第48話 二つの許可証
Aランク試験を終えた私は、長い螺旋階段を登り、秘書であるマナの待っている場所まで戻ってきていた。
「試験ご苦労だった。なかなかいい腕をしているみたいだな。私としても驚いている。」
「ありがとうございます。所長程でもないですが。」
私は日本人らしく謙遜をする。我ながら上手い謙遜だと思っている。
「シュタイズさんは魔法はどれほど使えるのですか?」
私は極々単純な疑問を投げかけてみる。少なくとも闇属性は使えていた。そして何より気になるのが、あの簡略化された詠唱である。
「気になるか?いいだろう。君は遠くない内にSランクに到達するだろうから教えてやる。」
遠くない内にSランクとは遠回しに物騒なことを言う。Sランクになるためには、魔人と戦闘しなければならないということだ。つまりは近いうちに魔人が来るようなそういうことを言っているようなものなのだ。
「私は詠唱魔法を得意としている無詠唱魔法適性者だ。使える属性は基本属性の他に闇と氷とのみだ。」
無詠唱魔法適性者だと?詠唱魔法を得意とする無詠唱魔法適性者とはこれまた何とも顰蹙を買いそうなこと言う。無詠唱魔法を使えるのにも関わらず、詠唱をわざわざ行う理由が私には理解ができない。
「何故詠唱をするのですか?」
「詠唱をした方がかっこいいだろう?」
私はポカンと脳みそが一時的になくなったかのように思考を停止した。この人は何を言っているのだろうか。かっこいいからわざわざ詠唱をする。技名を言うという何とも厨二病らしい精神を持っている。
「そうなんですね。私もかっこいいと思いますよ。」
「そうだろう!?そうだろう!?やぁーーやっぱり分かる奴にゃ分かるんだよォ!みんなには鼻で笑われてしまうだけで分かってくれないんだよ。」
「ははは。そりゃそうですよ。」
変に気を使ってしまったようだ。傷つけないようにとあえて同意したが、裏目に出てしまった。所長に絡まれるとはこれまた何だか不思議である。この人に詠唱魔法のことを言うのは控えよう。そう思った。
「とりあえず、私はAランク合格なんですよね?」
「そう焦るな。今絶賛君の狩猟許可証を作成しているところだ。だから待て。」
軽く抑えられてしまった。正直屈辱である。この厨二病の痛々しい所長に宥められては私のプライドが傷ついてしまう。
「分かりました。」
私は素直に応じるしかあとがなかった。マナに恥ずかしいところを見られてしまったようで、私としても少々大袈裟だが、穴があったら入りたい程である。
「お待たせ致しました。ソータ様の許可証の準備が整いました。」
私のことを呼んだのは、所長を呼びに行った役所の者であった。所長が出てきた時は居なかったが、もしかしたら、その時から許可証発行の手続きを指定なのかもしれない。
「まずこちらが、Aランク狩猟許可証になります。Aランクなので、如何なる場所でも狩猟をした物については、基本的にどこの役所でも特に問題なく換金の手続きを行えるかと思います。」
そういえば魔物を倒したら換金することを忘れていた。念の為というものでは無いが、今まで倒してきた魔獣達な魔石とやらは、集めている。これといって理由があった訳でもないが、漫画やアニメを見まくった私の事だから無意識に集めていたのだろう。
「そしてこちらが、特別許可証になります。」
「特別許可証???何がどう特別なんですか?」
特別許可証とはなんなのだろうか。全くもって初めて聞くものであるが、何が特別だと言うのだろうか。
「直属都市を含む王都領内には、幾つかの指定危険区域というものと、特定立入禁止場所という場所が存在します。」
"指定危険区域"と"特定立入禁止場所"の二種類がどうやらこの世界には存在するらしい。といっても、どういうものか理解はし難いものだ。文字を見るだけでも何となく言いたいことは分かる。だが念の為、説明は聞いておくべきだろう。
「簡単な説明を頼む。」
「分かりました。簡単に説明致しますと、指定危険区域は指定された区域内全体的に危険であるために、許可された者以外は入れないように規制している場所になります。
特定立入禁止場所は、洞窟や建物、遺跡等のある特定の場所に対して、許可されたものしか入れないように規制している場所になります。」
とても分かりやすい説明で有難かった。つまりは範囲が決められているものが指定危険区域。ある一点を規制しているものが特定立入禁止場所となる訳だ。
「つまりは、その2つの場所に入れる許可証という訳だな?」
「はい。その通りでございます。これらの場所は非常に危険です。そのため、実力者でなければ生きて帰ることはないでしょう。」
相当な歴史があるようだ。少なくとも過去に何千、何万人もの冒険者とやらを無くしている場所なのだろう。そうでも無いと危険区域など指定しないだろう。それに指定するのは恐らくだが国王か所長のどちらかだ。どちらにせよ相当強い者が指定しているのであれば、それは相当な危険な場所ということである。
「ありがとう。助かった。」
私は無事Aランク試験に合格し、更に特別許可証というものまでも受け取った。これで王都でやるべき事は全て終わった。私はイズラート国を再建する仕事をしに、今度は自国へ戻る準備をする。




