い意志が感じられるようだった。
ナシくん、これ…(え
いつのまにか、俺はナシくんになっていた。しかし、はじめてじゃないか?そう呼んだの(な
いーじじゃない べつに。…さ、早く続き!(え
ああ(な
一気に掘り出すぞ!…と思う一方、ここから頭部からにするか、胴体から下の方からにするか、ちょっと迷っていた
ねえまーだあ~?(え
うん。……いま考え中…(な
そのとき、ぐらぐらっと大きな地震が来た
地震?(な
あー、やっときたねー(え
なんだ(な
痛いんだよー(え
は(な
竜。体ン中こんなに掘り返されたら、いくらなんでも(え
あー(な
そういえば、ここは竜の腹ン中だった…
しかし、掘り始めてから随分時間立ってるぞ(な
そのぶんおーきーんでしょ?(え
ひとごとのように、実に緊張感がない答えが返ってくる
昔、でっかい恐竜とかさ、足蹴っ飛ばしてー、たーーーーーーっと逃げて、見えなくなったころに、恐竜が「いてーーーー!」って(え
ああ、それならこっちにもそんな話がある(な
そりゃー、キミのライブラリにあったんだから(え
なるほど(な
よーするにー、神経伝達にそれだけかかるほど超巨大か、めっちゃにぶちんかってことだねー(え
そーいうことか(な
ねー、痛みが自覚されると何が起こるか知ってる?(え
なんだ?(な
回復反応(え
え?(な
せっかく掘った穴が少しずつ再生していく
おい、ちょっと待てそれはないだろー(な