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第94話 辻褄の合致

「悪いな時間を割いてしまってな。」


「いえ。私もシュタイズさんにお伝えする事がありますのでちょうど良かったです。」


私とシュタイズは相互に伝えたいことがあり、ちょうどよく鉢合わせすることになった。別の意味で赤い糸に繋がれているのかと思うぐらい完璧なタイミングである。


「ソータ君の話から聞こうか。」


「宜しいのですか?では、お先に失礼します。シュタイズさんはこの本見たことありますか?」


私は図書館で借りた本をシュタイズと私の間にあるやや低めの机の上に出した。シュタイズはその本を手に取りって中身を少し流し見する。私が童話を出してきたにも関わらず、シュタイズは至って真面目な顔を維持している。


「いや、見覚えはまるでない。初めて見る作品だ。」


「そうですか。注目して頂きたい所があるんです。」


私は魔竜についての記載と思わしき箇所を全てピックアップしてシュタイズに伝えた。私が話している途中、シュタイズは度々『まさかな。。。』という言葉を発していた。


「なるほど。。。確かに魔竜についての記載だと断定していいだろう。だが、童話にそんなおっかないものを登場させるなど、この作者は何を考えているんだ?」


と言いながらシュタイズは作者を見ようとしたのか本の冊子部分や、裏面を探る。私も驚いたことなのだが、この本には作者名が記されていないのだ。どこを探しても本の題名と主人公とりゅーちゃんが描かれた表紙のみである。


「名前がないなんてことあるか?」


「私もそれには驚きました。そしてですね、一つ視点を変えてお話をしようと思います。もしこの本の主人公が魔人であったとしたら。作者魔人であったとしたら。この本の内容どう受け取れますでしょうか。」


私は人生で一度はやってみたかったポエムとまでは行かないが、オシャレ風に相手に問いかける、名探偵のような言い回しで回りくどくシュタイズに尋ねた。


「まさかな。。。。。。。」


シュタイズはまた首を傾げる。恐らくシュタイズも気がついていたのだろう。この本は人類の本では無い事など、生活から違うことがハッキリとしている。


「この話はフィクションなのだろう???」


「私もにわかには信じがたいですが、仮にフィクションだとしても、王都すら知らない魔人や魔竜についての情報を

作者が想像力だけでこんなにも筋の通った物に作り上げることはできるのでしょうか?私はどんなに想像力豊かでもこんなに的確な内容には出来ないと思ってます。」


私はこの本がノンフィクションなのではないかの同意、もしくは意見をシュタイズに求める。シュタイズもまだ疑っているのだろう。無理もない。ただの童話だ。


「…………信じたくないが、確かに細かすぎる。本当の生態系と言われても変に思わない内容だ。」


シュタイズは少し考えた。頭はフル海底していたであろう。童話がそれほどの鍵を握っているとは誰も思わないのでは無いだろうか?だが、現に鍵になりうる内容が童話として残されている。面白い話である。


「そもそもこれは誰が書いたんだ。人類の言葉だ。魔人語じゃない。」


「それについては心当たりがあります。」


魔人語は人類とは全く別の言語。それも解読の非常に難しい言語であり、シュタイズでさえも苦戦した魔人語。だが、スラスラとなにもせず読める者が人類の中にいた。


それは私である。なぜ読めるのか。分かりきっていることではあるが『日本語』だからだ。生前の私の世界の言語『日本語』。読めないはずがないのだ。ではなぜ、この異世界に日本語が存在しているのか。これについても明確である。


"過去にも日本からの異世界人が存在した" からである。もう分かるだろう。時すでに分かりきっている事かもしれない。


「誰だ??その心当たりというのは。」


この童話の設定は戦争で戦うこと。相手は記されていない。だが、攻撃手段に覚えがある。童話には『生物に乗って剣を持ってつついてくる。』とそう書いてあった。生物と態々表記するのも違和感だ。


それに本が作成された年と今との相違を無くすと、この本は今から約220年前。とある話に合致している。この童話は戦闘には勝利して終わる。相違もあれば、綺麗に合致している所も実際あるのだ。そんな、心当たりのある話だ。


「心当たりというのは "転生騎士エクスカリバー" です。」


「転生騎士エクスカリバー・・・???あの伝説のか?あれこそ諸説あるではないか。」


シュタイズは思ったよりもピンと来ていないようで反論してきた。どうやら、あまり信じられていない話らしい。私は確実に自信を持って信じている。エクスカリバーというのも、私のいた世界での話だ。異世界には元は存在しない単語だ。


「辻褄が全てあいます。それに他に魔人語、つまり日本語を伝えられる者はいないと思います。」


「転生騎士エクスカリバーとやらは、実在した人物であり、魔人語を教えた張本人だと?つまり、あの魔王軍との戦闘とやらはでっち上げか?勝利したことも嘘か?魔人とグルだったのか?」


シュタイズは少しでも疑問に思ったことはすぐに詰めるタイプである。私も幾度となく押しつぶされそうになってきたが、そろそろ慣れたものだ。


「転生騎士エクスカリバーは戦争に勝利しているはずです。同じ日本人だから分かります。エクスカリバーを知っている人に、悪いやつは居ませんから。」


私は満面の笑みでシュタイズにそう言う。シュタイズは不服そうにしているが、特にそれ以上のことは聞きてこなかった。本当に、どこを取っても分かりやすい男であるのだ。

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