第9話 御礼
「高木颯汰殿。我の護衛の依頼を引き受けてくれたまえ。」
まだ何もそれらしい話をしていないところに、突然ぶっ込んでくるとは。流石の私も礼儀もなにも消え去ってしまった。
「そんな直球に言われましても・・・。」
「ハッハッハ。すまない。たしかに突然すぎた。まずは礼の話としよう。」
少しは話が通じる人でよかった。会ったばかりの何処の馬の骨とも知らない男に突然仕事を頼む奴には変わりないが。
「私の名前はバゼル・シャラベル。こう見えても、この国の王をやっている。そして、私の妻のアリス。君も知ってる娘のマナだ。」
マナは一人っ子なのだろうか。まぁ紹介されていないだけかもしれない。実際、周りに私含めこの3人とメイドらしき者しかいない。
「本題の礼の話なのだが、その前に事実確認だ。今回 "宿りの森" にて毒魔獣アザルダルクが出没し、私の娘のマナが襲われているところを君が助けてくれた。それで間違いないな?」
「はい。間違いないです。たまたま通りがかっただけですが。」
事実確認を行うとは、国王なだけある。真相は明確にし、国民に発表する時に間違いがあってはならない。それなりに国王としての仕事はしっかりしているみたいだ。
「そうか。では・・・。おい。例の品を持ってきてくれたまえ。」 「かしこまりました。」
一人のメイドが部屋を退室し、何処かへ行く。私への礼の品を取りに行ったのだろう。そんな大層なものじゃないといいのだが。
「すみません。一つ質問してもいいですか?」
「構わない。何でも質問したまえ。」
この世界に来てまだ間もない。この国のことは愚か、この世界のことですらよく理解していないのが現状だ。そんな中、最も私が気になっていること・・・それは。
「この世界の暦を教えて頂きたいのですが・・・」
暦だ。マナが18歳とは未だに信じていない。何かしら裏があるか、日本とは違う暦なのではと、私は考えたのだ。
「暦?ふむ。そうだな。1年が183日だ。とくらいしか言えぬが。」
1年が183日だと?日本では1年は365日だ。ん?365日を半分にすると。。。182.5日。。。そういうことか!
「そうでしたか。妙に月日の流れが早いと感じました。」
つまりは、この世界の時間の流れは、元いた世界の2倍。
この世界での年齢も2倍に進むことになる。私は今24歳だがそれは日本の暦。この世界の暦に合わせるならば。今私は48歳になる。。。マナ・・・私はおじさんだった・・・。
そうか、であれば都合がつく。マナは18歳と言っている。つまり、日本の暦に合わせるならば、9歳だ。納得がいく。
「お待たせ致しました。例の品をお持ち致しました。」
どうやら私の礼にと贈呈されるであろう品が届いたようだ。気になるが断りにくいものだけは勘弁だ。
「此度は私の娘を救ってもらい、且つ宿りの森での毒魔獣アザルダルクの討伐大儀であった。これはその礼として高木颯汰に贈与する。受け取ってくれたまえ。」
机の上に出された品々は、防具・剣と何やらジャラジャラした袋の3点だった。
「あの。これは少々貰いすぎなのではないでしょうか。流石に白金貨20枚はちょっと・・・・・・それに防具や武器まで。」
「その値段は、我の護衛に携わる報酬も含めている。それでも、少ないぐらいだと思うがな!ハッハッハ」
おいおいおい!それつまり問答無用で護衛の仕事引き受けなければならないじゃないか!なんともずる賢い。。。
「防具と剣に関しては、どうやらお主、何も持っていないようだな。であればこれを使うといい。一級品だ。」
「そんな一級品だなんて大層なものは頂けません。」
「我の護衛の仕事に生身で行くつもりか?」
なんとも細部までずる賢い。。。上手く手のひらで転がされてるではないか。これじゃ断るにも断れないではないか。
「分かりました。。。有難く頂戴致します。」
「それでいいんだよ!ハッハッハ」
今日は本当に疲れた。どちらかと言うと魔獣と戦っている時よりも、この国王との会話にとてつもなく疲れた。
「今日はもう遅い。食事と湯を用意している。ここに泊まるが良い。部屋は有り余っているのだ。」
こんなに大きなお城に3人とそのメイドや執事達しかいない。そりゃ部屋も有り余るであろう。今から宿を探すのも少々辛い。お言葉に甘えさせてもらうとしよう。
「お部屋には私がご案内致しますね。」
食事と湯を頂いた後、アリスさんに部屋へ案内をしてもらっている。にしても、国王の妻のアリスさん。とても美しいお方だ。国王には勿体ないのではないだろうか。
「夫がすみません。強引に護衛の仕事を押し付けてしまう形になってしまいました。お許しください。」
「いえ、お気になさらず、私もこの世界についての勉強をしたいのでいい機会です。」
流石、国王の妻ともあるお方だ。隅々まで美しく上品。 "お姫様"という言葉が良く似合うお方だ。
「一つお聞きしたいことがあるのですが、聞いてもいいですか?」
アリスさんは妙に信用できる。国王のことを信用していない訳では無いが、まだ会ったばかりだ。
「なんでしょうか?」
「 "転生" についてなにかご存知ないですか?」
私自身、この世界に転生してきた。もしそれが可能であるならば、過去にも転生者がいるのではないだろうか。
「そうですね。"転生騎士エクスカリバー"という物語はありますが、その他には何も。」
「その話。詳しくお聞かせ願えませんでしょうか?」