第33話 領主としての責任
昨日はイズラート国を見て回り、イズラート国の現状と再建に向けた構図を描いた。私が最も楽しみにしていた魔力測定器については、どうやらDランク以上でないと入室すらさせてもらえないようだ。
「おはようございますメイドさん。」
「おはようございます。昨夜、国王より正式にイズラート国領主秘書として任命されました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。」
どうやら私がぐっすりと寝ている時にメイドさんは秘書としての任命を受けていたらしい。起こしてくれればいいものをとも思ったが、なにせメイドさんである。寝かしてくれるであろう。
「ソータ侯爵殿。秘書としてメイドを一人置いておくが、泣かせるでないぞ?泣かせたら婿にしてやらんからな!ハッハッハ!」
「泣かせませんよ!婿ってどういう意味ですか!変なこと言わいないでくださいよ!」
全く相変わらずの国王である。何が面白いんだその冗談は。日本にもそういえばいた。全く面白みもない冗談を言う奴が。だが何故か国王に対し嫌悪感を抱くことはなかった。
「我は本日帰るが、侯爵殿は国民に正式に領主になったことを言った方がいいだろう。大々的に行わなくて済まないが、一軒一軒挨拶回りでもするがよい!そんな数も多くないだろうからな!」
元気のいい人だと常々思う。どこからそんな気力が湧き上がるのだろうか。なんとも不思議な人物だ。
「分かりました。ですが私も近々戻ります。そして、前もってお願いがあるのですが、良いでしょうか?」
「なんだ何でも申せ。」
私は最大限の申し訳なさそうな雰囲気を醸し出しながら、支援金と食糧、人手、そして捕虜の釈放及びイズラート国への帰国の件を話した。
「なんだそんな事か!何をそんなに改まって!ハッハッハ!いいぞ!分かった。侯爵殿が王都に来る頃までには整えておこう。約束する。」
「ありがとうございます!」
頼りになる国王だ。メイドさん程ではないが。とりあえずは手筈は整った。支援金がなくては先に進まない。だが支援金がなくても出来ることはあるはずだ。
国王はにこやかな笑みでアイザスを引き連れ、王都シャラベルへと馬車を動かした。その後も私とメイドさんは数の少なくなった国民に対し、一軒一軒挨拶回りをした。人によっては煙たがられ、王都の人間と言うだけで感じの悪い対応をしてくる者もいた。
何はともあれまずは身の回りの事をするしかない。身の回りのことと言えば領主邸である。
「とりあえず。。。整理するか。」
私はイズラート国領主部屋の前に立って腰に手を当ててそう呟いた。
「資料が沢山ある。断捨離だ断捨離。要らないものと要る物をしっかりと分けて明確にしなけらば。」
とそう考えた時にふと地下に収監されている者達を思い出した。すっかり忘れていたがあの者たちも人間だ。空腹であろう。私は仕事を手伝ってくれる人手を探していたのだが、とてもいい人手である。
「そうと決まれば!」
私はすぐさま地下に行き、盗賊ら約20人を連れ出した。盗賊らは皆既に目が覚めており、あの時話した2人も元気そうであった。ちょうど良いと思い新しく領主になったことを盗賊らに明かした。
「あの、領主様。どちらに向かわれるのですか?」
「ん?食堂。」
幸いイズラート国の領主邸に務めている調理人達は栄えていた時と変わらずいる。当時のままの味を楽しめるというわけだ。だが食材不足なのは変わりない。
「お疲れ様です。この者たちに飯をあげてください。」
「それは頂けません領主様。私たちは罪人です。罪人に良心などいりません。」
そう魔導師のカイズが答える。そんな即戦力を易々と死なせる訳には行かないのだ。それに実行犯であることは確かだが、真の犯人は元領主であるアイザスだ。この者たちに国王殺害の意思はない。
「罪は罪だ。しっかりと償ってもらう。だが、償うのにも腹が減っては償えないだろう。」
罪はしっかりと償ってもらわなければならない。多少重労働でも、この者たちは償いとしてやってくれるであろう。悪い奴ではないことを私は知っている。
「食事を終えたものから、領主室に来てくれ。償いとしてやってもらいたい事が沢山あるのでな。」
そう盗賊らに言い渡し、領主室で待っていると続々と盗賊らが集まってきた。
「全員か?よし。ではまずこの部屋の整理整頓だ。整理整頓といっても、捨てるのはよしてくれ。今後使う可能性がある。一緒の部類の書類に関してはまとめて欲しい。部屋は沢山あるのでな。収納には余裕がある。」
そう言い渡すと、分かりましたと言う返事と共に皆作業を始めた。
「あ、カイズとえーっとそこの体格のいい騎士!」
「私ですか?」
「そうだ。お主らはちょっとこい。」
私は国防についての話をするべく、2人を連れ別の部屋に来た。
「君たちには今後のこの国の国防についての相談をしたい。長になって貰うから心して聞くように。」
私はこの者たちをイズラート国国防の司令塔としての役目を与えると決めた。経験・強さ・知識・人望のあるものでなければならないからだ。
イズラート国の領主としてこの国を支えていくべく、私は行動するのだ。




