第51話 復興の始まり
私は、マナとミナの再会を邪魔しないように部屋を出た。バゼル国王にだる絡みされ、結果的にいい時間潰しとなった。
「そろそろ感動の再会時間も終了かな?」
私は部屋の前で立ち止まり、そして部屋の扉を眺めながらそう呟いた。
「入っていいですよー!」
私が扉をノックした時、扉の奥からした声はミナだった。部屋に入ることを了承されたのを確認し、私は扉を開く。
「もう!勝手にどこ行くんですか!ソータさんにも会いたかったんですけど!」
ミナは頬を膨らませながら私にそう言う。二人の時間を邪魔しないように気を使ったのだが、思ったよりも早く二人の時間は終わっていたようだ。
「ミナ。ソータさんは気を使ってくれたのですよ。」
「分かってるけどー。」
ミナは年齢に相応しいと思う性格をしている。表記上18歳ではあるが、日本に合わせるならば9歳だ。まだ甘えたいお年頃だろう。
「元気にしてたか?ミナ。そんなに月日は経っていないが。」
「元気してたよ!魔法の勉強頑張ってる!」
元気そうでなによりだ。ミナもマナ同様に魔法の才能があるだろうから、成長したらいい魔道士になるかもしれない。それはそれで楽しみと言うものだ。
「私達も国へ戻らなければならない。少々忙しくてね。申し訳ない。」
ミナにほんわかと帰る旨を伝えると、満面の笑みであったミナはまるで顔から"笑み"だけを吸い取ったかのように、表情を暗くした。
「もう帰るの?今日泊まっていくものだと思ってたよ?」
「すまんな。だが、会おうと思えば直ぐに会えるんだ。だからまた今度な。」
会おうと思えばすぐに会える。これは嘘ではない。私には今や転移魔法がある。これは日本の車よりも、電車よりも、新幹線よりも、飛行機よりも何倍も早い移動手段である。日本には電車などの移動手段は必須であったが、この世界では "転移魔法" が移動手段の必須である。
「分かった。我慢する。また会える時は沢山話してね。」
思ったよりも素直に了解してくれて助かった。このぐらいの年齢だと、嫌だと聞いてくれないイメージが私にはある。ミナは精神年齢は高いのかもしれない。
「ありがとう。」
そうして、私とマナはイズラート国へ帰国するべく身支度を忘れ物のないのように整えた。そして、準備が整ったので帰る挨拶をするべくバゼル国王達に声をかける。
「国王。私たちはそろそろ帰国します。また、近いうちに会合でお会いしましょう。」
「ああ、もう帰るのか。もっとゆっくりしていけば良いものを。まぁ、忙しいのもよく分かる。気をつけて帰るのだぞ。」
気をつけるも何も、ちょっと念じるだけで良いのだが、それは言わないでおこう。また根掘り葉掘り聞かれるだろうし、国王に捕まってしまえば面倒になってしまう。
「ミナ、元気でな。また今度会った時に存分に話そう。」
私は再度ミナに謝罪の意を込めてそういう。ミナはとても残念そうな顔をしているが、ちゃんと見送ってくれている。やはり、しっかり者であるのは確かなようだ。
「また会いに来てね!待ってるよ!」
ミナはそういう、そしてマナともいくつかの会話を交わした後、私たちは国王達の見送りの元王都の外に出た。
「マナさん、すみません。転移魔法を見せると面倒になりそうだったので、会えて王都から離れた所からにしようかと思いました。」
「いえ。私も同感です。さ、帰りましょ!」
マナは、メイドさんの頃とは全くの別人である。秘書になった時も、心做しか元気のないように思えていたが、恐らく妹のミナについて思うことがあったのだろう。それも消えた今のマナは、元気そのものである。ここまで元気な姿を見せられると私までもなんだか嬉しくなってしまうものだ。
「帰りましょうか。転移しますね。」
私は行きと同様に、不可抗力で、仕方がなく、他意は無いのだが、安全のために、マナの手を握る。そしてしっかりと握られていることを確かめてから、イズラート国の中で鮮明に覚えている "領主室" を念じた。
「イズラート国だ。帰ってきたか。」
無事にイズラート国への転移に成功したことに、安心した。王都に捕虜となっていたイズラート国の国防を担う者達も、既にこちらに向かっているとの話を伺っている。到着もまもなくと言った所であろう。
「とりあえず、私が先ずやることは国民への食糧配布かなぁ。収納魔法で貰った全ての食料を持ってきたが、これは一体何日分なのだろうか。」
国王に頼んでいた食料の援助。国王は相当な量を確保してくれていた。見た感じではあるが、2~30人が、2年ぐらいは暮らせるほどだと感じる。こんなにも沢山ありがたい話である。
「復興も大事ではあるが、先ずは国民の元気を取り戻さなければ始まらんな。活気がまるでない今のイズラート国には、元気が必要だ。」
私はそう考える。そして、イズラート国にとって最重要事項としてはいち早く "自給自足" を行えるようにすることであるが、この国の産業は "工業" である。そこで私は、手をつけるのは早い方が良いという考えから、準備を始める。
「マナ、すまんが。カイズか、ファルクにイズラート国に残っている"技術者"を全員集めるよう言ってきてくれ。」
この国の"技術者"それは、王都と同等、いやそれ以上の知識・技・腕を持つ。彼らこそが、このイズラート国を支える大黒柱なのだ。そんな彼らを招集し、1秒でも早い復興を目指し、遂に歩み始めるのだ。




