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第65話 恒例の儀

私は王都八国定期会合に参加し、他国についての紹介を第一都市であるジャイフライン国領主、カールスにしてもらったところである。


「では、通常の流れに戻すとしよう。各々の産物品を他国へ分け与える恒例の事だ。」


どうやら、マナの言っていた自国の産物品を分け与えるという恒例の儀を行うらしい。私はつい最近知ったばかりであるのだが、マナが用意してくれたとそう言っていた為、とりあえずは安心している。


「では先ずはカールスからとしようか。」


「承知致しました。私が本日皆様に渡すのはこちらです。」


そう言いカールスが取り出したのは、所謂コートであった。順番に座っている場所の机の上に配布されるそのコートを手に取って見ると、生地はコートという言葉は全く似合わないものであった。


「これは、雨の日。風の日。気温が低く寒い日にこちらを着ることで寒さを和らげ、温まることができます。」


カールスは自慢気に、鼻を高くしてそう言うが、これでは寒さ対策にはならない。勿論着込めば多少の寒さ対策にはなる。これも着込めば対策になりうるが、コートは1枚で暖かいのが売りでは無いのかと異世界の技術力を疑った。


「これはいいですね。いい生地を使っているのは触ればわかる。素晴らしい。」


思いの他、他国の領主の評判はいいようだ。私からすればこれはコートとは呼べない。寒さ対策にならないが丈は膝まであるというなんとも合わせにくい物だ。私はお世辞で評価することしか出来なかった。


「次は私ね。私はこれを持ってきたわ。これは、あえて少し小さめに作った指輪よ。小指に付けるのよ。」


そう言い渡された指輪には、宝石らしきものが取り付けられ、鮮やかに輝いていた。色は透明だが、光の加減で青にも赤にもなる綺麗な宝石であった。宝石には疎く、これがなんの宝石なのか、日本に似たようなのがあったかすらも分からない。


「小指にはめるものなのか。どういう意味があるのだ。」


小指に指輪。所謂ピンキーリングという事か。メリア嬢伯爵は意味はまだ無いと言っている。日本では確かうろ覚えだが、右小指が能力向上の願い。左小指がチャンスを自分のものにする願いが込められていたはずだ。嬢伯爵らしい品といえる。これは素晴らしいものだ。


「では、次は私が。私が持ってきたのはこれです。ものはただの紙です。が、これは紙しかありません。冊子になってない為、自分の好きなところで冊子にまとめることができます。上限の無い資料を作れます。」


これもまた見た事がある。所謂ルーズリーフだ。なかなか良いものを考える。日本にもあったが、これは上限がないだけでなく、もし新たに追加したいときに、好きな時に好きな場所に追加することができるのだ。私も日本にいた頃は重宝していた。


「私の番ですね。私が持ってきたのは新たに新造したこの鎧です。従来の鎧は鉄板1枚にジャイフライン国のクッションを内側に付けているだけのものでした。ですが、新たに、鉄板を厚くしただけでなく、構造を多重構造にすることで防御力を向上させました。」


メイシェルト国の技量は相当あると見受けた。つまりはこうだ。鉄板→クッション→鉄板→クッションというような多重構造にし、衝撃吸収力と防御力を向上させたと、そう言っている。何とも平凡な進化と言える。


「次は我だな。我が国は建築技術を新たな遊び心を作成して見た事にした。それがこれだ。一見なんとも普通な箱に見えるだろう。だがこれは条件通り、順番通りに動かすことで箱が開くようにしてある。カラクリボックスである。」


「おおおぉ!!!これはすごい!素晴らしい!!!」


確かにこれは素晴らしい物だ。だが、これも日本にあった。日本特有の有名な伝統工芸である寄木細工。昔祖父に買ってもらってからあの秘密箱の精密さや面白さにハマったものだ。ミツモト公爵という名前も気になるだけあって、日本に似ているような気がする。尚更興味深い国だと感じる。


「では次に私が。私は分け与えるといっても、ものとして残りませんが、少々失礼して。。。開け、収納。よいっしょっと。お待たせしました。こちらです。皆様に美味しい魚類をご紹介します。」


そういって空中のないも無いところから取り出したのは魚であった。マイル伯爵と言っただろうか。ダサい詠唱をしていたが、収納魔法を使用しているところを考えると、無属性の適性がある人物であるらしい。


それよりなによりも、魚介類を食べれるのだろうか。私はそちらの方が何倍も気になるし、楽しみである。早く食べてみたいものだ。


「では、早速捌くところからお見せ致します。」


そう言うと、細くて長い包丁を取り出し、取り出した魚を捌き始めた。捌いている魚を目にするが、日本にはいなかった魚であろう。見た事のない生物である。ウツボのようでウツボじゃないが、だからといってウナギやナマズのような生物でもない。だが、長い体をしているとしか言えない。本当に見た事の無い生物だ。


「さぁ。どうぞ召し上がってください。」


私は机に出された謎の生物の料理を前に、果たして食べても大丈夫な生物なのかが気になった。捌いているところを見ていたが、毒袋のようなものもなく、至って普通であった。だが私は素人だ、見るだけでは何も分からないというものだ。他国の領主達もなんの躊躇いもなく口に入れる姿を見て、私は恐る恐る口に含んだ。


「お、、、美味しい!!!!」


味で1番近いのは何かというと、サケを思い浮かべる味である。だが完全に鮭という訳では無い。どこか、鮭とは違うそんな感じがするものであった。だが、異世界に来てから初めての魚を堪能しようと私は大いに味わった。


「さて、最後はソータ侯爵だぞ。」


私が食べることに集中していると、バゼル国王が催促してきた。私は慌ててマナから受け取った品を取り出す。正直私も渡された品を見るのは初めてである。中身はなんだと聞いてもマナは "見れば分かる。" といって結局何も知らぬままここに座っていた。


私は紹介しなければならないことを頭に入れながら、マナから渡された品の蓋を開けてみる。そして、それを紹介するべく理解しようとしたが、理解するのに時間は要しなかった。


「な、なんだこれは。。。いつの間に。。。」

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