第62話 メイシェルト国
私は、カイズと共に作成した自動車に乗り、王都八国定期会合の行われるメイシェルト国に車を走らせていた。できはとても良く、乗り心地は完璧であった。
「そろそろ着きます。あっという間でしたね。」
すっかり慣れたマナはもうこれっぽっちも怯える素振りなく話しかけてくる。あの怯えていたマナは一体どこに行ってしまったのだろうか。
「位置的には隣ですからね。近くて良かったです。」
近いと言ってもそれなりに距離はある。車で約2時間は走っただろう。車で2時間と考えると東京から日光に行くようなものである。それなりの長旅だ。
「ところでマナさん。この大荷物はなんなんですか?」
私が聞きたかったことをマナに聞く。大荷物をわざわざ持ってくるのは、なにか理由があるはずだが、検討がつかない。
「ソータ様は定期会合は初めてでしたね。この荷物は所謂、挨拶のようなものです。定期会合は2年に一度。自国の生産物を他国に分け与える。それが1種の礼儀なのです。」
そのような決まりがあったとは今初めて知った。だが、そういうものは基本領主が選ぶものでは無いのだろうか?何も言わずにことを進める面を切り取れば、やはりあの暴君の娘である。
「分け与えると言いましたが、正直なことをいえば、自国の技術力を周りに知らしめると言った方が分かりやすいかもしれません。結局は名目上に過ぎないのです。。。今回はソータ様はお忙しそうでしたので、私が技術者様方に協力頂き、準備しておきましたので大丈夫です。」
仕事が出来るいい秘書さんであることは確かだが、それでも一言は声をかけて頂きたかったものだ。私も何も知らないでは恥をかいてしまう。
「あ、見えてきましたよ!!!あれがメイシェルト国です!!」
マナが元気よく前方を指さす。その声に合わせ私は前方のやや奥に目線を送る。そこにはオレンジ色の屋根や青色の屋根、などカラフルなイメージある街並みが目に飛び込んできた。カラフル過ぎると目がチカチカするものだが、そこまで自己主張の激しい色合いでもない。見ていて綺麗だと感じるそんな街並みである。
「王都以外の別の国を見るのは初めてですが。。。これまた面白い街ですね。」
私は何の変哲もない感想を述べてしまった。徐々にメイシェルト国が近づいてくるのが分かる。それと同時に前方に門が見えてきた。恐らくここがメイシェルト国の出入口なのだろう。私はその門の前に車を止めた。
「門番の方々、すっごい怪しんでますよ。」
「無理もないさ。こんな乗り物初めて見るでしょうし。」
国の出入口には門番は付き物だ。つまり入国審査があるという訳だが、果たしてこの乗り物は中に入れるのだろうか。
「何者だ!!武器を持っていれば今すぐ武器を捨てろ!」
こうなるような気はしていたが、ここまでハッキリと警戒されてしまえば、こちらも少々悪い気がしてくるものだ。私は恐る恐る車を降りてここに来た理由と、身分が何なのかを明かした。
「すみません。王都八国定期会合に参加するべく参りました。私、王都直属第七都市・イズラート国領主のソータと申します。」
「え?あ。。。はっ!大変失礼致しました。見た事もない乗り物であった為、念の為警戒しておりました。ご無礼をお許し下さいませ。イズラート国領主のソータ侯爵殿で御座いますね。只今確認致しますので少々お待ち下さい。」
始めてみる乗り物を目の当たりにした時、国防を務めるものであれば警戒し、威嚇するのは当たり前のことである。何があるか分からない。無知のものならばなおさらである。警戒は怠ってはいけないのだ。
「お待たせ致しました。最後になにか身分証をお持ちでしたら提示頂けますでしょうか?確認取れ次第入国許可となります。」
「分かりました。こちりで大丈夫ですか?」
私は最近Aランクになったばかりの狩猟許可証を提示するべく手渡した。身分証明になるものと言えばこれと特別許可証ぐらいしか持ち合わせがないのだが、大丈夫だろうか。
「え、えええええええAランクゥううう!?!?!?一国領主がAランカーですとぉ!?!?!はっ!!!こ、これはまた失礼致しました。取り乱しました。。。。大丈夫です。確認取れました。どうぞ中へ。。。」
今まで1番リアクションの良い人物であったと感じる。日本にもリアクションを売りにする人は多くいるが、中でも生き残れるのはたった数%の世界だと思う。恐らく彼ならその数%にも入れるリアクションを持っているだろう。
「ありがとうございます。驚かせてすみません。」
私は悪気はなくとも、驚かせてしまったことについての謝罪の意を述べた後、再度車に乗り込みそして、車をメイシェルト国の中へ走らせた。
「車どこに停めようかな。まぁ、メイシェルト国の領主邸横に置かせてもらうか。」
乗り心地の素晴らしい乗り物であり、簡単に移動できる画期的な移動手段であることに間違いはないが、それなりに大きなものであるため、止める場所には少々困ったりもする。というのも、日本と違ってここは異世界。道は車のための広さではなく、車の為の駐車スペースもあるはずがない。私としても少々失敗かと感じる面である。
「なにはともあれ到着だぁーーー!荷物下ろしてとりあえずメイシェルト国領主にでも挨拶に行きますか。」
マナにそう言いながら、私は車を領主邸と思わしき大豪邸の前のスペースに停め、マナが持ってきてくれた大荷物を下ろし、そして領主邸の戸を叩く。




