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第49話 姉妹

私はマナと共にイズラート国に帰るべく、今は王都でしか買えないような物などを見て周り、荷物をまとめて身支度を整えていた。


「とりあえず、必要そうになる物は揃えたよな。」


「大丈夫だと思います。」


私は一刻も早くイズラート国に戻り、少しでも早く復興させようと意気込んでいた。できるならば、今すぐにでもイズラート国に戻りたいものであるのだが、国王への挨拶など中々そうは行かないものである。


「そういえば、まだミナに会ってないよな?」


「はい。会えてません。」


私に着いてきてくれたばかりに、マナの一番の目的であろう妹に会うという事を先延ばし先延ばしにしてしまっていたようだ。申し訳ないことをした。


「こんなことしている場合じゃないですね。ミナに会いに行きましょう。」


マナは黙り込んでいる。恐らく、秘書であるならばここは、大丈夫だからとイズラート国に戻る事を優先すべきだろう。だが、マナも人間だ。妹に会いたい気持ちは推し潰せないのだろう。マナの心の中で葛藤が起こっていると、そう思う。


「いいんですよ。私に気を使わずとも。わがままだっていいんです。」


私はそっと優しく声をかける。特に効果があったようには見えないが、マナは"ありがとうございます"とそう呟いた。マナにも色々思うことはあるのだろう。


「幸いにもここは既に屋敷の中です。ミナにも直ぐに会えると思います。」


国王にお願いし、屋敷の二部屋を借りて荷物を置かせて貰っていた。正直一日でイズラート国に戻ろうと考えていたが、ランク試験は予想以上に時間を食ってしまったようだ。時は既に橙色の空をしている。


「やはり、申し訳ないです。今すぐにでもイズラート国に戻りましょう。私は大丈夫ですので。」


マナは、なにやら考え込んでいる様であったが、どうやらその事について考えていたようだ。メイドとして長年やっていれば、仕える者としての誠意を身につけてしまうのも無理はない。だがそれは、自分の意見を押し殺している。それではマナの為でも、今後の為にもならないのだ。


「そこは気にしなくていいですよ。さ、ミナに会いに行きましょう。そう決めたんですから。」


私は我慢をしているのが丸分かりなマナにそう言う。マナは申し訳なさそうな表情をしているが、どこか嬉しそうである。姉として相当会いたかったのだろう。


「ほんと2人は仲良いね。私の方が先に会ったのに。」


どこか聞いたことのある声が、部屋の扉の方から聞こえた。声の主はほぼ分かりきっている事だが、私とマナは同じタイミングで扉の方へ振り返る。


「ほら!息ピッタリじゃん!」


そこに居たのはミナであった。数日しか経っていないが、何故かとても久しぶりに感じる。それもそうだろう。この数日色々あった。人間は出来事が多ければ多いほど、時間が経過したと錯覚するものである。


「ミナ!!!!!!!!」


少し涙ぐんだ声が、私の横から素早く消え、そして私の視界の中に入ってきた。私の横に居たはずのマナは、扉の近くに立っている少女を強く抱き締めている。


「マナお姉ちゃん。お帰りなさい。そして護ってくれてありがとう。」


思わぬミナの言葉に私までも涙ぐんでしまった。私らしくないと自覚はしている。だが、この家族愛に動じるななど、出来るはずがない。できる者がいるならば、それは相当冷酷な心を持っているのだろう。


「ミナ・・・。ミナ・・・。恐い想いさせてごめんね・・・。」


マナの目に乗っていた心の雫を、ポツリポツリと落とし始めた。それを切っ掛けとして雫はマナの目からは溢れるばかりだ。まるで雨の降り始めのようである。その雨も普通な雨ではなく、ゲリラ豪雨だ。


「お姉ちゃん・・・。」


私が今見ているのは恐らくドラマのワンシーンなのだろう。生き別れた姉妹の感動の再会シーンを見ているのかもしれない。そう思いながら、ここは二人だけの空間を作ってあげるべきだと、大人の判断をした私はそっと音を立てないように部屋を後にした。




唐突だが、私は一人っ子である。日本の家庭は一人っ子が多くなったように感じるのだが、私の思い過ごしだろうか。最近では、DINKs(ディンクス)という子供を意識的に作らない結婚も多くある。少子高齢化も進むというものだろう。そんな現代の日本に生まれた一人っ子の私は、兄弟や姉妹という関係を少々羨ましく思う。


「ソータじゃないか。国へ帰る身支度を整えていたのではないのか?」


私にはそう話しかけてきたのは、あの噂の暴君(バゼル国王)である。バゼル国王には世話になっている。この人に会うと、王都中央総合役所の所長シュタイズを思い出してしまう。正直言うというキャラ被りなのだ。


「今日も今日とて熱々しいですね。」


「当たり前だ!!!私はいつも元気だぞ!!」


一緒に居ると、人体自然発火現象を起こしそうだ。早急に離れる必要がある。


「では、私は少々出かけて参りますね。」


「おーおー、ちょっと待ってくれたまえ。」


夏の心霊系番組を見る度に思うが、幽霊よりも何倍も生きている人間の方が恐いと思う。それと同様に、生きている人間が周りにいる者を発火させる恐れがあるなど、恐怖すぎるだろう。そんな人物が私を呼び止めるとは。これまた恐ろしい。


「聞いたぞ?お主、Aランク試験に合格したそうじゃないか。なんで私に言ってくれんのだ。」


私はその一言に "これは長くなるな" と悟った。

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