第35話 領主邸の隠し物
「私、この絵画妙だと思います。」
珍しくメイドさんは自分の感情を表に出した。私はその事に対して驚きつつも、メイドさんが妙だと言うのならば恐らく何かがあるだろうとその意見に耳を傾けてみた。
「私には全く感じないが。なにか魔力的なものか?」
「分かりません。全くの私の勘です。確かに、おかしいです。」
そうメイドさんは絵画の方に顔を向け、真剣な眼差しを送っている。メイドさんが表情を作る場面を初めて見た気がした。
「んーー。確かに少し額縁を含めた全体の位置は低いようにも見えますが、私にはその程度ですね。」
仮にもこの建物は領主邸だ。天井はそれ相応に高い。にも関わらず、目線の高さよりやや高めにかけられている。まだ上には余裕があるのだ。言われてみればであるが、もし何かあるのであれば、何かを隠しているようなそんな飾られ方をしている。
「すみません。外側と同じ場所を見たいので、私外に回ってきます。ソータ様はこちらの窓から顔を出して頂きたいです。」
メイドさんが普段見せない表情といい、行動力といい、絵画の不思議よりも、メイドさんの行動に対する方が私としては何倍も妙に感じるのだ。そう思いつつ私はメイドさんのお願いを聞き入れた。
「やはりおかしいですソータ様。建物自体にまだ余裕があるのです。ですが、そこに壁があり絵画も飾られている。何かを隠しているとしか思えません!」
メイドさんが建物の下から見上げるようにして、私に大きな声で伝えてくる。にしてもメイドさんの言っていることが確かであれば、この壁の向こうにまだ空間があるというわけである。つまり、外装の壁の位置と内装の壁の位置がズレているという訳だ。
「ソータ様のスキルで分かりませんでしょうか?」
メイドさんの声がしたのは建物の下からではなく、真後ろからである。振り向くとメイドさんは既にそこに立っていた。メイドさんの素早さはどこから来ているのだろうか。
「そ、そうか!私とした事が!スキルの存在をまたも忘れかけていたぞ!」
メイドさんに言われてハッとしたが私には探知スキルがある。私は早速と言わんばかりに探知スキルを使った。
「あれ?何も感じない。ただの壁にしか感じないぞ?だが。。。。。。何かある。。。」
目の前の壁に何かがあるという感覚は受けなかった。だが、壁の裏側上部に無数の物体が存在していることは感じ取った。
ピロリン!ピロリン!
スキルがレベルを上げた音がした。このタイミングということは何らかの探知魔法なのではないだろうか?
「スキル:魔法探知とスキル:間取り探知を新しく手に入れた。これは使えるのでは無いだろうか?」
私は新しく手に入れたスキルを改めて使用した。するとこの領主邸の全貌。そしてどこに魔法が仕掛けられているかなど全てを見ることができた。
「この絵画の裏側に隠蔽魔法が施されているのが分かりました。そして、その裏には階段があります。。。階段の行き先は。。。書庫だ。。。。」
あまりにも強固な保護をされており且つ、高度な技術。そして、そこまでして隠したかった書庫。。。男の心を大いにくすぐってくれる展開だ。
「隠蔽魔法も分かるんですね。流石です。ソータ様。」
「メイドさんの勘がなかったら見つけられなかったです。」
私はメイドさんの鋭い勘に関心しながら、隠蔽魔法をどうにかして解除しなければならないと言うことを考えた。
「待てよ?隠蔽魔法??盗賊の時の隠蔽魔法も。。。」
忘れがちな私は、危ないところでまた思い出した。盗賊に襲われた時、落とし穴を普通の道のように見せていた隠蔽魔法。その魔法を使用したのはあの魔導師カイズである。あの時と同じような仕組みであれば、何らかの条件魔法も仕込まれているのでは無いだろうか。
「よし。カイズを呼んで来よう。彼なら分かるだろうからな。」
そうと決まれば事は早いもので、カイズ呼び寄せてあの絵画を取り外した後の何の変哲もない壁をメイドさん含む3人で眺めていた。
「カイズ。ここの隠蔽魔法は君かい??」
「いえ。私はここの隠蔽魔法を施した覚えはないです。それに通常隠蔽魔法は条件魔法と一緒に行います。ですがここの魔法に条件魔法は使われていません。」
カイズだと思い込んでいたが、違う場合もあるというのか。他にできる者といえば同じ魔導師だ。4団体もいたんだ。そのうちの誰かが出来てもおかしくないのだ。
「この隠蔽魔法に条件魔法を重ねてかけることで、その条件をすれば隠蔽魔法を解くことはできるのでは無いのか?」
私は自分が考えうる最大の方法を打ち出した。自分としても最高な策だと考えてのことだ。そうドヤ顔紛いな顔でカイズの話に耳を傾ける。
「それは出来ません。条件魔法は隠蔽魔法と同時にセットでかけなければ発動しません。仮にも重ねてかけることが出来たとしても、恐らく動作はしないでしょう。」
私の渾身の考えは尽く打ち砕かれた。良い策だと思ったが、そう簡単には行かないようだ。私は絵画を外した後の隠蔽魔法がかかっている壁に手を触れながらしんみりとした顔を床に見せた。
『ピロロリン!!』
【今回獲得スキル】
★魔法探知Lv5・・・施されている魔法の場所と内容を探知できる。
★間取り探知Lv5・・・任意の建物の間取りを探知する。魔法で隠されている場合でも、建物その物の構造を理解する。




