第8話 国王の依頼
「おいおい・・・マジかよ・・・」
まさかマナはこの国の王様の娘だったとは。驚きをとおりこして呆気に取られてしまった。この少女には何度も驚かされる。
「お待たせ致しました。準備が出来ました。」
どうやら買取の準備が整ったようだ。今日一日で様々なことが起こった為か、疲労感はある。重い腰をゆっくりと持ち上げてカウンターへと足を運んだ。
「まずはこちらが今回の報酬金です。そしてこちらがモンスターの素材と魔石の買取金です。お受け取り下さい。」
報酬金と買取金は別なのか。これは個人的にはとても嬉しい。基本的に一緒にされてしまう事の方が多いと思う。
「白金貨3枚と金貨が5枚。銀貨10枚と銅貨は30枚とは、少々多いのではないか?」
「いえ、正当な報酬です。毒魔獣アザルダルクは中級魔獣です。中級と言ってもほぼ上級。それなりに経験を積んだ者が数人集まって討伐するのが普通の魔獣です。」
それほどの強さの魔物だったとは思わなかった。強さに関しては、スキルのおかげで感じ取ってはいたが、何せ比較対象が少ない。この世界の強さの基準と言うものも勉強しなければならないだろう。
「それでは、高木様の狩猟許可証を提示下さい。今回討伐したモンスターと魔獣を登録致します。」
すっかり忘れていた。そういえばそのようなものもあった。私は、狩猟許可証を手渡した。
「はい。登録完了致しました。こちらで結構です。」
「ありがとうございます。」
いつも思うが、あっさり終わってしまう。もう少し豪勢に出来なかったのだろうか。そんなわがままを頭に浮かべる。
「終わりましたか?では私の家に招待します!ついて来て下さい!」
「マナ、私は礼などそんな・・・」
「遠慮しないで下さい!それにもうこのことは両親に伝えてしまいました!」
まったく無邪気な少女だ。私の穏やかで温厚な性格とはやはり分かち合えないところがあると感じる。
「で、でかい。。。。」
国王の住む家ともなれば、容易く想像つくであろうが、実際に目で見るとそれはそれでまた違う見え方をするものだ。立派・豪勢・絶景等、色んな言葉で表現しようと試みるが、これは言葉には表せない。強いて表すのであれば『絶句』だ。
「お父様、お母様、ただいま帰りました。」
「おかえりなさい。」
極々普通の家族にしか見えないが、王様である。この1シーンだけを切り抜くのであれば、少女が言っていた『極々普通の女の子』というのもあながち間違いではないのかもしれない。
「この者が私を魔獣の危機から救って頂いた命の恩人です。」
「此度は娘が世話になった。なんと礼をしたら良いものか。」
「いえ、私は人として当たり前なことをしたまででございます。礼には及びません。」
仮にも国王だ。礼儀に関しては自信ないが、日本の社会人を経験した私であれば、ある程度は粗相のない受け答えが出来ると自負している。
「ところでお名前をお聞かせ願おう。」
名前を名乗っていなかった。これは失礼だ。日本の社会人は礼儀がなっていないと思われてしまうではないか。
「これは失礼致しました。申し遅れましたが、私は高木颯汰と申します。」
「では早速だが、高木颯汰殿。我の護衛の依頼を引き受けてくれたまえ。」
【異世界の通貨の価値】
白金貨⇒金貨⇒銀貨⇒銅貨
銅貨100枚=銀貨1枚
銀貨100枚=金貨1枚
金貨100枚=白金貨1枚