第76話 所長との団欒
王都中央総合役所所長であるシュタイズと共に、来たる魔族戦争に向けての基礎力向上を図っている私は、シュタイズに会った際は聞こうと考えていたことを、質問していた。
「シュタイズさん。やはり過去に魔族戦争も経験していると思いますし、魔人とも戦ったと思います。何かアドバイスとかないですか?」
「そうだなぁ。。。アドバイス……なぁ。。。」
私にとって魔族戦争は何もかもが初めてであり、増しては魔人とも戦うという高難易度な事を求められている。できる限り情報を入手しておきたいところなのだ。情報は武器になりうる。ならば、経験者に聞くのが鉄則だろう。
「正直なことを言えば魔族はさほどの驚異ではない。魔獣の考え方と同じだと思っていい。だが、魔人は違う。あいつらは会話もできる程頭脳が発達している。そうだな。。。 "魔人語" とでも言えば分かりやすいか?私たちには通じない言葉だ。」
何とも面白い生態である。魔人は魔族が進化したものと言う認識だが、魔人になれる程の力の持ち主は恐らく少ない。人間でも人によって上下があるように、個人差が明確に生まれるというものだ。それは魔人にも言えるのだろう。にしても気になるのは "魔人語" と称したものだ。
「その"魔人語"とやらは、誰にも聞き取れないのですか?もしそれが聞き取れれば、相手の作戦も分かるという事になりますか?」
私は少し深く攻めた質問をする。この質問をしたのには理由がある。自分のスキルに心当たりがあるのだ。
「あぁ。聞き取れない。全く何を言っているかが分からないんだ。我々人間とは似ても似つかない言語だからな。もしもそれが聞き取れるという人物がいれば、それは人間国宝になるな!!」
私は少しの可能性をも捨ててはならないと思った。普段はあまり気にしていなかったが、魔人語が分かれば大きな戦力になるはずだ。それは王都だけでなく、私自身の身を守ることにも繋がる。これは試しておきたいものだ。
「シュタイズさん。ここだけの話ですが、魔人語……読み・書き・話す・聞く全てできるかもしれないです。その心当たりがあります。」
「なんだとぉ!?!それは本当か!?」
まだ可能性の段階にしか過ぎないが、私の『語学』『読解』スキルに期待してもいいのではないだろうか。効果には『全てのあらゆる』と記されている。魔人語は省かれていないのだ。
「まだ可能性に過ぎませんが、十分期待できるかと。。。」
私は謎の自信に満ち溢れていた。何故か知らないのだが、何処からか魔人語が話せるようなそんな気がしてならないのだ。私は不確定な状態のものを言い切って発言することをできる限り控えているが、これに関しては言い切りたいと思える。
「魔人語の文章か何か、なんでもいいのですが残ってないですか?」
私はこの謎の自信を少しでも早く確信に変えたいと思い、シュタイズになにか資料がないかを尋ねる。日本のように音声を録音できるような技術は恐らくこの世界にはないだろう。だが、文字なら存在する可能性は十分にあると言える。
「そう焦るな。心配せんでも魔人語で記された書物がある。誰一人として読む事ができていない。解読も試みたが無理だった。それがあるのは、王都中央総合役所の地下にある『禁書庫』という所に保管されている。通常は閲覧する事は愚か、入ることすらできない。だが、私の許可があれば閲覧できるぞ。」
それはとても好都合である。さすが総合役所の所長である。こんな脳天気でテキトーな所長に見えるが、だてに所長はやっていないようだ。私は少し安心した。
「それは良かったです。では、私も近いうちに一度王都にお邪魔して一通り確認するとしましょう。」
「あぁ。許可は出してやるが、本当に読めるんだろうな??期待してるからな???」
私はシュタイズからの怪しげな目線を避けるように流した後、とあることをふと思い出してシュタイズに切り出した。
「あ、シュタイズさん。話は変わってしまうんですが、1つお聞きしてもいいですか?」
「お?なんだ。なんでも聞くがいいぞ!!」
シュタイズは快く了承してくれた為、私はおもむろに質問を投げかける。
「単刀直入聞くんですが、無詠唱魔法よりも詠唱魔法の方が強いんですか???」
私がそうシュタイズに質問をすると、満面の笑みをしながら無言で私の右肩をやや強めに叩いてくる。まるで、「君にもそれが分かったか」と言われているかのような気がする。なんだか少々屈辱に感じる。
「だが、その認識は少し間違ってるぞ。ソータ殿。」
シュタイズは散々私に向けて顔を上下に動かしていたが、突然に否定してきた。どうやら、私の認識では語弊があるそうだ。それならそうと先に教えてくれれば良いものを、全くこの所長が考えることは少々分かりらないなと尽く感じる。
「というと??何がどう違うのでしょうか???」
「単純に無詠唱よりも詠唱の方がという考え方ではない。詠唱魔法は無詠唱魔法よりも通常威力は弱いぞ。」
私は少々シュタイズが言っていることが理解できなかった。つい先程詠唱魔法のほうが強いというニュアンスの話をしたばかりではないのだろうか?
「え、ど、どういう意味ですか???」
「ソータ。詠唱魔法には通常の国民や適性者がやるような"詠唱魔法"ともう1つ存在する。『極致詠唱魔法』というものを知っているか???」




