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第87話 暴君二世

魔力測定を終えた私は、シュタイズと共に一度王都に行く為、私が作り出した自動車に乗り込む所であった。


「では、マナさん。少し王都に行ってくるので、留守番だけお願いします。」


「寂しいですが、仕方がありませんね。お任せ下さい。」


マナは、寂しそうな顔をする。そんな顔も美しく見える。私自信も薄々気がついているが、この感情について何も知らない訳では無い。分かっているが、認めたくないのだ。そういう時期があっても良いだろうと、私は自己肯定をする。


「なんなんだこれはぁーーー!!!!!!!」


マナと話しているやや遠くの方からシュタイズの声が私の耳に突き刺さった。それなりの距離があるにもかかわらず、シュタイズの声は響き渡っているのが分かった。どれほどの喉の持ち主なのだろうか。計り知れないだろう。


「なんですか。どうしました?大丈夫ですか?」


私はシュタイズがなぜ大声を発したのか、なぜ驚いたのか、何に驚いたのか、それら全てを理解していた。だが、日本人の私は、まずは大丈夫かを聞いてしまう。全く素晴らしい精神が身についてしまった。


「これはなんだ!乗り物なのか!?ソータが言っていた馬車よりも乗り心地の良い乗り物とはこれの事か!?」


「その通りですよ。自動車って言います。動力は各々が持っている魔力です。」


私は内心面倒くさいと思いながらも、律儀にシュタイズの対応をする。最近少しづつだが、シュタイズといいバゼル国王といい、元気のいい人物の対応をするのが少々辛くなってきた。歳かもしれないと感じる。


「これで行くのか!?これに乗れるのか!?」


「はい。これで王都まで行く予定です。」


一個一個分かりきったことも質問してくる。少しは自分の脳みそで考えてみるということはしないのだろうか?だが、人間驚いている時はそういうものなのかもしれない。


「時間がもったいないですから行きますよ。さぁ乗ってください。」


私はそうシュタイズを催促し、助手席の扉を開けてジェスチャーをする。そのジェスチャーに答えるように、シュタイズは恐る恐る車内に顔を入れる。顔から入る人を私は初めてみた。それも無理もない。なにせ初めて見る代物で、何も知らない乗り物なのだから、最初から乗れてしまったら驚きだ。


「そうじゃなくて足から横にある椅子に座るように乗ってください。」


「おう。なるほど。」


そう一言言うだけで、理解しすんなりと乗車したシュタイズはやはり、理解力はあるのかもしれない。そういう部分だけのは長けているが、他の部分がどうにも扱いにくい。


「おぉ!柔らかい!!!馬車のは硬くて硬くて、長距離移動には向いてないからなぁ!これなら体も楽というものだ!」


座席には私も力を入れた。椅子は座る人が辛くならないようにできるだけ辛さが和らぐように作らなければならない。それを考えるのは難しく、今できることはただ柔らかくするだけなのだ。


「さぁ、座りましたね。じゃぁこの安全ベルトをかけて下さい。これを引っ張ってそこにある赤いところに差し込んでください。」


「お?こうか???」


シュタイズはシートベルトを締める。これもまた一つ一つについてこれはいい、あれはいいだの騒いでいるが、さすがにキリが無いと思った私は、何も返答することなく運転席に乗車した。


「では、王都に出発しますよ。」


シュタイズにそう告げると、私はパーキングブレーキを解き、シフトを前進にいれ、アクセルペダルに魔力を流し込む。それと同時に車両はゆっくりと走り出す。


「おおおぉぉぉおおお!!!なんだこれはぁ!!!」


左耳からこれまたうるさい声が劈く。驚くのは仕方がない。初めて見る先進的な技術を見れば誰だって驚くだろう。だが、その驚き方というものをシュタイズには少し考えて頂きたいところである。


「スピードもっと上げますからね。もしなんでしたら、そこにある取手に捕まってて下さい。」


自動車の左右の窓の上部に、身体を支えるために掴まっておける取手がある。あれは『アシストグリップ』というものだが、これがなんとも良い仕事をしてくれる。掴まることで安心感を得られるのは、こういう初めて乗る人間には必要不可欠に近いだろう。


「よし………………。これ買った!!3個……。いや10個くれ!!」


「はい……?今なんと…………???」


「いやだから、この乗り物を10個くれと言ったのだ。」


日本では考えられないことを言っている。個人で車を10台も所有するなど、どれほどの大富豪なのか予想もつかない。


確かに重量税や燃料費、駐車場代、車検代などの車を所有するにあたっての維持費がまるでかからないこの異世界は素晴らしいといえる。


だが、それでいてもいきなり10代を所望するのは如何なものだろうか。私はバゼル国王と比べてしまい、頭の中では既に『暴君二世』と名付けていた。


「すみませんが、先に王都含め、全直属国からも自動車生産の依頼が入っているんです。拒否するとは言いませんが、相当後になります。」


正直に言ってしまえば、量産する方法は見出している。過去に作ったスキルはそもそも量産するためのものもあるからだ。


「待てん。今乗っているこれをくれ。」


何を言い出すかと思えば傲慢で強引な男である。だが、強要しているようには聞こえない。どちらかと言うと、駄々をこねているかのようだ。


髭を逞しく生やした、凛としていてどこか貫禄のあるシュタイズであるが、結局王都に着くまでの間、ただただ駄々をこねるシュタイズであった。

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