第75話 突然の来客
私は炎槍魔獣ファイザガイルとの戦闘に勝利した。圧倒的に私が不利な状況下の中で、スキルと魔法を上手く使い勝利を手に入れた今回の戦闘は、私にとって良い経験となったものであった。
「喜びに浸ってる暇はない!猛毒魔獣アザルベルクがまだ残ってる!!」
私は少しの間、勝利した喜びに浸っていたが、直ぐにまだ残っていることを思い出した。私が今いるこの場所は『指定危険区域』に定められているような危険な場所だ。私は許可証があるため入っても問題ないが、もし何も知らずに入ってしまえば、生きて帰ることはないというような場所である。
「あれ??魔力探知に引っかからない?どこいった?」
私は猛毒魔獣アザルベルクを討伐すべく、再度魔力探知を行った。だが、魔力探知にはこれといった強そうな魔力は探知できなかった。
「どこ行ったんだ???戦闘している間に遠ざかったのか?いやでも、ここの入口から探知できていたのに、移動したとしても探知できないなんてことあるか。。。?」
私は少々不思議に感じる。指定危険区域の入口から探知をした際にはしっかりと認識があった。仮に炎槍魔獣との戦闘中に移動したとしても、相当近づいていたにも関わらず、探知範囲外まで行くことは困難と言える。
━━━━━『ガサガサ……ガサガサガサガサ・・・』━━━━
「なんだ!!!?!!!」
突如として私の真横の草むらから、まるで人間が木々を手で避けながら歩いているかのような音が耳に飛び込んできた。咄嗟にその方向に顔を向けるが、時すでに遅かった。
「ぎゃぁああああああ!!!!?!?!?」
「うぉおおおおお!!?!だれだ!!!」
現れたのは完全なる人間であった。私が壮大に驚き、雄叫びをあげるや、その雄叫びに驚いた人間はそれはまた大きな雄叫びをあげた。何とも在り来りな驚きの連鎖である。
「死ぬかと思った。。。マジで。。。ビックリした。。。」
私の心臓は今には肋骨とタンパク質を突き抜けて行きそうな勢いで鼓動している。全く誰なんだと目のピントを現れた人間の顔に合わせる。
「シュ・・・シュタイズさん!?!?どうしてここに!!!」
「おぉ!!!!ソータ侯爵殿では無いか!!!」
そこに居たのは王都中央総合役所所長のシュタイズであった。普通に考えれば、王都にいるはずのシュタイズが、ここイズラート国近くの指定危険区域にいるとは想像できないだろう。
「どうしてここにと、そう言うたな。いいだろう教えてやる。鍛錬の為だ!」
単刀直入でわかりやすい答えだ。正しく私と同じ鍛錬の為であると、そう告げたシュタイズは上腕二頭筋と腹筋をこれ見よがしに見せつけてくる。何とも男らしい身体をしているものだ。
「そうだったんですね、私も同じです。魔族襲来の件で、このままじゃ挑めなくて。。。」
「おぉ!私もだ!私の感だがな、襲来は後2週間ほどだと考えている。まぁ言わば野生の勘ってやつだな!!」
何故こうも筋肉質な人物は皆こうも元気なのだろうか。バゼル国王に関しては少し違う方向性の元気だが、同じように難いがよく、筋肉も発達していることは知っている。それでいてあの暴君さはもはや天災級なのである。
「2週間ですか。。。あ!そうだ!こうしてる場合じゃないですよ!猛毒魔獣アザルベルクが居たはずなんですが消えたんです!!なんか知ってますか!?」
「アザルベルク???あぁ。さっき殺ったな。」
「え……?殺った???あ、、、倒したんでますか?」
「あぁそりゃー向かってきたから、えいっ!っと一発な。かましてやったわ!」
私は口を開けた状態で約2分ほど固まってしまった。私が必死こいて探していた魔獣をいとも簡単に1発で倒してしまったと言うのだ。だが、それが本当でなければ、探知魔法から突如消えた魔獣の納得ができないというものだ。
「それで言うならば、この辺りにファイザガイルおらんかったか???急に消えてびっくりしたが、すぐ近くに魔力反応があってな、ほんでこっちに来てみたら鉢合わせたって話だ。」
「あー、そいつは私が殺りました。。。すみません横取りしちゃいましたかね?」
私はあまり心から謝る意思はなく、表面的だけでも礼儀として謝罪をする。シュタイズは思いの外少し驚いているような顔をしている。
「大したもんだ!!!あの炎槍魔獣を1人で!!!素晴らしいじゃないか!!!いやぁ大したもんだ!大したもんだ!」
「そんなに強い魔獣だったのですか??」
「あぁそうだな。炎槍魔獣は特殊な生態をしてる。それは『暗視』だ。夜になっても、魔素による暗闇も、全ての暗闇に関してあいつは見えるんだ。我々も研究を続けているが、未だにその理由が掴めていない。それも相まって相当強い魔獣と言えるだろう。超上級魔獣に設定しているが、超上級魔獣の中で最も強いと言われている。つまり、ほぼ超絶級魔獣と言えるな。」
まさかそれ程強い魔獣だったとは予想外であった。だが、どうりで強いはずだ。魔獣識別スキルでは、討伐推奨ランクがBランクなど、少々強引な気がすると思ったが、そういう背景があったらしい。
「何はともあれ倒せたのは良かったです。」
「あぁ!そうだな!大したもんだ!だが、Sランクに上がるには超上級魔獣五体以上の撃退・討伐だぞ!君はまだ1体目なはずだ!防聖魔獣ミネシャランは私がやったからな!すまんな!横取りしまってな!惜しかったな!!!」
どうやら少し横取りしたことを根に持っている様子であるが、あえて私は何も気にせず流した。私はこの後の鍛錬に関して、シュタイズと共に同行しようと考える。色々教えてくれるものも、勉強になる部分あると感じるからである。それに、今の私はシュタイズに聞きたいことばかりなのである。




