第93話 童話の違和感
魔竜。それは今の私にとって興味深い生物である。今後対峙する可能性を考えれば、興味が湧かないはずもないだろう。できることなら前もって戦ってみたいが、そう上手く出現するものでもなく、王立大図書館で必死漁っても、結局内容は既に知っている知識のみである。
「求めてるものが全然ないなぁ。期待外れだ。」
情報はいくらあってもいいとは言うが、無意味な情報は無意味な情報そのものだ。魔竜ひとつ取ってもそうである。"魔竜とは魔力を保持した竜種である。"という説明文はこれでもかと聞かされている。
「こんな情報ならまだ童話の方が何倍も興味深い。」
私はこの王立大図書館に来てから魔竜について多方面で調べていた。勿論せっかく来ているのだから魔竜以外についても調べている。だが、私が最も気になっているのは魔竜の事だ。
「この童話フィクションと言っている割には、結構リアルというか、筋が通っているというか。。。なんかしっくり来るんだよな。まるで経験者が書いた物のようだ。」
私の感受性は幼い頃から豊かであった。小学校の宿題にあった音読。文章1文字1文字に真正面から感情を乗せて音読した記憶がある。私としても今となっては小っ恥ずかしいが、幼いからこそできた凄技であったと自負している。
そんな私が気になっている一冊の童話。題名は『りゅーちゃんと旅』いう至って普通な子供向けの話である。"りゅーちゃん"という竜の生物と主人公が旅をするお話だ。
だが内容が妙にリアルなのだ。勿論中身の文章は子供に分かるように簡単にしてある。だが、要約すれば"りゅーちゃん"という竜は普通の竜では無いことが分かる。
「そのその会話できるのもそういう事なのか。。。?」
面白おかしく和むような書き方をされた文章。私が気になっているところを抜粋するならば『主人公と会話が出来る。』『主人公に忠誠を誓っている。』『りゅーちゃんは魔法を4種類扱える。』等など、他にも幾つかあるか、この童話に登場する竜は魔力を保持した魔竜であることが予想できるのだ。
「にしてもこの童話には一言も"魔竜"の文字は出ないのに良くこれが語句検索魔法にヒットしたな。そんな有能な魔法なら私も覚えたいな。」
この童話からも情報は十分に得られた。私の知っている情報では魔竜は魔法属性を複数使用出来ると言っていたが、その複数は、2つでも3つでも複数である。だが今回4つ使えるという情報がある時点で、4つ以上の魔竜が来る可能性もゼロじゃないという結果がある。良い成果である。
「ん?待てよ?魔竜が忠誠。。。?会話してる???普通に流してしまったが、この主人公は魔人なのか。。???そして旅って、、、我々人間との戦争を。。。そう考えると面白い話だぞこれは!!」
普通の王立大図書館にあるたった1冊の本。この本はこの異世界の人類が使用する文字で記されている。だが、目線がおかしい。普通の王都の言語での文章だったこともあり、気がつくのが遅れたが、主人公の目線は魔人の可能性が浮上した。
勿論主人公が特殊であるパターンや、魔竜が超ハイスペっであるパターンもある。だが、それは今この1部を抜粋しているからであり、他の部分も合わせて見てみると自然とほかの可能性は薄れていき、魔竜であるという事がより鮮明に伝わってくるのだ。不思議だが、私はこの童話に強く惹かれた。
「とりあえず予定じゃなかったが、この話はシュタイズに見せたい。借りる手続きをしよう。」
私はそう考え、語句検索を行ってくれた人と同じ服装の人を呼び止めて借りる手続き方法を聞く。手続きは至って簡単であった。
「では、ここに本を置いて頂いて、一緒にこちらに手を置いて頂ければ、貸出状態となります。期限はありません。必要なくなったら速やかにご返却下さい。」
そう私に説明をしてくれたカウンターにいる王立大図書館の職員達に従い、私は子供向けの1冊の童話を借りる。
「図書館で本を借りるなんて何時ぶりだろうか。日本では全部電子書籍で済ませていたからな。。。久しぶりの気分だ。」
そんなことを考えながらも、この興味深い内容のお話をシュタイズに見せるべく、足早に役所に戻る。足早と言ってもすぐ隣にある役所に戻るだけであるが、時間が無い意識は表に出すべきだきろう。
「あ!シュタイズさん!いい所に!」
「おぉ!ソータ殿!探したぞ!!」
私が役所の扉を開けた途端、目の前には無駄に難いのいい大きい図体をしたシュタイズが居た。私が声をかけると、その返答は私を探していたことを示した返答であった。私も探していたことを考えれば、いいタイミングであえたといえよう。
「色々話がある。応接室に来てくれるか。」
「私も話したいことがありますので、是非。」
そういいシュタイズは役所の奥へ入っていく。私はそれに送れぬよう、カウンターにいる役所の職員方に礼をしながらシュタイズの背を追う。
シュタイズの眼差しは普段と余り変わらない様子だったが、隠しているようにも思えた。カウンターの職員たちに隠したのだろうか。それほど重要事項を話すのだろうかと、私は少し緊張感を感じつつ、私もシュタイズに話したい内容を早く伝えたいという思いが少しぶつかり合っていた。




