第66話 魔族の動向
「な、なんだこれは。。。いつの間に。。。」
私がマナから受け取った品を見てみると、中に入っていたのは腕時計であった。あの精密な機械である時計。確かに私は転生してから入浴と睡眠以外の時は常につけていた。日本にいた頃の癖が抜けないということもある。私がつけていない時を狙って分解していたのだろうか。構造を精密に再現されていた。
言われてみるとこの異世界には時間は太陽の傾きでしか認識出来ないものであった。まさか腕時計を作ってしまうとは驚きである。だが、1つ気になるのがこの異世界の1日の時間は日本と同じ24時間なのかということである。
「私が持ってきたのはこちらです。まずは見てもらいましょう。」
私は色々考えながらも、紹介するものは他にない為、とりあえずこの腕時計を紹介する。
「これは一体。。。なんですか???」
カールスが私にそう尋ねてくる。確かに時計が存在しないこの異世界からすれば、これが何なのかなんて検討もつかないだろう。私は細かく且つ分かりやすく説明する。
「これは時計と言います。外を見て頂いても良いですか?今外はオレンジ色かと思います。つまり夕方ですね。では、私が渡した時計をご覧下さい。4という数字に短い針が、長いハリは6という数字を指しております。少々難しいのですが、今の時間は16時30分ということです。」
私ができる限りの説明をするが、バゼル国王を含む他国の領主達はイマイチ理解していない様子であった。これ以上説明のしようがないと私自身も困惑していると、ミツモト公爵が一言いう。
「これは1日を数字に置き換えて表したものか?」
私は先程からそのような説明をしているつもりであったが、言われてみれば何も知らない0の相手に説明をするならば、私の今の説明では理解するのには及ばないなと反省した。
「はい。その通りです。この世界には時間を表記するものがありません。日の傾きで行動を変えている気がします。ですが曇りや雨の日はどうしましょう。日の傾きが分からないので行動をするのが少々困難ではないでしょうか?それを解決するのがこの、時計と言うものです。数字で一日を表しております。」
ミツモト公爵が理解できたのであれば、恐らくこの異世界でも1日は24時間なのだろう。そこは一安心というものだ。私が説明を追加した後、一定の無音の時間が過ぎたかと思えば、領主達はポツリポツリと言葉を発し出した。
「これは。。。とてつもない事では。。。?」
「国王様。これは量産すべきかと。。」
「なんと精密な機構をしているんだこれは。。。」
皆一同に驚きの言葉を発している。私も別の意味で驚いた。マナはイズラート国の技術者達の力を借りて作成したとそう言っていた。イズラート国の技術者の技量が、私の想像していたものより、何倍も長けている事に驚きを隠せないものである。
「ソータ侯爵殿!これは発明です!!!我が国との交易にこれを所望する!それ相応の対価をお渡しすることを約束しよう!!」
「あ!ずるいですわ!私の国にも、交易しちょうだい。坊や。」
時計の人気はとてつもないもので、順序だててゆっくりと交易の交渉をしようとしていたところが、一挙に全ての領主との交易の約束を手に入れてしまった。一つ仕事が減ったと言うべきだろうか。マナの考えることは一味違うようであった。
「さて、次の話に移るとしようか。現在の問題についてだ。」
今までの活気溢れた雰囲気からは打って変わって、バゼル国王が険しい顔立ちでそう述べた。どうやら次は会議のような話し合いの時間があるらしい。国王の言葉に、他国の領主は皆、険しい顔に変わった。
「今年も例年通り、魔族の動きが伺える。毎年死者が出ているのも確かだ。いつも通りでは、更なる死者を増やすだけだ、何とかせねばならん。」
バゼル国王は今、魔族と言っただろうか。言われてみれば、あの役所の所長のシュタイズも魔族や魔人に関することと取れる言動をしていた。近いうちに魔族との戦闘があると言うことなのだろうか。
「すみません。私、まだ理解が追いついていないのですが。」
私は真相を確かめるべくバゼル国王に質問をした。バゼル国王は少し悩んだ素振りを見せたが、その後説明を口にする。
「毎年、我々人間と魔族との対立が表に目に見るように起こっている。言わば戦争だ。長続きはしないのが唯一の救いであるが、必ず1人は魔人がいるんだ。その魔人が指揮を取っている。指揮された魔族は通常よりも厄介なんだ。」
相当苦戦しているのだろう。それもそうだろう。毎年攻めて来られてもこちらとしても厄介なものだ。殲滅出来ればいいのだが、そう簡単なものでもないも言える。
「これでも約220年程前は1度魔族との戦争は終わったはずなんだ。我々の勝利でな。だが、そんな平和は100年程で終わった。約110年ほど前か、また魔族が攻め入るようになったんだ。困ったものだ。だが今年は新たな戦力が居るぞ。な!ソータ侯爵よ!」
「な、なんですか急に!!こっちに振ってこないでください!!」
相変わらずのバゼル国王である。おふざけにも程があるのだ。真剣に話をしていたかと思えば、直ぐにこう突然な振りを投げてくる。どちら事言うとその振りの方が魔族襲来よりも余程突然である。
「なにより、危機的な状態なんですね。対策しないと行けないという訳ですね。説明、ありがとうございます。」
私は来たる魔族との戦争に備え、準備が必要な現状と、魔人との戦闘にも意識を向けた。今後の魔族の動向を私自身も気にかけて行かねばわならないと、この会合で得たものは相当に大きいものであった。




