第89話 シュタイズとマナ
バゼル国王に魔族との遭遇の件を報告し、王都に来る目的の内の一つを終えた頃であった。シュタイズと共に魔人の言葉を解読できるか試してみるべく、役所に向かう道中である。
「そういえばシュタイズさん。マナさんとはどう言ったご関係で??」
実は心の奥底で気になり続けていた事柄を、やっとの思いで質問した。あの場では聞くに聞けるような雰囲気ではなく、ただただ気になっていたが質問できたことで少し安心感を得た。
「昔色々あったんだよ。悪いのは私だがな。特に深い関係という訳でもないぞ。」
パッとしない回答である。何があったのかを聞きたいのだが、それは答えてくれないのだろうか。
「何があったんですか?」
「んーあんまり言いたくは無いのだが。。。まぁ、ソータ殿ならいいとするか。。。そうだな。マナ様がBランクなのは知っていると思うが、マナ様はBランク試験を一度落ちているのだ。それには私が関わっている。」
こんなにももったいぶっているのだ、さぞ大事なのだろうと固唾を飲む。
「マナ様がBランクの試験を受けに来た時、私がその試験官だったのだが、色々あって危険と判断した私は、その場にいた全ての魔獣を討伐してしまったんだ。どうやら、作戦の一つだったらしく、それを踏みにじってしかも全て魔獣を消し去った私に怒ったマナ様は今でもあんな感じなんだ。」
なんとしょうもない。鼓動を早まらせた私が馬鹿であった。全くもってしょうもない喧嘩である。現在マナはBランクであることを考えれば、その後2度目の試験で合格しているのだから、いいのでは無いだろうかと思ってしまう。
「あはは、そんなことがあったんですね。。。」
「お恥ずかしい。。。だからあまり言いたくないのだ。」
言いたくないと言ったのも、大事で言いふらしたくないことかと思えば、ただ恥ずかしいから言い難いだけであったのかと予想外すぎたが、大事でなくて良かったとほっとした。
「まぁ、その後Bランク試験を合格されてるから、今Bランクなんですよね?ならいいじゃないですか。気にしすぎですよ。」
「マナ様はずっとあの感じだ。相当嫌われてしまった。」
シュタイズは危険と判断して魔獣を一網打尽にした。であれば、シュタイズは基本何も悪くないというものだ。マナとマナである。勘違いさせるほど危険な作戦を企てるのも非現実的な話だ。失敗していたらそれはそれで大事であっただろう。この件に関しては私はシュタイズの味方になってあげたいと思った。
「そんなことはいい!そろそろ役所にも到着するからな、魔人の話と行こう。」
少し焦り気味にシュタイズは言う。恥ずかしさを紛らわす為に無理やり話を逸らした事は分かったが、もう理由もわかったので、これ以上聞くことは無いと思い、その流れに私も同情した。
「そうですね。早速ですけど、魔人語は過去に解読しようとしたことは無いんですか?」
「勿論あるさ、魔人語の解読については、我々が持つ課題でもある。だが、ここ最近は全くと言っていいほど行ってないのも事実だ。正直諦めている節があるからな。」
過去にも解読しようと試みたがそれでいても解読はできなかった。それほど難しいものなのかと少し不安を覚えながらも、役所には到着しているため、今更後戻りはできないというものだ。
「では、禁書庫の鍵を持ってくる。少々ここで待っていてくれ。」
シュタイズは役所の奥の方に入り込んでいき、何やらゴソゴソと漁っている。少し探さなければ見つからないほどに最近は禁書庫を開けていないのだろうかと思うと、本当に解読はストップしているようだ。
「すまない。待たせたな。多分この鍵だ。」
「少しも解読出来ていないのですか?少しは分かったこととか。。。?」
「ないな。何一つして進展がない。そもそも資料が少なすぎるのだ。解読など無理難題にも程がある。」
シュタイズは顔を顰めてそう言う。1文字も解読できていない以上、諦めて解読すら行わないようになってしまうのは無理もないと思ってしまう。まだ少しでも分かっていれば話は別だが、何も分かっていないのだ。仕方が無いだろう。
「ここだ。ここが禁書庫だ。」
シュタイズに案内されるがまま来たが、大分長い螺旋階段を下へ下へと降りてきた。その道中いくつか鍵のかかった扉を開け、そしてまた下ってと繰り返してやっとたどり着い扉だが、相当厳重である。
「私も久しぶりに開ける。中がどうなってるかも見当つかん。もしかしたら魔獣がいるかもしれないな。」
「恐ろしいことを言いますね。」
シュタイズは冗談を言いながら、速やかに扉にかかっている施錠を解き、重そうな扉を軋む音を奏でながらゆっくりと開ける。
「おぉぉぉ。思ったよりも広いですね。」
「そりゃそうだ。ここにはおよそ5000冊程の禁書が保管されている。中には禁じられた魔法について記された書物もあるぐらいだ。」
「ちなにそれは見ていいんですか?」
「魔人語を解読できたら許可しよう。」
それは好条件である。私は半ば無理かと思っていた魔人語の解読に、少しずつ自信を取り戻しできていたところである。なんとなくだが読めそうな気がするのだ。
「それで、魔人語はどちらに?」
「あぁ。これとこれだ。」
シュタイズから渡された魔人語が記された書物。そこに記されていた言語を見て私は今まで以上に驚愕した。
「こ、これは。。。。。。。。。。。。。。。」




