第56話 計画と準備
私は領主室に腰かけ、そして頭を抱え込むようにして悩んでいた。自動車といっても、形や見た目が全て同じでなくても構わない。駆動や操作、ブレーキ・アクセル・前進・後退が単純な操作で行えるようにさえしてあればいいのだ。
「つまりは、、、条件魔法・・・こう言う時に使えるよなぁ。」
私は、盗賊に襲われた時の事を思い出す。。あれは"条件魔法"によって落とし穴を落とし穴として作用させるようにしてあった。実際にその魔法を施したカイズも言っていたが、条件魔法はある程度、好きなように条件を設定できるそうだ。
「条件魔法なんて、書庫にあった魔導書にすら載ってなかったんだよなぁ。」
私は難しい事が苦手である。どちらかと言うと、ただ黙々とある一定の作業を淡々と行う単純作業の方が得意である。折り紙で鶴を折るなどそんな細かいことはできない。折り鶴は細かいことだ。細かくないと言うものの言葉は私は無視しよう。
「そんな俺にこんな細かいことできるかね。。。」
「できますよ!!!できます!」
マナが私座っている正面の机から、上半身だけを前にせり出させ、目をキラキラと輝かせながら言う。この一瞬だけ、マナ後ろにうっすらとバゼル国王の顔が浮かんだのだが、恐らく生霊だろう。結局は親と娘。似ないはずがないのだ。
「マナさんに応援されると、頑張りたくなりますね。」
私は9割本音、1割お世辞の返しをする。日本にいれば自然と身につくであろうお世辞は、この異世界には嘘にしかならない。であれば、まだ素直な方がいいのかもしれないと、最近思えてきた。
「相当期待しているようなので、頑張ってやってみます。」
私も少し諦める選択肢も浮かんでいたところであったが、結局は自動車とまでは行かずとも、馬車ほど乗り心地の悪い乗り物でなくて、歩きよりも辛くなく、早い乗り物はあった方がいいと思う。作るしかないのだ。
「条件魔法についてはカイズに聞いてみよう。」
私は魔法に関してのプロであろうカイズに根掘り葉掘り、手取り足取り教えてもらおうと考えた。その方が早く事が済む。詳しい者が近くにいるならば、存分に使わなければ勿体ないと言うものだ。
これは勉強にも同様に言える。分からないにも関わらず、無理に自力で解こうとするだけ無駄なのだ。答えを見てはいけないという風習が日本にはあるが、分からないものは分からない。それ以上でもそれ以下でもないのだ。答えを見ることで勉強する方法もある。
つまり、"過程"が大事なのだ。『何が』『どうなって』『こうなった』という物の法則において、『こうなった』という部分、所謂 "結果" は自分も目で見て理解出来る。だが、そうなった理由は見るだけでは理解できない。ならば、その"過程"を"答え"を見なければ、根本的な理解にはならないと言える。私はそう考える。
「マナさん。申し訳ないんですが、カイズを呼んできて頂いてもいいですか?」
「分かりました。呼んできます。」
マナは良い秘書である。だが、今までの無表情さとは打って変わって、今となっては天然キャラに近いほど、元気な方だ。
「カイズ来るまでの間、考えをまとめておくか。」
私はマナがカイズを呼びに言っている間、カイズに分かりやすく説明できるように頭の中にあるものを紙に起こしていた。説明をしなければ恐らく伝わらないことだろう。この世界にない技術なはずだ。
「お待たせ致しました。お呼びでしょうか?」
思いのほか早くカイズが私の部屋にやってきた。やはりマナは仕事が早い。
「仕事中に呼び出してしまって申し訳ない。一つ頼みがあって呼んだのだが。単刀直入に言おう。私に条件魔法について教えて欲しい。」
「条件魔法をですか?」
カイズのことだからすんなりと了承するとばかり思っていたが、アニメや漫画にありありな同じ言葉全く聞き返しである。異世界でもそれは健在のようだ。
「あぁ。これを見てくれ。」
私はそういい、先程の、私の頭にある考えを整理し、そして紙に分かりやすく書き起こしたものをカイズに手渡した。カイズは紙を手に取り、じっくりと目を通している。そして、カイズの目線が下に下がっていくにつれ、みるみるうちに、目を大きく見開いてくのが分かった。
「なんですかこれ!?!?!?!?大天才ですか!?!?!」
読み終えたカイズは、私がこの異世界にきて最も大きかったのではないかと感じるほどの大声を私に向けてかけてきた。思わず身体を跳ね上がらせてしまった程である。
「何ってそのままの通りだ。企画書のようなものだ。」
私は別の世界からの知識であると言う事実は隠して、少々かっこつけるかのようにそういう。
「もう。。。なんと言えば良いか。これは素晴らしいです!!大発見ですよ!作りましょう!協力します!」
カイズがこんなにもはしゃいで、陽気で元気な姿は初めて見た気がする。らしくないと言えば、らしく無さすぎる。それ程驚くことなのだろうか。誰もが考えられるようなことでは無いのかもしれない。
「条件魔法ですよね!!任せてください!」
「あぁ、隅々まで教えてくれ。」
私はカイズに"条件魔法"についての教えを乞いた。そして、この勉強は今後にも大いに役立つ事になると私は薄々感じて居たのだ。




